東大地震研で災害軽減のための共同研究と現地調査

取材日:2023年9月7日(Bコース)

東京大学地震研究所では、8月19日~9月8日、環太平洋~インド洋東岸辺りに位置し、巨大地震・津波・火山噴火などの災害の危険にさらされている、インド、カメルーン、タイ、台湾、中国、英国*、チリ*、アメリカ*、マダガスカル*の9カ国・地域、12大学から、大学生、大学院生、研究者計12名を招へいし、災害軽減のための共同研究プログラムを実施しました。(*は自費による招へい)

地震研では2014年のさくらサイエンスプログラム(SSP)スタート時から、一般公募プログラムに応募・採択 され、JST Sakura Science Programとして毎年、3週間のインターンシッププログラムを実施してきました(コロナの間はon−line)。また、当初アジア中心だったSSPの招へい対象者が、全世界の国・地域に広がったのを受けて、地震研も現在は全世界に向けて公募の形をとっています。今回の参加者12名も多くの国の応募者から選ばれた優秀な学生、研究者たちです。

プログラムの期間中、学生・研究者らは各自の研究テーマにそって受け入れ担当教員のもと、研究内容をさらに深めたり、方向性の確認や不足部分の追加をするなど、個別の共同研究に多くの時間を費やしました。また同時に伊豆・大島でのフィールドワークを通して、地震・火山噴火の現場を体験。そして最終日には各自の研究成果をまとめたポスター発表を公開で行いました。「光ファイバーによる断層調査」(台湾・学部生)や「経験的グリーン関数法を使った、小地震の記録から大地震の揺れの評価」(マダガスカル・研究者)など、自国の災害軽減を考慮にいれた内容が目立ち、会場を訪れた地震研の教員、大学院生のみなさんからの質問に答えたり、活発な意見交換を行うなど、中身の濃い研究成果発表会となりました。

そして最後に同研究所所長の古村孝志教授から一人一人に修了証が授与され、3週間のプログラムは終了しました。

取材写真1
各自の研究成果をまとめたポスター発表の様子

■参加者の感想

「受け入れ担当の教員の方々が丁寧に指導・アドバイスをしてくれた。また機器も最新でしかもデータも多く、自国ではできない解析などもでき、短期間にも関わらず充実した共同研究だった」「様々な国からの参加者と、共通テーマでのディスカッションや交流を通して、ネットワークが広がった」「今回の知識を自国に戻って生かし、また、日本に戻ってきたい」

■現在、博士課程で学ぶSSP同窓生(台湾)の感想

「2017年に院生としてSSPに参加し、地震研で多くの知識を得た。そして日本で研究を続けたいという気持ちが強くなり、昨年から博士課程で勉強を続けている。私のほかにも同じような経緯で、SSP同窓生が東大大学院や博士課程で学んでいる」

■地震研究所 国際地震・火山研究推進室室長 木下正高教授の感想

「10年近くこのプログラムを続けてきて、大変なことも多かったが、実りは多い。3週間という短期間だが、学生たちはとても真剣に取り組んでいる。対面でディスカッションしながら研究を進めることは重要で、メールやオンラインではなかなかできない。参加者が自国に戻ってこの経験を生かし活躍してくれることを期待している。今後、海外とのネットワークがさらに広がり、地震研と共同で先進的なノウハウを活用しながら共同研究を進め、各国の災害軽減に役立てればと願っている。このような機会を与えてくれたJST Sakura Science Programにはとても感謝している」

取材写真2
参加者全員で記念撮影