さくらサイエンス・ハイスクールプログラム 第29号
人民日報がさくらサイエンスプログラムを報道
独立行政法人科学技術振興機構(JST)
中国で最も影響力、また権威のある機関紙「人民日報」が、さくらサイエンスプログラムについて、「未来は若者にかかっている」の見出しで報道しました。
翻訳文は次の通りです。
未来は若者にかかっている
―中国の高校生、日本のノーベル賞受賞者の特別授業を受講-
人民日報駐日記者 賈文婷
「科学者としても人間としても大切なのはABC。Aは何事にも野心的に取り組むAmbition、Bは基礎を重視するBasic research、そしてCは創造性のCreativityであり、触媒のCatalystでもある。」7月24日、国際協力機構(JICA)東京国際研修センターにおいて、2010年にノーベル化学賞を受賞した根岸英一博士は、中国から来日した80余名の高校生を前に特別授業を行い、自らの人生哲学についてシンプルに明快に語った。
簡単な前置きの後、根岸氏は自らの研究成果であり、ノーベル賞受賞のきっかけとなった「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」について、その発見の経緯などを説明した。熱心に耳を傾ける高校生たちは、根岸氏の神秘的な化学の世界に引き込まれていったのである。
参加した中国の高校生は、独立行政法人科学技術振興機構が主催する短期交流事業「さくらサイエンスプログラム―さくらサイエンス・ハイスクールプログラム」により来日した。いずれも理系の成績に優れた学生で、本年度の国際数学オリンピックに中国代表として参加し一等賞を受賞した学生をはじめ、中国国内の数学、物理、化学のコンテストで入賞した学生も多く含まれている。
根岸氏の講義が終わると、学生たちは興味のある事柄について根岸氏を質問攻めにした。根岸氏は、中国の科学者についてどう思うか尋ねられると「中国の科学者は基礎知識も創造力もあり聡明である。私の研究仲間にも多くの中国人がいる。私の実験研究も、中国の科学者によって支えられた部分が大きい」と答えた。
会場には東京工業大学付属科学技術高等学校の学生も参加しており、その中のひとりがノーベル賞受賞の感想を求めた。根岸氏は「ノーベル賞を受賞できたのは運と努力の賜物であり、亡き恩師ハーバート•ブラウン教授に大変感謝している」と述べた。
遼寧省から参加した高校生、張翰中は「今日はノーベル賞を受賞した根岸博士の講義を直接受けることができ、大変勉強になった。物事の本質が分かった上に、化学における新たな知識や情報も得ることができた。また新しい発見もあった。今回の1週間の訪日でいちばん感銘を受けたのは、科学未来館のロボットASIMO(アシモ)を見学できた時である。来日前にインターネットでASIMOの動画を見たことがあるが、今回実物を目の当たりにし、感慨深く心を動かされた。ASIMOはロボットというより、先端科学技術の結晶だと思った。」と感想を述べた。
「さくらサイエンスプログラム」の発起人である沖村憲樹氏が当該プランを立ち上げたのは、アジアの青少年に来日する機会を提供することで、科学技術の分野で日本の青少年との交流を深めてほしいと願ってのことである。
訪日団の責任者である遼寧省科学技術庁職員、楊暁勇はこう述べている。「中国の高校生が今回見学した場所はその大部分が科学技術と関係の深い機関や施設であり、最先端技術に触れたことで、日本の科学技術の成熟度合いを体感し多くのものを得ることができた。また、日本のスタッフと接触する中で、日本人が中国に対しとても友好的であるとも感じた。中日友好は民間に根付いており、その将来は若者の手にかかっている。「さくらサイエンスプログラム」が中日関係のさらなる改善に寄与することを願っている。
(「人民日報」 2014年07月25日 21 版)