2015年度活動レポート(一般公募コース)第99号
日本とモンゴルの高校生が相互に紹介して交流を深める
ディジタル回路の基礎と理論を学んだ研修
仙台高等専門学校からの報告
仙台高等専門学校
日本の高専に留学を希望するモンゴル国内屈指の高校生10名を対象に、仙台高専広瀬キャンパスにおける「ハードウェア記述言語(HDL)による回路設計技術の入門」をテーマとした研修を実施しました。
初日の午前のオリエンテーションでは、仙台高専の代表学生が日本や仙台を紹介した後、モンゴルの高校生がモンゴルの紹介を行い、仙台高専内田校長等との懇談を行いました。
昼食後、創造教育棟に移動し、千葉慎二教授による4日間にわたる講義と実習を開始しました。HDLによる回路設計は、従来の回路図表記による設計手法と比べてはるかに抽象度の高いレベルで設計できるため、近年のディジタル回路の大規模・複雑化に対応できる設計手法として大変重要な技術です。
この研修でモンゴルの高校1年生は、HDL設計手法の基礎を理解し、実際に設計した回路を動作させるまでを体験できるようにしました。
まずディジタル回路の理解に必要な基礎知識として、論理演算(論理積、論理和等)や数値表現(2進数、16進数等)の基礎、簡単な論理式の設計を学習しました。設計した論理式と具体的な回路の動作と結びつけるため、入力値をスイッチのON/OFF、出力値をLEDの点灯/消灯で表現するディジタル回路を製作し、自身の設計したディジタル回路の動作を体験して理解を深めてもらいました。
実習には仙台高専が教育用組込みボードとして独自に設計した“カメレオンボード”を利用しました。カメレオンボードを用いると、学生の設計したディジタル回路をCPLDというデバイス内に容易に構築でき、様々な周辺機器を接続した実験を短時間で行えます。今日的なハードウェア設計手法を、実習を交えて体験できるので、皆さん興味深く取り組んでいました。
最終課題としてグループに分かれて簡単なモータ制御回路を製作し、最終日の成果発表会で内田校長等に発表しました。研修内容は仙台高専の3年生が学習するレベルです。高校1年生なのでディジタル回路やプログラミングの学習経験がないにも関わらず、確実に理解していることがわかる発表で、モンゴル国で選抜された極めて優秀な学生であることが改めて実感されました。
研修では、引率教員が日本語をモンゴル語に通訳し、モンゴルから仙台高専に留学している先輩や日本の高専生が実習を補助しました。
学内での研修以外には、仙台市科学館を訪問し、展示された科学技術に興味深く見入っていました。また、東日本大震災での津波被災を後生に伝える「閖上の記憶」を見学し、語り部の方からのお話だけでなく被災した当時の学校を訪れて、恐ろしい津波を肌で感じたようでした。その後、東北大学災害科学国際研究所を訪問し、今村文彦所長と源栄正人教授から災害に対する最先端の科学技術の講演を聴講しました。今村所長からは大変優秀な学生である、と感想を頂きました。短い時間でしたが、青葉城跡も訪れ、日本文化に触れることもできました。
8月20日から25日の実質6日間の研修は、土日の研修を含む過密なスケジュールでしたが、帰国時には、帰りたくない、もっと高専で勉強したい、と目を輝かせた発言があるほど充実した内容でした。