日印連携による人材育成
~材料科学・半導体分野の大学院教育強化を目指して~

取材日 2025年12月15日(Dコース)

筑波大学は、2025年度【D.相補的年間交流コース】に採択され、インド工科大学ボンベイ校(IITB)との相互交流「日印連携による材料科学・半導体分野の大学院教育強化と人材育成プログラムの構築」を実施しています。実施主担当者の櫻井岳暁教授は、2024年度にB.共同研究活動コースのプログラムによってIITの大学院生を招へいしており、今回のプログラムは、その発展系として計画されました。

*D.相補的年間交流コース:インド・アフリカ諸国を対象とし、学生や若手研究者の相互交流(派遣・招へい・オンライン)を最長1年間の長期交流プログラムとして支援するもの。

活動レポート写真1

7月下旬から本格的に開始された本プログラムは、オンラインによるキックオフミーティングを経て9月に筑波大学理工学群の4年生3名がIITBを訪問。約3週間それぞれが各研究室に配属され、インド側教授陣による指導のもと研究を行ったり、インド人学生と一緒に講義を受講したりしました。初めてのインドでの生活で、不安を抱える日本の学生たちをチューターとして支えたのは、IITB博士課程に在籍する大学院生4名です。
 そして10月中旬、今度はこの4名のIITB大学院生たちが来日。筑波大学をはじめ、同学の国際マテリアルズイノベーション学位プログラム(https://t-imi.org)で連携する物質・材料研究機構(NIMS)や産業技術総合研究所(AIST)などの研究室にて日本での研究生活をスタートしました。彼らの日本での生活をサポートしているのは、9月にインドで交流を深めた筑波大学の学生たちです。

取材日当日(12月15日)、筑波大学ではIITB大学院生の帰国を翌日にひかえ、本プログラムの修了式が開催されていました。インドと日本の時差は約3時間半。修了式には、インド側ともオンラインによって繋がり、学生たちの指導にあたった日印双方の教授陣をはじめとした関係者が、参加学生たちの成果発表を見守りました。IITBの大学院生からは、12月に一週間程度の日程で実施された日本国内の企業でのインターンシップ体験についても報告されました。

活動レポート写真2
活動レポート写真3
活動レポート写真4

■筑波大学の学生による成果発表

  • 私は水素に関する研究をしています。水素社会を実現するためには、生産、貯蔵、利用の3つの要素技術開発が必要なのですが、今回は水素貯蔵材料に焦点を当てて実験をしました。休日に研究室のメンバーとインドの寺院などを訪問したことも印象に残っています。 
  • 化学系の研究室にて、ドロップキャスト法による結晶成長実験を実践しました。ビジネス関連の授業、起業家クラスを受けることもできました。インドでの生活はすべてが新鮮でした。
  • 半導体のPLD(パルスレーザー堆積法)の実験について経験を積みました。そして、起業論の講義を受けました。IITBは素晴らしい起業家エコシステムで知られています。IITBの学生と一緒に日本とインドの投資と雇用の違いや取り組みなど、さまざまなテーマについて議論したことが、特に印象に残っています。
活動レポート写真5
成果発表をする筑波大学理工学群の4年生
全員から、「さくらサイエンスプログラムによって、大学生の段階で、環境がまったく違う海外で研究生活を実現できたことはかけがえのない、素晴らしい体験だった」という感想を聞くことができました。来年4月からは、そろって大学院に進学し、さらに研究を継続していくそうです。

■IITB大学院生による成果発表

  • 私の研究テーマは機能性高分子材料とマテリアルズ・インフォマティクスです。物質・材料研究機構(NIMS)にてエレクトロスピニング法に関する実験を実施しました。株式会社 日立ハイテクにおけるインターンシップでは、製造や管理の現場を見学し、その清潔さ、正確さなど素晴らしい技術を目の当たりにし、とても感動しました。
  • IITBと筑波大学の指導教官のもとで次世代メモリへの応用を目指した酸化モリブデン薄膜について実験に取り組みました。東京エレクトロン株式会社でのインターンシップ体験も楽しみました。山梨県にあるバックエンドの半導体製造ラインでは、すべてが自動化されていてセキュリティもしっかりしていることに圧倒されました。
  • 産業技術総合研究所(AIST)の指導教官のもと超伝導材料の結晶成長と評価法の実践研修に参加しました。京都の株式会社SCREENホールディングスでのインターンシップでは、エリプソメトリーの最適化に取り組みました。初めて産業界でのクリーンルームを経験することもでき、良い経験になりました。
  • 筑波大学にて水素貯蔵用のマグネシウム水素化物(MgH2)とニッケルのナノコンポジットに関する研究に取り組みました。インターンシップでは田中貴金属工業株式会社のR&D水素チームに所属し、パラジウムベースの水素透過性膜に取り組みました。学術研究の中で研究室と同様に様々な問題を探求する非常に良い経験になったと思います。
活動レポート写真6
成果発表をするインド工科大学ボンベイ校博士課程の大学院生たち

修了式は終始和やかな雰囲気で進行し、日印の関係者からは、「すべての学生が素晴らしい進歩を遂げ、非常に優れた研究を行っているのを見ることができ嬉しく思う。」「単に国際的な研究環境を体験することだけでなく、参加者が多様な研究のアプローチを理解し、研究者としての視野を広げる機会となった。」「IITBの大学院生の研究に対する姿勢は日本の学生たちに刺激を与えた」「筑波大学の学生が再びIITBに研究に来ることを楽しみにしている」など、暖かいフィードバックが贈られました。

IITBの大学院生たちに、改めて将来のキャリアプランを聞いてみると、「引き続き、日本の研究機関でポスドクとして研究を続けたい」「日本の企業で研究をする道も、選択肢として真剣に考えている」など、とても嬉しい答えを聞くことができました。
 本プログラムが契機となり、日印の研究機関による新たな共同研究の計画も具体化しているとのこと。
 今後のさらなる発展を心から期待します。

活動レポート写真7
全員で記念撮影(後列右から2番目が実施主担当者の櫻井岳暁教授)