2015年度活動レポート(一般公募コース)第232号
東南アジアの学生と森林生態系保全に関するセミナーを開催
静岡大学農学部からの報告
静岡大学
さくらサイエンスプログラムの支援を受けて静岡大学農学部では、2015年9月24日から10月3日まで”Field seminar in temperate forests around Mt. Fuji”を開催し、東南アジア4か国(インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム)の5大学から10名の修士学生を受け入れ、集中的な森林生態系保全に関するセミナーをおこなった。
富士山周辺の多様な生態系を利用して、環境配慮型の森林資源管理技術、災害レジリエンス機能の高い山岳地管理手法を教育することを目的とした。本プログラムの学生に加え、スロベニア及び中国から独自に招聘した学生と日本人学生が参加し7か国の学生が森林生態系保全に関して共通のフィールドで実習することで学生間の相互刺激も狙いとした。
9月25日(静岡大学)
日本の多様な植生タイプに来して各生態系に関するトピックを紹介した。リモートセンシングによる生態系モニタリング手法について最新情報を提供した。
9月26-27日(富士山周辺の森林生態系)
五合目周辺の森林限界において、森林限界の生態系の特徴について講義を行った。森林限界が上昇している現状を説明し、上昇理由について現地の観察や空中写真情報を用いて考察させ、現在の生態系動態の理解に時間軸をさかのぼる幅広い考察が重要であることを学生全員に共有させた。
亜高山帯林下部ではニホンジカの食害による生態系劣化が深刻である現状を観察させ、各国の野生動物の管理について議論を行った。
富士北麓にある国立環境研究所のカラマツ林のフラックスモニタリングサイトを視察した。同所の高橋研究員に、渦相関法を用いたモニタリング手法や生理計測によるアプローチ手法について説明いただいた。また静岡大学と国立環境研究所の共同研究として、樹液中の炭素動態や細根バイオマスの動態についての測定手法について紹介した。
9月28-29日午前:(大井川上流の静岡大学南アルプスフィールド)
25haに及ぶ大規模斜面崩壊を見学し、発生メカニズムと修復保全法について紹介した。
種多様性の高い太平洋側ブナ林の生態構造および、林床のタケの開花現象が森林の維持メカニズムに関わっていることを紹介した。
生物多様性が生態系サービスに及ぼす貢献について研究プロジェクトの現状を紹介した。28日夜には各国の森林保全の現状について学生相互のプレゼンテーションを行った。
9月29午後-10月1日午前:(静岡大学天竜フィールド)
単純人工林の生態的劣化の問題と、人工林から照葉樹天然林に再生する生態的修復についての取り組みを現地で紹介し、評価手法について講義した。
樹木の生理生態計測手法として、ガス交換速度・水分特性・クロロフィル蛍光反応の測定の各項目について実習した。
各学生の研究内容のプレセンテーションを行い、相互に議論を行い今後の解析方法に関するアドバイスを個別に行った。
10月1-2日(岐阜県関ケ原市)
伝統的な人工林単木択伐施業の行われている今須人工林を視察し、その施業を維持していくうえでの問題点を紹介した。2日夕方静岡駅で解散した。
アフターケアー:参加学生内のメーリングリスト等で情報交換している。また本プログラム参加学生をタイのカセサート大学と共同で熱帯季節林における野外セミナーに招聘し、異なる生態系での学習を行い、学習効果と交流促進を高めている。