2014年度 活動レポート 第21号:さくらサイエンスプログラムの効果と展望を語る

特別寄稿 第21号

さくらサイエンスプログラムの効果と展望を語る

日時:
平成27 年3 月11 日(水)午後4 時~ 6 時
場所:
JST 東京本部サイエンスプラザ(千代田区四番町)
出席者:
黄 鴻堅(Ooi Hong Kean)麻布大学獣医学部教授
田中 正 筑波大学国際室特命教授、筑波大学名誉教授
橋本研也 千葉大学大学院工学研究科教授
沖村憲樹 さくらサイエンスプログラム推進室長、元JST 理事長
 

なぜ、さくらサイエンスプログラムが誕生したのか

沖村憲樹 本日はご多忙の中、ご出席いただきありがとうございます。最初になぜさくらサイエンスプログラム事業を始めたのか。その創設者として簡単にご説明したいと思います。
私は科学技術振興機構(JST)で理事長をやっていたときから、日中交流が非常に重要と考え中国との交流に力を入れてやっていました。それでCRCC(中国総合研究交流センター)を9 年前に創りました。次に日中両国の知の源泉たる大学の交流が重要だと思い、日中大学フェア&フォーラムを創設しました。日中双方から数十大学が参加するフォーラムですが、これで大学同士の交流がかなり広がりました。
さらに日本を理解してもらうために「客観日本」という中国語のウェブサイトを作りました。中国から一日平均二十数万件のアクセスがございます。日本の科学技術の正確な情報を理解してもらおうと始めたものです。しかし一番重要なのは人の交流だとずっと考えてきました。中国で大変尊敬されている有馬朗人先生にCRCC のセンター長をお願いし、2 人でさくらサイエンスプログラムの素案をもって下村文部科学大臣のところに陳情に行きました。

下村大臣の指導で東南アジアに広げる

中国から1万人の若者に来てもらおうという案を出したところ、下村大臣からは中国だけではなくアジア全般でやるようにというご指導がありまして、14 カ国・地域に広がりました。下村大臣のご指導でこの政策が一気に広がって、いろんな意味合いを持ってくる政策に変わったと思っております。
政界の諸先生方の応援と官界の方々のご理解を得てようやく実現したと感謝しています。今年度(平成26 年度)は2,000 人招へいの予定が2,945 人になりました。アジア諸国・地域で日本は、科学技術の面で進んでいるのでアジアの科学技術人材の養成に貢献したいということが一番の目的であります。これは同時に日本側にとっても非常にメリットがございます。機関と機関が仲良くなった関係をもっと日本中に増やしていく、日本の国際化を促進する草の根活動を目指したものです。
それでは先生方からプログラムの概要、それから感想、効果、課題と今後の展望などについてお一人ずつお話しいただきたいと思います。

アジア地域トップレベルの獣医学生に来てもらう

黄 鴻堅 今回私は、アジア諸国・地域の獣医学部に声をかけました。台湾の国立中興大学と国立台湾大学、韓国はソウル国立大学、中国は北京農学院と中国農業大学、マレーシアはマレーシアプトラ大学、タイはチュラロンコン大学、チェンマイ大学、ラジャモンコン大学、インドネシアはガジャ・マダ大学、フィリピンのフィリピン大学ロスバニョス校から来てもらいました。それぞれの国を代表する獣医学におけるトップの大学から学生を送ることを依頼しました。
家畜感染症と人獣共通感染症のアジアでの学術交流ネットワークを構築したいと取り組みました。将来的に鳥インフルエンザや口蹄疫の研究・交流ネットワークを目指したものです。若い獣医師の間でネットワークを作ることで、将来、国際的に貢献する人材になることを期待しています。
このような学術交流で最も大事なのは、友情です。若い時には一緒に学び、一緒に生活し、一緒に成長していくことで友情が深まります。日本の獣医学生の国際感覚を育てるためにも、今回は東大、農工大、日大、日獣大、麻布大から合計6 人を招へいして、一緒に実習させました。

 

