2016年度 活動レポート 第70号:東京海洋大学

2016年度活動レポート(一般公募コース)第70号

被災地における第一次産業復興の現状調査プログラム

東京海洋大学教授 小松俊明さんからの報告

2016年10月21日から30日まで、アジア5大学(香港大学、シンガポール国立大学、チュラロンコン大学、マレーシア国立サバ大学、台湾大学)から10名の学生を招へいして、第2回海外探検隊 EAST PROGRAM を実施しました。招へいした学生は学部4年生から大学院生までであり、漁業、農業、林業などのサイエンスを学ぶ学生達です。

プログラムの目的は、2011年の東日本大震災から5年が経った今、被災地の第一次産業(漁業・農業・林業)の復興状況を調査することでした。ヒアリングの対象は、岩手県盛岡市にある私立盛岡中央高校、宮城県気仙沼市にある魚市場、水産冷凍施設、材木店、被災地に導入された水耕栽培の農場施設(神奈川県秦野市)、復興庁(霞が関)、築地市場(東京都)です。この調査結果は、東京海洋大学の学内で報告会を実施するだけでなく、千葉県にある松戸市立松戸高校でも、高校生を対象に報告されました。

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千葉県の高校で国際理解交流会(松戸高校)

招へいされた学生が学ぶ大学は、どこもそれぞれの国を代表するトップ大学であり、学生達の優秀さが光っていました。これら5大学は、東京海洋大学が2013年以来、毎年2回実施してきた海外探検隊プログラムのパートナー大学です。お互いに深く交流してきた大学が相手とあって、とても充実した交流ができました。

盛岡・気仙沼視察では、すべてのアジア学生が初めて日本の被災地を訪問したため、誰もが高い関心を持ち、日本の復興のスピードにも感心していました。一方、難しい課題が残っている現実を知り、学生間でいろいろな意見を交わすなど、知見を深めました。

盛岡では、東日本大震災以降も積極的に海外研修に参加してきた盛岡中央高校の高校生と交流しました。アジアのカルチャーや世界共通のトピックについて意見交換していた様子がとても印象的でした。

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盛岡中央高校にて
被災地の高校生と国際理解交流会
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岩手県私立盛岡中央高校にて

翌日は気仙沼に行き、実際に被災した方から当時の様子を教えていただきました。アジアの学生は、ニュースで見て知っていたこととは異なる、新たな情報をたくさん得たことで、現地の様子をより正確に理解したようでした。

まずは、気仙沼市のランドスケープから当時の様子を振り返り、気仙沼魚市場を視察することで、気仙沼における漁業の復興状況を知りました。その後、材木店を訪問し、震災直後の気仙沼市の林業の状況と現状について教えていただきました。その後、水産物の冷凍施設を訪れて零下30度の冷凍庫を体験、さらにサメの水揚げ日本一を誇る気仙沼港のサメ漁について学びました。東京に戻ってからは、被災地の農業復興に貢献している神奈川県秦野市にある農場を訪問して、先進的な水耕栽培について学習しました。

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被災地の水産業復興を調査(気仙沼魚市場)
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被災地の林業復興の現場を視察(小山材木店)

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水産の冷凍施設視察(足利本店)
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被災地に導入された農業施設を視察(グランパ)

東京では復興庁に訪問して、過去5年間の復興支援政策についてヒアリングしました。また被災以降、福島沖で海洋調査を行ってきた海洋大の練習船を視察し、さらにプログラムの最後には、海洋大の実習施設(千葉県館山市)でシーカヤック演習を行い、日本の海を実際に感じてもらう機会を作ることができました。

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被災地への政策についてヒアリング(復興庁)
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被災地沖にも行く練習船を視察(海鷹丸)
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シーカヤック研修でチームは団結(館山湾)

EASTプログラムを終えてみて特に印象に残っていることは、アジアの学生がとても貪欲に様々な質問をして、日本への理解を深めてくれたことです。また、アジア学生は滞在中に学内で3つの発表会を行ってくれたため、多くの海洋大の学生との交流の場ができました。とかく日本の学生を海外に送り出すプログラムが多い中、さくらサイエンスプログラムのような、海外の学生を招へいできるプログラムは貴重な存在であり、今後も末永く続いてほしいと願っています。