ケニアの学生らが長崎の離島で先端科学技術を学ぶ

取材日:2023年9月15日(Aコース)

長崎大学は、9月9日~9月16日の8日間、ケニアのケニヤッタ大学、マセノ大学、ジョモケニヤッタ農工大学、ケニア中央医学研究所から大学生1名、大学院生3名、教員5名、研究者2名の計11名を招き、さくらサイエンスプログラム(SSP)の短期研修を実施しました(*内教員2名は自費による招へい)。テーマは「長崎離島・へき地からのプラネタリーヘルス(地球の健康):アフリカでの問題解決を離島の先端科学技術から考える」。プログラムには、招へいした学生らのほか、現在、長崎大学で長期研修を行っているケニアの大学院生4名、日本人の長崎大生5名も参加しました。

ケニアの学生ら一行はまず、プラネタリーヘルスシンポジウム「PHASE and Sakura Science Joint Planetary Health Symposium」に出席。同シンポジウムは、長崎の離島とケニアのへき地という共通点を見据えて、プラネタリーヘルスの観点から新しいイノベーションによる問題解決がテーマです。日本側からは長崎大学と深い関係がある五島列島での「遠隔医療」などの取り組みについての発表があり、ケニア側からは今回来日した4大学・研究機関の教員・研究者から「ケニアにおけるデジタルヘルス」などの現状報告が行われました。

シンポジウムで長崎県の離島地域について事前に学んだ学生らは、実際に五島市や久賀島にわたり、「遠隔医療支援システム」をはじめ、「ドローンによる医薬品運搬」「洋上風力発電」「マグロの養殖」などを現地で学びました。大学に戻った後は、日本人学生ととともに成果発表に向けてのワークショップを実施。お互いに意見交換をしながら発表資料をつくりあげていきました。

なお、今回、SSPプログラムに参加した日本人学生は、学部も経済、多文化、情報データ、歯学と多様で、ケニアの学生たちとはオンライン交流や今春のケニアへの短期訪問を通して、すでに交友関係を築いています。

最終日に行われた成果発表ではケニアと日本人学生がチームを組み、自分たちが体験した離島での最新技術をケニアのへき地でどのように応用・活用していくかといった、実用化に向けた発表が目立ちました。ケニアの学生たち、日本の学生たちともに自分たちがこれから進む将来への強い意欲が感じられる成果発表でした。

取材写真1

■ケニアの学生・研究者の感想

「五島中央病院での関節リウマチ患者を診断する最新3D遠隔医療技術に感銘を受けた」「ケニアの通信ネットワークは整備されてきたが、へき地ではまだ県のレベル。早く村のレベルにまで広げることが大切」「ケニアでは患者や妊婦の情報収集はおこなわれているものの、まだ紙ベース。一刻も早くデータベース化する必要がある」「マグロの養殖現場が興味深かった。ケニアではビクトリア湖が波も静かで養殖には最適だと思うが、現在、水草の繁殖が大きな問題となっている。まずはそれを解決することから始めなくてはいけない」

■日本人学生の感想

「ケニアのへき地や日本の離島での遠隔医療の重要性を学んだ。現在、自分は情報技術を学んでいるが、今回の研修を通じて、今後どのようにして遠隔医療の信頼性を高められるかを勉強していきたい」「ネット情報ですべてを理解しているように思ってしまいがちだが、やはり自分で体験するのとは違う。ケニアでの短期研修でそれを学び、対面による人と人との交流の大切さを知った」

■長崎大学医歯薬学総合研究科 金子聰教授

「もともとは本学の熱帯医学研究所からスタートしたケニアとの関わりだが、今後は医療分野だけにとどまらず、もっと広く全学部的に広めていきたい。SSPでアフリカから学生を招へいしたのは今回初めてだが、やはり継続性が大事。引き続き交流活動を続けていきたい」

取材写真2
全員で記念撮影。後列左端が金子聰教授