2025年12月1日~5日、三重大学工学研究科では、モロッコのムーレイイスマイル大学の大学院生2名、セネガルのガストンベルジェ大学の大学院生とポスドク各1名、インドネシアのガジャマダ大学とバンドン工科大学から大学院生各2名の、計8名を招き、アフリカ地域の重要課題であるエネルギー変換材料開発に向けた材料設計者育成を目指した、A.科学技術体験コースのプログラムを実施しました。
取材日当日、参加学生たちは、実施主担当者の中村浩次教授が開発したソフトを使用して、半導体材料であるシリコンダイヤモンド(合成ダイヤモンド)の性質を予測するシミュレーションに取り組んでいました。彼らは、前日に各自が自国から持ち込んだマイパソコンにこのソフトを導入する作業を行ったのですが、その作業には、それぞれのOSやスペックなどの環境が異なることから思わぬ障害や苦労があったそうです。中村教授は「そういったアクシデントを経験することは必ずしも悪いことではない。各自がそれぞれの国・地域の環境で試行錯誤し、日本の学生と協力しながら主体的に学び、今回の主テーマである材料設計だけでなく、プログラムコーディングなどに対する理解も深めてもらうことが、本プログラムの狙いです。」と語ります。
■プログラム参加者の声
- 日本の文化や習慣に感銘・刺激を受けています。日本の人々が食事前に必ず手を洗うのには驚きました。日本は街、道路もとても清潔で綺麗です。将来は専門の材料科学で博士号を取得し、研究の道に進みたいです。(モロッコ ムーレイイスマイル大学 大学院生)
- 日本はとてもきれいで整った国です。私の国も日本の様な発展をしていくことを望んでいます。気象学が専門なのですが、今回の研修での学びは今後の研究にとても有益だと感じています。将来は国際的な共同研究やコラボレーションに貢献できる人材になりたいです。(セネガル ガストンベルジェ大学 大学院生)
- 毎日新しいチャレンジで大いに学びを得ています。現在の修士課程修了後は留学して博士号取得を考えたいです。(インドネシア ガジャマダ大学学生)
- 来年度から大学院に進学します。海外の学生と交流し、協働作業を行うのは初めての経験で、英語に不安がありましたが、共通の目的のもと、互いが理解しようとしているので、うまくコミュニケーションがとれていると思います。(三重大学4年生)
■さくらサイエンスプログラムで広がる国際的な研究者のネットワーク
本プログラムには、11年前(2014年度)に大阪大学で実施されたさくらサイエンスプログラムに参加したことをきっかけとして、中村教授のもと日本で博士号を取得した、アリフィン・ムハンマド助教も、日本側(三重大学側)指導者としての立場で参加しています。現在ガジャマダ大学で教員を務めるアリフィン助教は、同大学と三重大学との交流事業により、2025年4月から1年間の期限で三重大学に助教として赴任し、家族とともに再来日中とのことです。
アリフィン・ムハンマド助教(さくらサイエンスプログラム卒業生)の声
- さくらサイエンスプログラムは私の人生に大きなきっかけと影響を与えてくれました。インドネシアでは、毎年さくらサイエンスプログラムOBによる同窓会が開催されており、いくつかの交流グループも活発に活動しています。これからも、後輩たちに日本の良さを伝え、国際的な交流や共同研究に積極的に貢献していきたいです。
実施主担当者 中村浩次教授の声
- さくらサイエンスプログラムをきっかけとして、アジアやアフリカの研究者、将来ある若い人材とのネットワークが広がっています。プログラム経験者の日本への留学実績も確実に積み上げられてきており、研究の道に進んだ人材から国際的な会議や共同研究へお声がけをいただく機会も増えてきました。先日もモロッコでの国際会議で講義をさせていただき、その紹介でセネガルからの参加者を、今回新たに迎えることができました。
最終日には、太陽光や熱エネルギーを電気に変換するための材料開発のシミュレーションに取り組み、結果をチーム毎に発表し合う予定とのこと。共通の目的のもと、若い力が国境や文化を越えて、協力しあう姿は眩しく感じられました。本プログラムに参加したモロッコ、セネガル、インドネシア、そして日本の学生たちから、また新たな国際的ネットワークが広がっていくことを、心から期待します。
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当日は、短い時間でしたが、地元津市内の企業、光機械製作所を訪問する機会も設けられていました。同社はレーザーなどに優れた技術を持つ工作機械メーカーです。参加者たちは、西岡慶子社長から事業概要や社史、理念などの説明を受けた後、工場にて同社の強みである、開発中のレーザー加工機の大型機械などを見学しました。日本企業の高い技術力に圧倒され、レーザーについて興味津々に質問をする姿が印象的でした。