中国とフィリピンの院生らが鳥取で循環型社会の構築について学ぶ

取材日:2023年11月17日(Aコース)

 鳥取大学は11月12日~18日、中国農業科学院とベンゲット州立大学(フィリピン)から大学院生・研究者ら10名を招へいし、「農村地域から学ぶ持続可能な循環型社会構築に向けた科学技術のあり方」をテーマにA.科学技術体験コースのプログラムを実施しました。

 中国農業科学院は中国における農業研究の中心機関で、修士・博士課程の教育も行っています。またベンゲット州立大学はフィリピンの避暑地といわれる高地のベンゲット州にあり、同州はフィリピン国内の約6~7割の温帯野菜・果樹を生産・出荷している農業地帯として知られています。

 一行はまず、鳥取地域が進めている「循環型社会構築」についての講義を受け、その実現に向けての具体的な取り組みや技術開発の現場を視察しました。ユネスコ世界ジオパークに認定されている山陰海岸ジオパークでは、美しい地形・地質と多様な生態系、また地域資源としての鳥取砂丘について学習。ニワトリの平飼い飼育を実践している大江ノ郷自然牧場では栄養満点の卵でバームクーヘン作りに挑戦するとともに、自然循環型農業の6次産業化()成功例も視察しました。(株)再資源化研究所ではゴミとなった廃ガラスを、鳥取大と同研究所が共同開発した土壌改良資材「ポーラスα」として再資源化するプロセスの説明を受けました。さらに廃校を利用した植物工場、スマート農業のいちご農園、微生物発電実証実験場などを視察。また農学部の児玉基一朗教授の研究室では、地元の酵母を使って地域と共同開発した新商品の紹介や講義を受講。地域住民を巻き込んだ持続可能な循環型社会構築のためのさまざまな事例を体験し、中身の濃い研修ツアーとなりました。

 最終日、院生らは3グループに分かれ、鳥取大生らも加わってグループワークと成果発表を行いました。今回訪問した現場や講義などをベースに、自分たちの知見を加え、また自国で生かせそうな取り組みをグループごとに話し合い、その成果を発表しました。

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 最後に国際交流センター・センター長の安延久美教授(Prof. Kumi Yasunobu, Director, The Center for International Affairs)から一人一人に修了証が渡され、さくらサイエンスプログラムは参加者全員がその成果を実感して終了しました。

●今回のプログラムを通して中国・フィリピンの院生のコメント

「すべての視察や講義は有益な情報が満載で中身の濃いプログラムだった。今回学んだことを自国でどのように生かせるかが、これからの課題」
「温度や水やりなどスマホで管理しているいちご農家が印象的だった。私のいるベンゲット州もいちご栽培が盛んなので、このようなスマート農業の事例はとても参考になった」
「今、中国ではゴミが大きな社会問題となっている。大まかな分別はされているが、日本のように細かくはない。分別方法はさらに考える必要があると思った」

●日本人学生からのコメント

「ゴミや汚染の問題、若者の地元離れなど、どの国でも共通の問題だということが改めて分かった。異なった視点からの意見がとても新鮮だった」
「はたして英語でディスカッションができるかとても心配していたが、スマホの翻訳機能などを駆使してコミュニケーションがとれた。違う国の学生たちとの意見交換はとても刺激になる」

(*)6次産業化:1次産業者が、農産物などの生産物の元々持っている価値をさらに高め、それにより1次産業者の収入を向上していくこと。

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