来日前に提出させた2 本の宿題

今回の招へいで私が重視したのは学力レベル、英語レベルと健康です。私が個人的に交流のあるそれぞれの大学の先生とのネットワークを活用して、招へいの選抜を進めました。学生の選抜では、学力、英語力、健康を重視してください、と送出し大学に依頼しました。もし、学力不足でコースに追いつかない場合は、修了証書を出しません、とあらかじめ伝えたところ、どの大学も非常に優秀な学生を送り込んできました。
また、来日する5 週間前には全員に宿題を出しました。1 回目の宿題は、コースで取り扱う病原体の性質、感染性、診断方法の原理などについて書かせました。日本人学生も同じく、英語で回答してもらいました。
続いて2 回目の宿題は、ソーシャルサイエンス分野について書かせました。一つの感染症を選び、自国でその病気が発生したら、どのような対策を取るかという課題です。その病気がどのように自国の社会、経済、国際関係、貿易、野生動物保護、マスコミ、バイオテロリズム対策、環境保全などに影響を与えるか、それぞれの観点から論じてもらいました。
知識だけ追求しても、知恵がないとダメだと思います。知識がKnowledge、知恵はWisdom ですね。Wisdom とKnowledge は何が違うかというと、私の考えではWisdomはKnowledge のアプリケーションです。Knowledge がたくさんあっても、Wisdom がなかったら、それは発展性がないということだと思います。この二つの宿題を提出することによって、招へいされた学生たちは、来日前からコースの内容を理解したと思います。

上海の有名高校生を招へいした

田中 正 私たちは、中国の名門校でハイレベルな上海中学の高校生を招へいし、日本の最先端の技術の現場を体験的に理解してもらうことにしました。筑波大学にはスーパーサイエンス・ハイスクール、スーパーグローバル・ハイスクールそれぞれに指定された附属高校がございます。ここで日中の若者たちの交流を深めることが主な目的でした。
プログラムでは、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などを見学しました。それから筑波大学のSPEC という体育総合実験棟を見学し、また、山海教授が開発した介護用ロボットスーツ「HAL」の原理も体験しました。日本科学未来館と国立科学博物館の見学も組み入れました。大塚と駒場にある附属高校では、生徒同士がグループディスカッションをし、附属駒場高校では実際に授業に参加して日中の教育の比較や、アジアの科学技術への進展ということに対してどう考えるかということでもディスカッションをしてもらいました。
ちょうど附属高校を訪問する前の夜に、2014 年のノーベル物理学賞を日本の青色LED の発明者が受賞したことは科学の未来を討論するのにいいタイミングでした。筑波大学の地球科学の久田教授からは、筑波山の成り立ち、富士山と筑波山の形成プロセスの違いなどを筑波山の現場で講義していただき、これが非常に良かったようです。

招へいされた学生のフォローアップが大事だ

生徒たちには、帰国直後に参加した感想を英語でレポートしてもらいました。それを読むと、日本の最先端の科学技術に触れられたということはもちろんですけれども、日本の環境、自然、社会、研究環境、そういうものの良さ、それから日本の美しさ、日本人の優しさとか親切さとか、そういうものを直接理解したというのが非常に大きな成果だったと思います。それから、同年代の日中の生徒同士が英語でディスカッションしたということに、招へいされた生徒たちが大きな意義を感じておりました。
一方で招へいされた生徒らのフォローアップ、これを行う必要があるのではないかと思いました。私たちもフォローアップするつもりですが、全体的なフォローアップをJST でやってもらい、参考にしたいと思いました。参加した学生や教員がそういう情報にアクセスできるようなプラットフォームを、JST で構築してもらえるとありがたいと感じております。
それから招へいされる生徒が優秀であることは重要な要件だと思います。どんな生徒でもいいというのではなくて、やはり優秀な生徒や学生を呼ぶことで、大きな成果が得られるというのが実感したことです。

