2016年度活動レポート(一般公募コース)第250号
日本・インドのベンチャー生態系の比較研究
豊橋技術科学大学総合教育院からの報告
①プログラムの概要
ソフトウエアを中心にInfosysなど著名ベンチャーを輩出するバンガロールと、トヨタ・ホンダなど世界的製造企業を生み出している浜松地域とのベンチャー生態系の比較をし、次に主要な自動車産業クラスターである豊田市の下請け中小企業向け新規事業支援制度の特徴を検討して、日印の技術革新マネジメントの研究交流を促進する目的で、インド理系トップのIISc(インド理科大学)経営研究科の院生10名(修士課程4名、博士課程6名)を2016年12月11日から12月18日の日程で招へいしました。
これは昨年度の「インダストリー4.0 への移行に関するMOTの可能性」の発展型として位置づけ、バンガロールのソフトウエアベンチャーとトヨタ系下請け製造中小企業とのマッチングの困難さの理由を理解する研究計画として立案しました。
②交流の特徴と成果
学内でのMOT(Management of Technology)研究チームとの研究発表・質疑を通したアイデア・情報・視点の研究交流、関連授業での学部・院生・本学留学生との意見交流などを行い、若い世代間での真剣な討論を行いました。
特に、他国の留学生も交えた院生同士の熱い議論は相互に建設的な刺激をもたらし、事後の互いの感想も肯定的でした。
また、好評の施設見学としては、学内施設EIIRISクリーンルーム内での半導体の一貫設計製造工程、市内の武蔵精密工業での自動車部品加工の飛行機部品由来の精度の高さ、浜松ホトニクス中央研究所での光工学の先端的研究の水準の高さ、トヨタ自動車堤工場での組立工程の規律正しさなどを観察しました。
学外での発表・討論会として、浜松市産業振興課から創業支援施策や具体的な交流拠点としての浜松起業家カフェについて説明があり、市の産業構造が自動車などの下請けとベンチャー創業のハイブリッド型であること、インド側からはバンガロールのベンチャー生態系が国外の技術と国内の市場を結ぶ高学歴人材に依存することが紹介されました。
そして、とよたイノベーションセンターでは、ハイデラバードがマイクロソフトCEOのSatya Nadella氏などの成功者を介して米国シリコンバレーに直結している動画が示され、他方、インド学生側には、見過ごされ易い中小企業にも技術指導がなされている点が新鮮に映ったようです。
要は、国境・大学・ベンチャー・大企業・中小企業・行政の間の、ともすれば厚い壁をも超え得る強力なリーダーと支援者とのネットワーク化が鍵であるように思われます。
最終日は、トヨタ産業技術記念館で、中部圏の繊維から自動車への産業転換の様子を体験的に理解し、名古屋城の本丸御殿の見学では、国を超えた美意識の一致の不思議さを経験しました。
③将来の課題と展望
日本の鉄道などの社会インフラや、規律正しさ・文化に魅力を感じているインドのトップレベルの人材を招くことは、世界の人材交流のハブであるシリコンバレーに、少しでも近づくことに通じるのではないか思われます。