フィンランド学生と鈴鹿高専生らがスタートアップ人材育成の合宿研修

取材日:2023年8月18日~19日(Aコース)

 鈴鹿工業高等専門学校では8月12日~19日、フィンランドのトゥルク応用科学大学(TUAS)から大学生10名を招き、スタートアップ人材育成のための「テクノプレナーシップ合宿研修」を実施しました。テクノプレナーシップとは、Technology(技術)とEntrepreneurship(起業家精神)を合わせた造語で、テクノロジーを使ってビジネスにイノベーションをもたらす新しいタイプの起業家精神のことです。今回のプログラムはこのような起業家精神をもった人材を育成するのが目的で、TUASの学生や鈴鹿高専生のほかに、近畿・東海・北陸地区の高専生や留学生も参加し、総勢36名が寮に泊まり込みながらの合宿研修となりました。

 なお、TUASは実践と応用を重視するフィンランドの応用科学大学のなかでも2番目の規模を誇り、社会実装を目的とした企業との研究開発が盛んに行われています。また、フィンランドは「ヨーロッパのシリコンバレー」とも呼ばれるほど、近年はイノベーション創出の地として世界の注目を集めています。

 研修プログラムは、ソフトバンク社の多田彰氏による基調講演や、北欧最大のスタートアップイベント「SLUSH」についてのオンライン講義、ビジネスプラン作成のためのワークショップ、地元のスタートアップ企業訪問、また、ものづくり演習ではミニ四駆組み立てなど、盛りだくさんの内容でした。

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 とくにビジネスプラン作成のワークショップでは、日本人、留学生、TUASの学生たちが混合8グループに分かれ、数日間にわたって議論を重ねてプランを作り上げていきます。新規ビジネスや新商品に向けてのアイデア出し、対象市場/ターゲット層、革新性、採算性、販売戦略、広告など、多方面からチェックをしながら、プランを練り上げ、最終日にはグループごとの成果発表が行われました。

 忘れ物を振動で知らせるブレスレット、手で持たなくてもよい傘、子供にプログラミングの興味を持たせるためのCording board など、まるで企業での新商品開発プレゼンを見ているようで、斬新なアイデアが次々に飛び出してきます。そして審査の結果、優勝したのは「Charging wear」のチーム。ピエゾ(圧電素子)を繊維に織り込んだスポーツウエアを開発し、運動しながら発電するという斬新なアイデアはまさにエコ発電の極致。しかも健康にも良く、社会実装性も高いというのが選ばれた理由でした。

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優勝した「Charging wear」のチーム

 そして最後に竹茂求校長からフィンランドからの招へい者一人一人に修了証が手渡され、プログラムは終了しました。

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■日本の高専生の感想

「TUASの学生は20代から40代と年代が幅広くて知識も豊富、しかも優秀でとても刺激を受けた。また、寮生活だったので、短い間なのにすごく親しくなれた」。

■フィンランドの学生の感想

「よく準備された研修内容で感心した。高専生たちはとても親切にいろいろ教えてくれた」

 帰国の時が迫ると、フィンランドの学生たちは皆に見送られ、名残惜しそうに鈴鹿高専を後にしました。なお、鈴鹿高専では今回の研修に引き続き、10月、11月にTUASとのオンライン講義やものづくり演習を行い、相互交流をさらに深めていく予定です。

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