優秀な学生を送り込んできた中国の大学

橋本研也 私は中国の四川省にある、電子工学分野、特に高周波の分野で著名な電子科技大学との交流プログラムを行いました。このプログラムを始めるにあたり、マスタークラスから上じゃないと難しいのではないかと思ったのですが、先方の大学はできれば学部の学生を送りたい、人選は任せてくれ、良い学生を送るぞと言ってきました。
私が言ったことは優秀であること、英語で全部やるから英語がちゃんとできること、プログラムがMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)とか高周波とかに限るのでそれに興味があること、さらに将来的には日本や外国に留学を希望する学生と、この4 つの条件を出しました。結果的に素晴らしい学生が来ました。学生は優秀でものすごく活気があって、さまざまな講義では多くの質問が出て、ディスカッションをしました。日本の学生にはあまりいないタイプなので、私は非常にびっくりしました。
プログラムには、MEMS 研究で有名な東北大学の先生方にもお願いして、招へいした学生に世界最先端の研究室の見学をさせていただきました。東北大の先生方も非常に喜ばれ、招へいした学生が優秀なので楽しかったと言っていただきました。
先方の大学も非常に積極的であり、大学間協定でダブルドクター・ディグリーの話も具体的に進み、大きな成果が上がっています。中国の学生が日本に来たいという希望を持っても、具体的にどういうアクションをしたらよいか分からなかったようですが、さくらサイエンスプログラムは、優秀な学生にこういうチャンスがあるというきっかけを与えたことになり、大きなインパクトがあったと考えています。

長期間のプログラムを模索

千葉大学のドクターやマスターの学生の中に中国人がいますので、その学生と話をさせるという機会を作りました。これは、かなり効果があったと思います。日本に来るにはどうしたらいいのかとか、日本の生活はどうなんだという話を我々から聞くより、やはり中国人の先輩から聞くのが大きな意味があると私は思っています。
先方の大学から、できれば30 名とってくれないかという希望がきています。具体的にどうしたらいいのか頭を悩ませていますが、例えば1 週間の集中講義みたいな形でやるなら、引き受けてもいいかなと思ったりしています。私自身、中国のいくつかの大学で集中講義をやっていますので、講義資料もありますし、長期間のプログラムをアドバンストコースというような形で進めるのがもう一つの方法かな、と考えたりしています。

世界的に広がっている留学生確保政策

いま、世界中の国が留学生を増やす政策を取っています。日本も中曽根内閣のときに留学生を10 万人に増やす政策を打ち出しました。あのときは、周りの国はこれと同様の考え方を持っていませんでした。留学生の増加が国の経済活性化につながることを一番先に気が付いた国は、オーストラリアです。留学生からの収入が非常に大きく、オーストラリアの経済を支える三本柱の一つにまで成長しました。私は20 年前に北大から台湾の中興大学に移り、その12 年後に国際部長に就任しました。在職中に、当大学の学位留学生を27 名から4 年間で253 名にまで増やした経験があります。
シンガポールの大学は香港や台湾に行って、優秀な高校生に対して、ウチの大学においでよ、4 年間の奨学金をあげますから、と勧誘しています。ここまで海外の大学が必死になって、優秀な人材を獲得しています。

田中 それは私も感じましたね。留学政策の中で、私のところではグローバル30(文部科学省の国際化拠点整備事業)に2010 年から採用され、留学生確保のきっかけになりました。今回、招へいされた上海の生徒は、英語のレポートを見るとすごい表現力です。高校2 年生でこれだけの表現をパッと書けるのはすごいレベルです。日本の高校生にも刺激になったと思います。

沖村 今年度は高校生特別プランというのをすでにやっていますが、トップの高校のトップの生徒が来ました。これを来年度は2倍に増やそうと思っています。それとは別に、大学が個別にいい高校生に来てもらい、将来は日本に来てもらう制度的なものを採り入れられないかと思っています。

橋本 さくらサイエンスプログラムの交流で、日本の学生に刺激があったことは事実です。招へいされた彼らの方が非常に活発ですし、授業の発表に対して非常にポジティブでした。私の研究室の学生は、上海交通大学との学生交流でよく知っていますので、中国の学生が非常にアクティブな学生が多いというのは感じております。

「おもてなし」ができているか

沖村 このプログラムの一番重要なところは、日本側で受け入れる先生や機関がちゃんと「おもてなし」をすることです。プログラムの中身を充実させてハートフルにやることです。千葉大もぜひ、他の先生にもPR してほしいと思います。

橋本 はい。ただし、大学の教員が自主的、主体的に動かないとだめなんですよね。

沖村 そうだと思っています。大学の先生が動いてくれないとだめです。

田中 あと、大事なのはロジスティックスです。宿泊をどこにするとか、食事をどうするかとかです。その辺をきちっとサポートできる体制ができているかできていないかということが、すごく大きいと思うんですね。

