2018年度 活動レポート 第126号:北陸先端科学技術大学院大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第126号

アジアの学生がスパコンを用いたナノテクシミュレーション科学を学ぶ

北陸先端科学技術大学院大学先科学技術研究科
前園 涼さんからの報告

2018年10月21日〜10月30日の日程で、「スパコンを用いたナノテクシミュレーション科学」を題材に、インドネシア/1機関、インド/1機関、ベトナム/1機関から計10名の大学院生、学部生を受け入れて実習形態の研修を実施しました。

写真1
サーバー室で説明を聞き入る参加者

自作PCを参加者自ら設定して並列計算機を構成し、電子状態シミュレーションの高速化を体感すると共に、関連する様々な電子状態計算ソフトを経験するという課題に取組みました。国籍や性別の違う2名ずつで一組になり、協力してLinux計算機システムを構築するという内容から、参加者間交流、及び、学生アルバイトとして協力してくれた本学所属の学生や留学生との交流が自然と進む構成となりました。

写真2
写真3
違う国籍の参加者が協力して課題に取り組んでいる様子

本学側所属学生が、過去のさくらサイエンスプログラムでの実施経験を活かして講義を主体的に進めてくれたため、参加者にとっても、質問や不明な点を率直に相談しやすく、真に双方向コミュニケーションが確保されたスタートアップとなりました。一連の全体チュートリアルと、電子状態計算や統計解析の基礎座学を終え、無事、週末を迎えました。

途中に挟んだ週末には、金沢市の史跡の見学が企画されました。こちらも過去数回の開催経験が活きて、本学学生が金沢の見どころを巡る内容の濃い史跡ツアーを経験する事が出来ました。最終日には、各プロジェクトのまとめについて議論や質問のセッションが設けられました。

写真4
金沢城にて

参加者はいずれも、出身各国の最高学府で学ぶ、数物系大学院進学を目指す学部学生達であり、今回のプロジェクト研究を、国際共著論文参画のきっかけとすべく、今後の活動方針について活発な質問がなされました。数年に亘る継続開催により教程の内容がよく醸成されてきており、開催冒頭にはアジア諸国文化と日本文化との対比を踏まえた滞在中の過ごし方に関する講演や参加者の今後の研究活動において、アジア学生が一般的に陥りやすい研究倫理上の諸問題など、実習コンテンツの外回りの内容も充実しつつあります。

優秀なアジア学生の受入は、本学学生にとっても大変有益で、研究室内の近い距離感で互いに刺激され与え合う事で、学生が能力を伸ばす良い機会となっています。海外との交流チャネルは、研究室単位個別の繋がりに大きく依存してきた側面がありますが、学生が興味を持つ分野や、学内の研究室陣容も経時変化するため、大学機関、ひいては、日本全体としての継続的求核力を維持するには本事業のような、国としての包括的バックアップは極めて重要と感じます。

学生の4割超が外国人留学生で占められる本学にとって、優秀なアジア学生獲得は重要な生命線の一つとなりますが、留学を志す学生から見て、我々が欧米と比較して十分な魅力をアピール出来るかを常に意識する必要があります。本学の場合、関東・京阪神と比べ、地理的にも注目度が低くなるため、本事業を通じた、積極的アピール機会の確保は、大変有り難く感じております。今回も期間中、本学への進学希望を具現化して、進学のための手続きを調査する学生が数名居り、此の度、貴重な機会を提供頂いた事を、改めて感謝申し上げます。

写真5
満面の笑みでプログラムを終えた参加者