さくらサイエンス・ハイスクールプログラム 第31号
対称性・非対称性が物理学に与えた影響について講義
有馬朗人先生の特別講義を受講
独立行政法人科学技術振興機構(JST)
「さくらサイエンス・ハイスクールプログラム」第3陣の最終日、8月8日の午前中、120人のアジアの高校生たちは、元文部大臣、元科学技術庁長官の有馬朗人武蔵学園長から特別講義を受けました。
『Symmetries in Arts, Culture and Nature』と題して、有馬先生は「対称性・非対称性」について、西洋とアジアの考え方の違いを建築、絵画、庭園など分かりやすい例を引いて説明してくれました。
西洋ではシンメトリーである対称性が重視されるのに対し、アジアの中でも特に日本では、非対称性が重視されるという点です。
この考え方が、物理学の世界でも大きく影響を与えていると先生は説明します。まず、1957年に素粒子間の弱い相互作用におけるパリティ非保存に関する研究で、パリティの対称性が破れていることを予言してノーベル物理学賞を受賞した中国人の楊振寧、李政道両博士の研究を紹介しました。
さらに2008年ノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎博士の「自発的対称性の破れ」、そして同じくノーベル物理学賞を受賞した益川敏英博士と小林誠博士の「クォークが自然界に少なくとも3世代以上あると予言する、対称性の破れの起源の発見」などを紹介しました。
これらの物理学者たちは、アジア人であったがために非対称性理論を考えることに抵抗がなかったことを示唆しました。
地域の文化的、歴史的側面が、物理学という科学にも大きな影響を与えているという講義は、アジアの高校生たちに大きな感銘を与えました。
高校生からは「対称、非対称の両方をあわせた考え方はないのでしょうか?」などの質問がでましたが、先生はひとつひとつに丁寧に答えてくれました。
有馬先生は講演後に高校生たちと昼食を囲み、アジアの若者たちとの会話を楽しんでいました。
有馬先生は、昼食を囲みながら高校生との会話を楽しんでいました。
講演後、昼食を食べながら、有馬先生の講義について熱心に語り合う高校生たち。