私が台湾・中興大学の国際部長だったときには、38カ国から来た約500 名の学生を世話していました。国際部には2 人の教官・課長、5人の事務職員と数人のアルバイト学生もいました。その国際部を設立したおかげで、いろいろ経験を積みました。
今回のさくらサイエンスプログラムでは、学生たちに観光ではないことを自覚してもらいました。例えばダウンタイムをしっかりとってもらいました。ダウンタイムとは、日本に来る前に牛などの偶蹄類の動物には1週間から10 日の間、接触しないことです。これは口蹄疫を持ち込む危険を避けるためです。
12 月の来日なので、インドネシアなど熱帯の国から来る学生の服装を心配したので、バーゲンセールでセーターを箱ごと買って備えました。それが非常に役立って、学生たちは喜んでくれました。

沖村 素晴らしいですね。黄先生のそのノウハウは、これまでの積み重ねで得られたものですね。

さくらサイエンスプログラムを成功させるには、大学全体で取り組まないとなかなかうまくいきません。一つの研究室だけで実行することは大変です。私は他の4つの研究室の先生方にお願いして、実習をしてもらいました。

効果的なプログラムを実施する条件

さくらサイエンスプログラムの応募の条件について、コメントさせてください。上限の人数とか期間とかは、受入れ機関のプログラムを考えて、もう少し柔軟な条件にしてもらいたいと思いました。
私の体験で言うと、招へいする学生も1カ国からだけではなく、複数の国から招へいした方が効果があります。そのためには、招へい対象者数も多くなります。日本の学生も含め、東南アジアの多くの国・地域の学生が一緒になって話をすると、多様性が出てきて学生の見方や考え方が違ってくるという効果があります。

沖村 大事なコメントをいただきました。こちらとしては多くの大学に広めたいという気持ちがありまして、招へいプログラム数を多くして短期間で帰ってもらうということが頭にありました。複数の大学から多くの学生を招へいし、実のある研修をしてもらうという観点は、思い浮かびませんでした。反省点です。

田中 筑波大学は世界各国に13 の海外拠点を持っているのですが、できればこのプログラムをアメリカの高校生にまで拡大してほしいとの意見が出ています。アジアが中心になるのは分かりますが、できれば世界的なスケールでこのプログラムを拡大していくということも考えていただきたいと思います。

橋本 招へいする学生を10 人の枠でやると1 つの大学になってしまいます。もっと大きな枠が取れるならば、いくつかの大学を合わせてやれるので検討してもらいたいと思います。コーディネーターの費用も認めてもらうよう希望します。

沖村 非常に貴重なご意見ですね。ぜひ、検討したいと思います。

日本の大学生は、4 大学の4 人の学生に1 人1 日3,000円あげますと言って招へいしました。もし、この4 人にアルバイト料を補助金から支出できなかったら、自分で払うしかないと思いました。これくらいの金銭的犠牲を払っても彼らの満足感あふれる笑顔を見たときには、心も慰められました。

沖村 素晴らしいことですね。募集要項の内容など、現場の先生方や機関の要望を聞いてこれからも改定し、現場の状況をもっと把握するように工夫したいと思います。

さくらサイエンスプログラムは3 年後、4 年後にもサスティナブルに続いていてほしい。サイエンスとソーシャルサイエンスで構成されるコースが10 校でもいいですが、育っていけばいいと思います。もちろん、たくさんのアジアの学生を招へいした見学や研修もいいのですが、最後には10 校の大学くらいがしっかりしたプログラムを遂行して、残っていくのではないかと期待しています。

 

高校生の交流を発展させたい

沖村 さくらサイエンスプログラムは、留学政策が動機になっているのではありません。とにかく交流する機会を作りたいと始めたものです。目的はアジアの人材を育てることで、アジアの人材育成に貢献したい。短期間で日本を好きになってもらうというのが原点なんですね。
対象も大学ばかりでなく、高校から中学校までやりたいくらいなんです。これから勉強するのにお役に立つとしたら、若手の現場にいる行政官の人に日本の現場を見てもらいたいと思い、今年度は中国だけで40 人来てもらいました。これをちょっとリファインして広げたい、いろいろな意見を吸収していきたいと思っています。

橋本 例えば、SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)などと連携した事業に発展させるという考えがあってもいいと思います。

