カーボンナノチューブのバイオテクノロジー応用を目指して

取材日 2025年11月28日(Bコース)

名城大学理工学部丸山研究室では2025年11月17日~12月7日の3週間、インド工科大学(IIT)ダンバード校から引率教員のジリ・ラジェンドラ・プラサド助教と、大学院生2名、計3名を招へいし、カーボンナノチューブの合成と応用に関するB.共同研究活動コースのプログラムを実施しています。

*カーボンナノチューブ:炭素でできた、髪の毛の1万分の1ほどの極細で強く、電気・熱を通すチューブ状の構造。軽量・高強度で、電子機器や医療、エネルギー分野など幅広い応用が期待される夢の材料。

実施主担当者丸山隆浩教授の研究分野はナノ材料。カーボンナノチューブの各種合成法の開発などに取り組んでいます。一方、ジリ助教の研究分野は生物物理学。生物の体を構成する分子が異なる環境下でどのように振る舞うかという点に注目し、カーボンナノチューブのバイオテクノロジー分野などへの応用について研究を進めています。本プログラムは、2024年にインドで出会い、お互いの研究分野を繋ぐことによって生まれる可能性にフォーカスしたお二人の研究者が、本格的な共同研究への第一歩として企画したものです

丸山教授によると、大学院生が英語による実験装置の取扱マニュアルを自主的に作成するなど、丸山研究室に所属する学生たち全員(大学院生4名、大学生7名)が積極的に本プログラムに関わり、インド学生の来日を心待ちにして準備を進めていたとのことです。

取材当日、研究室を訪ねると、日印の学生たちが協力して、化学気相成長(CVD)法による、単層カーボンナノチューブの合成に取り組んでいました。この合成実験は今回で5回目の実践になるとのこと。

*化学気相成長(CVD)法:気体の原料を基板表面で化学反応させて薄膜や結晶を形成する方法

ジリ助教からは、「学生たちは、問題に直面したときには、それを克服するにはどうしたらよいか検討して実験を繰り返しています。日々議論を重ねながら成果を得る過程を本当に楽しんでいる様子です。」というお話を伺いました。

取材写真1
取材写真2

■参加学生たちの声声

  • 私は細胞表面に関する研究をしていて、カーボンナノチューブを疾患診断や治療など、生物医学および生物工学の応用に使用したいと考えています。そのためには、その合成方法を学ぶことが必要だと思い、長期的な共同研究を視野に入れて、このプログラムに参加しました。丸山研究室では、実験装置のマニュアルがきちんと整備されていることが素晴らしいと思いました。非常に精密な装置なので、間違いがあると問題が生じるからです。インドでも、修士課程や学士課程の学生にも協力してもらって、装置のマニュアルを作成したいと思います。(IITダンバード校 博士課程2年)
  • ナノ材料がモデル生体膜、細胞表面、およびナノチューブとどのように相互作用するかを研究しています。日本では、大規模で高価な装置を、学士課程の学生も扱って実験をしていることに驚きました。今後の共同研究にとても興味を持っています。(IIT ダンバード校 博士課程2年)
  • インドの大学院生の皆さんが、わからないことは最後までつきつめて質問し、考え、真剣に実験に向かい合う姿勢に刺激を受けました。本当に研究が好きなことが伝わってきました。これから、もっと専門的な勉強をして、彼らと情報を共有できるようになりたいです。(名城大学 4年生)
  • 私には、国境をこえて専門分野をとおして交流したい活躍したいという夢があります。そのために、海外との研究交流の機会が得られる丸山研究室を選びました。今回の経験を活かして、頑張りたいです。(名城大学 4年生)
取材写真3
取材当日に研究室でお会いできた皆さん全員で記念撮影
左から2番目が実施主担当者の丸山隆浩教授、右から2番目が引率教員のジリ・ラジェンドラ・プラサド助教

名城大学理工学部とIITダンバード校とは、本年5月に学部間協定を締結し、教員・学生の交流を積極的に行うことが確認されているとのこと。本プログラムが契機となり、さらなる本格的な共同研究へと発展することを期待します。

取材写真4
取材後に、丸山教授から11月27日に名城大学内で実施された国際シンポジウムの写真を共有いただきました。
日印双方の教員・学生による研究発表、ポスター発表が行われ、活発な意見交換の場となったそうです。