2014年度 活動レポート 第25号:第3陣(3) 益川敏英博士の特別講義

さくらサイエンス・ハイスクールプログラム 第25号

「小中学生のときは落ちこぼれで、宿題などしなかった」
益川敏英博士のユーモアあふれるスピーチに会場は爆笑

独立行政法人科学技術振興機構(JST)

さくらサイエンス・ハイスクールプログラムの第3陣8か国120人の生徒と都立戸山高校の生徒51人は、8月5日、JICA東京国際研修センターでノーベル物理学賞を受賞した益川敏英博士(名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構長)の特別講義を受けました。

会場のデスクには、この日参加した9カ国の国旗が飾られ、国際色を盛り上げました。

冒頭にまずJST外村理事が「さくらサイエンスプログラムは、アジアの青少年に日本を見てもらい、好きになってもらうものだ。是非、日本の科学研究の現場を見学して下さい」と挨拶、すぐに益川先生の講義に入った。

益川先生はまず用意してきた書面を見ながら「現代の科学と社会」と題して20世紀と21世紀の科学研究現場の大きな様変わりを指摘しました。素粒子物理 学は2×1メートル程度の机上の研究でしたが、「いまは地下100メートル、周囲27キロのトンネルを掘り、素粒子を激突させる実験をしている」と巨大化 する科学研究の現場を語りました。

そのような時代を迎えているが「アジアの農耕民族は集団行動で発揮する美質を持っている。このアジアの稲作民族の美質を発揮していくときである」と語り、アジアの時代であるとの考えを示して高校生たちを激励しました。

アジア8カ国と日本の高校生を前に、最初はかなり硬い内容の話でした。

そのあとで益川先生は、幼少のころから素粒子論の研究者になるまでの過程では「名古屋大学の大学院生のころは、専門を決めることはなく自由に勉強をし た」、「科学にたいする憧れがもっと知りたい思いとなり、科学者の真似をしていると理解が深まり、科学者になっていくものだ」などと語り、若いときには専門を決めずに自由度を持っていることが 重要であることを語りました。

また「自分は小、中学校のときは勉強もしない落ちこぼれだった。宿題など絶対にしなかった」と語ると、会場は爆笑で沸きました。また、 素粒子論の大家・坂田昌一博士との出会いまでのエピソードなども語り、素粒子クォークが、少なくとも6種類以上あることを思いついたのはお風呂に入っていたときであるエピソードも披露しました。 さらに英語嫌いになったのは、「英語の習い始めに”Money"を間違えて「もうね~」と発音して笑われてまった経験がある」と言い、それ以来英語は大嫌いになったと語りました。

益川先生のノーベル賞受賞業績は、素粒子物理学の対称性の破れに関するもので、ひどく難解な分野でしたが、若い時代の研究に取り組むときの自由な心構えやテーマを決めたら集中してやり遂げる取り組みなどを語って聞かせ、生徒たちに大きな感銘を与えたようでした。

質疑応答の場面ではインドネシアの高校生から「先生にとって物理とは何ですか?」と質問を受け、益川先生は「メシの種であり、遊びに逃げ込むことができる場所です」と答えていました。
また都立戸山高校の生徒からは「宿題をやらずに何をやっていたのですか?」と聞かれました。益川先生は「図書委員をやって、学校が購入した新しい本を読んでいた。本の虫でした」と答えました。
モンゴルからの高校生からは「先生はいま幸せですか。幸せとはどういうことでしょうか」と質問されると「自分の好きなことをやって給料をもらえることです。こんなハッピーなことはありません」と言って笑わせました。

質問は全て英語です。アジアの高校生は達者な英語で次々と質問をしていました。
質問に回答する益川先生は、立ち上がって話をしていました。
 
益川敏英博士を囲んで集合記念写真を撮影しました。

特別講義の後は、昼食懇談の会になり、益川先生を囲んで楽しい懇談をしたり、都立戸山高校生とアジアの高校生が談笑したりお互いに写真撮影をして交流を深めました。