2015年度活動レポート(一般公募コース)第214号
次世代ナノテクを担うタイの若手研究者との科学技術交流
国立研究開発法人 産業技術総合研究所からの報告
平成28年1月11日から1月30日まで、さくらサイエンスプログラムにより、タイのNANOTECから10名の若手研究者(8名の研究員と2名の技術者)が来日しました。
タイNANOTECと産業技術総合研究所(産総研)はこれまでもナノテク分野で多くの研究交流の実績がありましたが、本プログラムではその実績を次世代に継承し、若手人材を育成することにより交流をさらに推進するとともに、研究成果を両国社会の発展に結び付けることを期待しています。
初日は、オリエンテーションを行い、産総研の紹介、安全教育について講義を行いました。また、滞在期間中のスケジュールを確認するとともに、日本での生活について注意事項なども説明しました。
2日目の午前中は、産総研の研究者との意見交換会を開催しました。最初にタイ側から所属する研究部門の紹介と各人の自己紹介がありました。大変よくまとめられたスライドを用いた説明で活発な質疑が行われました。その後は、産総研のNano-Processing Facility (NPF) 施設の見学を行いました。
午後には、つくばにある国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)を訪問しました。 NIMSの概要説明の後、X線小角散乱、電子顕微鏡(TEM)、Heイオン顕微鏡、NMR(超1000 MHz)等を用いた研究について、実験室で機器を見学しながら、説明していただきました。
また、2日目の夜には、産総研の金山副理事長、三木TIA推進センタ―長など本プロジェクト関係者が出席して、歓迎会を開催しました。
3日目からは、2つのグループ(各5名)に分かれ、産総研での研修(実習)を開始しました。研修内容は、スーパークリーンルーム(SCR)での超微細加工に関する内容とマイクロマシン(MEMS)に関する内容の2つのテーマでした。それぞれ5日間研修を行い、合わせて10日間、ナノテク分野の最先端設備を利用して行いました。タイのNANOTECでは今後クリーンルームを設置してナノテク研究を本格的に進めていく計画があり、今回の若手研究者が産総研での経験を生かして、タイのナノテク研究の主力となり活躍してくれることを期待しています。
産総研での10日間の研修を修了した1月27日に修了式を行い、金山副理事長から1人ひとりに修了証が授与されました。
1月29日には、X線回析や蛍光X線、熱分析および分光分析機器などの製造を専門としている株式会社リガク(東京都昭島市)を訪問しました。会社概要説明の後、実験室および生産設備の見学をさせていただきました。企業での研究開発について丁寧で分かりやすい説明をしていただきました。研修生は、民間企業の見学により、研究成果の実用化に向けた刺激を受けたようです。
29日には、東京ビックサイトで開催されていたnano tech 2016展の視察も行い、午後は産総研が代表機関として実施している文部科学省科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業「ナノテクキャリアアップアライアンス」(Nanotech CUPAL)の交流会に参加しました。スイスとドイツから来日したナノテク研究のトップ研究者2名の講演を聴講し、その後、Nanotech CUPALに参加している日本人若手研究者も含めた参加者と意見交換を行いました。
タイからの若手研究者は慣れない日本の寒さにも負けず、無事プログラムは終了し、「これをきっかけに産総研を中心とした日本のナノテク研究者と交流を続けたい」「ぜひまた日本に来たい。」との感想がありました。また、産総研としても、今後、NANOTECを中心としたタイ研究機関との研究交流をより一層深めていきたいと考えています。
さくらサイエンスプログラムにより、とても有意義な国際交流の機会をいただき、また本所の研究員にとっても素晴らしい経験をさせていただいたことに、心より感謝申し上げます。