2015年度活動レポート(一般公募コース)第129号
中国の学生たちと台風によるリアルな災害と危機対応を体験
北京理工大学の大学生と持続可能な都市地域に関する研究交流
京都大学防災研究所からの報告
京都大学防災研究所
平成27年8月21日から8月27日にかけて、さくらサイエンスプログラムの支援を受け、北京理工大学の大学院生10名が熊本並びに京都を訪問し、現地の大学の関連教員、学生と研究交流を行いました。
今回の招聘では、京都大学と北京理工大学の間で継続して実施している”Joint Seminar on Sustainable Management of Cities and Regions under Disaster and Environment Risks”の第8回目を熊本で実施するのに際して、同セミナー内に京都大学、熊本大学等の大学院生も加わった若手セッションを設け、研究発表・交流を行いました。
また、水害、土砂災害、火山災害など、様々な自然災害にさらされている阿蘇地域のフィールド訪問を行うと共に、京都大学防災研究所を訪問し、事業継続計画に関する先進的な取り組みについて研究者らと意見交換を行うとともに,今回の研修の振り返りを行いました。
8月22、23日は、熊本大学(くすのき会館)にて、”The 8th Japan-China Joint Seminar on Sustainable Management of Cities and Regions under Disaster and Environmental Risks”が開催されました。同セミナーでは日中合わせて25名のシニアの研究者が研究発表を行いましたが、加えて、若手セッションにおいて、今回の招聘者10名を含む17名の大学院生が研究発表を行いました。
若手セッションにおいては、シニアな研究者からの様々な質問、コメントが出されると共に学生同士の質疑の様子が見られました。また、若手セッションに限らず、招聘者から数多くの質問が見られ、積極的な議論が展開されました。制度や文化、社会的文脈の異なる日本と中国ではありますが、持続可能な都市地域の形成に向けて、日中の交流、特に、中国の若手と日本のシニア・若手が交流し、お互いの現況の理解を深化させたことが本セミナーを通じての成果であったと思われます。
続いて、8月24日は、阿蘇地域のフィールドツアーを行いました。具体的には、阿蘇ジオパーク協議会の方と共に、米塚や草千里などの火山による地形の形成過程について学習すると同時に、火山博物館を訪問し、阿蘇地域が受ける自然からの恩恵や自然災害との共生、また対策・対応の歴史について学習しました。
当初は、25日に熊本城の見学の後,午後から京都に向かう予定でしたが,台風のため,予定を変更して終日移動に費やしました。このため、京都への移動は大変スルリングなものとなりました。新幹線や在来線が止まっているなか、何とか危機一髪乗り継いで京都に夜半過ぎに到着しました。図らずも、災害と危機対応を経験する機会になりました。
京都では26日に、京都大学防災研究所を訪問し、小野教授(同研究所)とEsquivel教授(Valparaiso University, Chile)から港湾における事業継続計画について講義を受け,意見交換を行いました。最後に,このプログラム全体を振り返り,意見交換を行いました。
研究に関連した意見交換もさることなら,日本の交通システムの危機管理能力の高さ,日本人の辛抱強さ等に関しても実感したと感想を述べていましたし,このような機会を与えていただいたJSTにも大変感謝しているという意見を聞きました。
全体を通じて、熊本から京都に移動する際に台風に直面するなどのアクシデントにも見舞われましたが、持続可能な都市地域の形成に向けて、世代を超えて意見交換を行うことが出来たことが何よりの活動成果です。
このような機会を作って頂いたJSTさくらサイエンスプログラムに感謝申し上げると同時に、今後さらなる国境の枠にとらわれない交流が増えていくことを期待いたします。