2017年度 活動レポート 第49号:三重大学

2017年度活動レポート(一般公募コース)第49号

教員養成系学生のための体験型理科研修プログラム

三重大学からの報告

三重大学の協定校であるベトナムのホーチミン市師範大学から、理科教育に関する研修の機会について要望があったことから、さくらサイエンスプログラムの支援を受けて「理科教員を目指す学生を対象とした理科教育研修プログラム」を平成27年度から開始しました。

これまでに参加した学生・引率教員は大きな刺激を受け、大学内に「Sakura Club」を設置し、子どもたちに科学の楽しさを伝えるために、サイエンスショーや科学実験を行っています。

ベトナムの理科教育を担う優秀な学生に対する支援として、また本学の学生にも大きな刺激となることから、本年度も6月27日から7月6日まで、高校理科教員を目指す10名の大学生・大学院生と2名の引率教員(うちさくらサイエンスプログラムの補助対象は学生10名と教員1名)を招へいしました。

この交流計画では、日本の理科教員養成に関する大学での講義や実験の受講をはじめ、SSH校である高校の授業視察や高校生との交流を通じて、日本の高校理科教育を学ぶとともに、科学館で体験活動を行うことで、参加者が探究型理科教育のあり方について考えることを目的としています。

<ガイダンスなど>

1日目は、教育学部の教育学部の荻原彰教授(理科教育学)が高校理科カリキュラム、高校理科教員の養成、および高校理科教育の現状と課題について講義をしました。また、滞在期間中、TAとして関わってくれる大学院生や、ホーチミン市師範大学から本学に日本語研修に来ている留学生たちと交流会を開催し、学生同士のつながりがスムーズに進むようにしました。

2日目には、自分たちで作成したオリジナルシャツを着て、三重大学の駒田美弘学長を表敬訪問して受入に感謝を述べ、歓談をしました。また、国際交流センター長や教育学部長を訪問し、大学間交流の推進について話し合いました。

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学長表敬訪問
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学長表敬訪問

<教育学部における講義と実験>

2日目から4日目にかけては、教育学部の教員による物理、生物、化学、地学の授業に参加しました。物理の中では、津市で科学教室を行っている阿部幸夫先生(阿部科学教育アーカイブス)による、自作の物理実験教具を用いた実験が行われました。

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物理実験
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実験を解説する動画を作成

学んだことをすぐに自分たちで演示し、それをスマホで撮影することで実験解説の動画を作成していました。また、実験をすると全員が輪になってすぐにディスカッションをして理解を深めることが、自然と行なわれていました。その様子は、新聞でも報道されました。

<三重大学における先端研究室の訪問>

3日目と7日目には、三重大学で先端的研究に触れる機会として、工学研究科と地域イノベーション学研究科を訪問しました。工学研究科では、紫外線LEDの研究開発を進めている三宅秀人先生と、水質浄化や水素製造法に関する研究をされている勝又英之先生のお話を伺い、産業分野の多様な用途について学びました。

地域イノベーション学研究科では、三島隆先生による食品化学に関するお話と施設見学を行いました。これらの研究室訪問で、将来、三重大学の博士課程に来たいという声が上がっていました。

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工学研究科における研究室訪問
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工学研究科における研究室訪問。

<科学館等の見学>

4日目には三重県総合博物館、5日目には大阪市立自然史博物館と神戸市立青少年科学館、6日目には名古屋市立科学館を見学しました。三重県総合博物館では大野照文館長から子どもたちの好奇心を育むための博物館の重要性、大阪市立自然史博物館の田中嘉寛学芸員からは、博物館における学芸員の役割に関するお話を熱心に聞いていました。どの科学館でも、学生の一人が展示や実験を解説する役となって動画を撮影するという光景がみられました。

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三重県総合博物館見学
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名古屋市科学館における体験活動

<高校の授業見学など>

7日目には、SGH(スーパーグローバルハイスクール)に指定されている県立四日市高等学校、8日目には、SSH校に指定されている県立津高等学校を訪問し、物理、生物、化学の授業参観を行うとともに、科学クラブの活動に加わりながら、高校生との交流を深めていました。特に海外研修に参加予定の高校生たちと、語学練習を兼ねて異文化交流をしました。

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四日市高校における物理実験の参加
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津高校の生徒との交流活動

<成果報告会とお別れ会>

9日目には、このプログラムで学んだことを一人ひとりが報告しました。

参加学生からは、
「学んだ知識や実験を、教員になった時に生かしたい」
「生徒の好奇心を育むように努力しなければならない」
「子どもたちが家族と科学を楽しめる科学館はすばらしく、ベトナムにも必要だ」
「三重大学との学生交流を進めたい」と語っていました。
それに続いて、修了証および、さくらサイエンスプログラムのバッジが贈呈されました。

その後、参加者が準備したサイエンスショーを実演してくれました。ドラえもんの曲が流れ、科学実験をドラえもんの寸劇として企画されたもので、参加した教育学部の学生たちにとっても勉強になりました。

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成果報告会とお別れ会

10日間のプログラムは濃密で疲れたようですが、充実した研修を惜しみながら帰国しました。参加者全員がFacebookに日本での体験をアップしている様子から、ベトナムの科学教育のリーダーとして活躍することが期待されます。