2016年度活動レポート(一般公募コース)第61号
応用数理の分野における日中の学生研究交流
新潟大学理学部からの報告
JSTの「さくらサイエンスプログラム」により、7月25日(月)~8月3日(土)までの10日間、中国科学技術大学・数学科学学院(以下、USTC)の学生7名と引率教員1名の計8名を受け入れました。
今回のプログラムは「微分作用素の高精度な固有値評価方法と応用」というテーマでの共同セミナーの開催や、新潟で開催された非線形解析学と最適化に関する国際会議への参加などを通して、応用数理科学の分野における日本の先進研究をUSTCの学生に紹介しました。
また、 大学から程近い弥彦神社を訪ねる等、日本の伝統文化に触れてもらうイベントも行いました。これらの活動には、USTCの学生に日本への興味を持ってもらい、将来的には日本、特に新潟大学で研究活動や留学などを期待したものです。
7月26日午前は新潟大学理学部棟大講義室にてオリエンテーションと2時間の日本語授業を行いました。午後には、柏崎刈羽原子力発電所の見学を行いました。発電所スタッフによる原子力発電の原理や安全対策などの説明に、学生たちはとても真剣に耳を傾けていました。学生たちは特に東日本大震災に関わる福島原子力発電所の事故をうけた後の日本の原子力発電に対する取り組みや改善に対して、深い感銘を得たようです。
翌27日は早稲田大学から劉志先生をお招きし「Optimization in Wireless Communications」というテーマで講演していただきました。
28~30日の3日間は、固有値の高精度な評価方法に関するセミナーを開催しました。新潟大学理学部数学科にて開発されたクラウド教育環境(CES)を利用し、先進的なIT技術を利用する教育環境も体験してもらいました。中国では数値計算分野の研究者は多くいますが、厳密な数値計算を行い、計算機援用証明などの研究に従事している研究者は極めて少ないという現状があります。今回の集中講義での勉強はこの分野の研究者の育成も視野に入れています。
7月29日の夕方には、参加者全員で新潟大学の近くの砂浜に移動し、バーベキュー会を開催しました。参加者は奇異で有名な日本文化の1つであるスイカ割りなどの体験を通して日本文化を学びました。
7月30日は弥彦山に登り、下山後は弥彦温泉に入りました。登山中知らない方と挨拶を交わしたり、居酒屋で中国文化に興味を持っている日本人と話したり、また弥彦神社の参拝などを通して学生達が日本の文化により深く興味を持つきっかけとなったことと思います。
夕方には鶴岡市に移動して、翌日、(株)シンクロン様を訪問し見学を行いました。同社の長江氏は中国科学技術大学の出身であり、同社が世界をリードする真空膜の製造技術を説明してくださいました。規模が小さくても世界トップの技術を持っている日本の「ものづくり」分野の会社に対して、学生は深い関心を寄せていました。
8月2日、新潟にて開催された非線形解析学と最適化に関する第5回アジア会議(NAO-Asia2016)に参加しました。USTCの楊周旺先生は「Sparse optimization via partial group regularization」というテーマで発表をしました。早稲田大学など他の研究機関から来ていた学生や研究者との交流もできました。
今回の研究交流によって応用数理の分野における日中間の学生の研究交流が行われました。これを機会に、更なる交流や研究の発展を期待します。最後にこの場を借りて本事業にご助力いただきました、さくらサイエンスプログラムならびに関係者の皆様に感謝申し上げます。