沖村 高校生コースの方は、来年度はその方向で進めます。例えばノーベル賞受賞者の講演をSSH の高校生とアジアの高校生とが一緒に受けて、さらに交流するというプログラムをいくつか組んでいます。なるべく日本の高校生と一緒にやりたいと思っています。

田中 ただ、諸外国の夏休み時期とか学期の設定は日本とは違いますから、難しい点もあると思いますが、ぜひ、調整して実現してほしいと思います。

橋本 千葉大も高校との交流をずいぶんやっており、SSHもずいぶん見てきました。生徒は非常に活発ですが、大学入試に差しかかると中断してしまう。高校1、2 年生のころは活発で、もの怖じせずにできれば英語でも話したいと思っています。非常に面白い生徒はいっぱいいるのですが、3 年生になったとたん、何でこんなつまらない生徒になってしまうんだというのが、私の偽らざる心境です。

田中 確かにそうです。やはり1、2 年生が対象になるということでしょうね。3 年生は大学受験があるからだめです。中国も同じです。一番効果的なのは2 年生かもしれません。継続を考えるなら1 年生から2 回くらいでしょうか。

さくらサイエンスプログラム実施運営への要望

沖村 さくらサイエンスプログラムの実施運営について何かご意見があったら伺いたいと思います。

橋本 去年はちょっと忙しかったのですが、平成27 年度は2 月の募集開始でしたから非常に助かりました。単純な質問ですけれども、例えば同じ教員が2 回出したら採択率が下がるということはあるのでしょうか?

沖村 そういうことは一切ありません。役所だと思わないでください(笑)。応募の審査は、構造工学が専門で東南アジアの事情にも精通している東京都市大学の三木千寿学長を委員長にさくらサイエンスプログラム委員会を作り、いろいろ議論してもらい採択しています。

募集要項の招へいする学生の人数や期間など、もう少し自由に選択できるように柔軟な条件にしてもらえるとありがたいです。日本の大学からも、招へいできるようになるといいと思います。また、コーディネーターの経費や学生のサポーターに対するアルバイト料なども見てもらえないかと思います。

橋本 招へいするときに送出し機関が、自分たちの負担でもいいから日本へ行きたいというケースがあります。さくらサイエンスプログラムでサポートしていただける人数を決めていただいたら、自主的に来る人のビザに関しても、一緒に処理してもらえるとありがたいです。

田中 私のところもそうでした。教員が3 人来たのですが、さくらサイエンスプログラムでカバーできるのは1 人だけ。あとの2 人は送出し機関の負担ということで招へいしました。学生についても、その方式ができるといいですね。

今後の抱負と期待と

沖村 最後に先生方に今後の抱負、期待などを述べていただきたいと思います。

 

橋本 私の経験で言うと、欧米の方々に助けてもらって自分のキャリアアップができたと強く思っています。それで次は返す番だというのが私の思いです。長いこと台湾の学生をサポートしてきました。最近は中国もやるようになっています。中国人の8 割が日本嫌いという調査結果だそうですが、私は非常に疑問に思っています。
実際、中国から日本に来たほとんどの学生が、日本を非常に好きになる。本当にわかってもらえば、日本を好きになってくれるのではないかなと私は思っています。そういう機会を作る場として、さくらサイエンスプログラムは有効ですから積極的にサポートしていきたいと考えております。

田中 このプログラムが終わった直後、新たな連携先の開拓を始め、上海中学の姉妹校である上海中学東校で出前授業を始めました。そういう関係をいくつか作った上で、さくらサイエンスプログラムを利用した国際交流を進めていきたいと思っております。

さくらサイエンスプログラムに関して3 つのキーワードを挙げたいと思います。1つはサスティナビリティ(Sustainability) です。次のキーワードはインパクト(Impact)です。アジアと日本の青少年にインパクトあるものを提供すれば、彼らの人生進路を変えるぐらいのプログラムに発展します。最後は「和」という言葉です。やっぱり日本の「和(Harmony)」は大事です。日本がさくらサイエンスプログラムを通してアジアの和、平和に貢献することを期待します。

沖村 本日は本当に素晴らしいお話を聞かせていただきました。これから推進室は先生方のご意見をくみ上げながら、よりよいさくらサイエンスプログラム運営に取り組みます。ありがとうございました。