10月6日~15日の10日間、インドネシア、タイ、ケニア、エチオピア、タンザニア、ガーナの6か国の大学院生9名、教員2名の計11名が宇都宮大学森林学科を訪問。「林業及び林産業におけるスマート化に関する研修プログラム」として、様々な講義・実験・実習、演習林や製材工場等の現場の見学など総合的な研修を体験しました。
プログラム実施主担当の横田信三教授によると、今回のさくらサイエンスプログラムは新型コロナ禍の影響で途切れて以来久しぶりの再開で、文化的背景の違いから苦労する場面もあるなか、思い出しながら取り組んでいるとのこと。
取材に訪れた10月13日午前は、木材材料学研究室(石栗准教授)にて木材の組織構造に関する講義が行われ、木材解剖学(Wood Anatomy)の発祥や発展史、森林資源活用における重要性などについて学んでいました。
講義を担当された石栗准教授は、各国の気候や風土から来る樹種やその木材特性、年輪の出来かた、組織構造の違い等について説明し、学生たちはうなずきながら、和気藹々と受講していました。座講の後は研究室内の設備を用いて、木材からのサンプルの採取方法や、木材組織構造の観察を実践。皆、説明に真剣に耳を傾けたり、顕微鏡をのぞき込んだり、質問したりする風景が見られました。
同じ樹種でも育った環境や遺伝子的要素により、材としての品質が大きく変わってくること、だからこそ林業・林産業現場での目的に応じた品質管理や研究の推進、現場との連携が重要だとの話は非常に印象的でした。
[右上・左下] 電子顕微鏡で観察された木材組織構造の画像をパソコン上で確認するインドネシアの学生たち
[右下] タブレット上で顕微鏡の画像を確認
10日間の総合的な研修も終わりが近づくなか、学生たちに印象に残った体験や今後について伺ってみると、複数の学生から「何か一つだけ挙げるのは難しい。研究・森林・製材の現場を総合的に体験・学習できたことがトータルで素晴らしかった」という答えが返ってきました。また、「栃木県林業センター見学(木材の強度試験など)」や「製材工場見学(渡辺製材所)」をあげ、「日本の先進的で充実した実験・研究機器や、大型の製材機械、自国環境との違いに感銘を受けた」といった学生もいました。「様々な国の学生と一緒に研修を受けたことで、交流が進んだことが良かった」との声もありました。
■各国参加者たちの今後の抱負
- 研究者としてバイオマスエネルギーや国立公園の制度や環境の違いについて研究したい。(インドネシア 大学院生)
- 自国の森林の木材解剖学による分析・研究を進めて、製材現場の技術革新・発展に貢献したい。(タイ 大学院生)
- 自国のマホガニー材の研究、木材活用の発展性を経済的な背景も踏まえながら、日本との共同研究を進めていきたい。(ケニア 教員)
- 自国の樹種、木材としての可能性などの調査を日本と連携しながら共同研究で進めたい。(エチオピア 大学院生)
- 自国で木材の構造・品質のデータ蓄積・可視化を推進したい。(タンザニア 大学院生)
- 総合的に学んだことを活かして、自国でのマホガニー材の品質向上、資金獲得、製材機器類の最新化などに貢献したい。(ガーナ 大学院生)
受け入れ側となった森林資源利用学研究室および木材材料学研究室は海外での研修や調査・共同研究などの実績も豊かで、インドネシアやモンゴルからの留学生も在籍しており、学生たちは熱帯地域の果樹林の木材としての二次活用、モンゴルにおける木材品質の向上などそれぞれ明確なテーマ、課題意識をもって研究を進めていました。
これからの林業・林産業においては、環境保護の面などからも国際的な研究・連携の重要性がますます高まっていくことが予想されます。今回の研修の参加者たちがキーパーソンとなって世界の舞台で活躍することを確信しました。
後列左から7番目が実施主担当の横田信三教授