富山大学和漢医薬学総合研究所はカメルーン・ジャング大学から若手研究者(教員2名、大学院生2名)を招へいし、6月1日から21日間にわたってがん増殖に深くかかわるアスパラギン酸水酸化酵素(AspH)阻害剤の共同研究を行いました。同研究所では以前からがんに特異的で副作用の少ない抗がん剤開発に向け、AspH酵素に注目。その阻害剤を天然資源から抽出する研究に取り組んでいます。これまで東南アジア(ベトナム、ミャンマー、インドネシア)の研究者たちとは共同研究を行ってきましたが、アフリカからの研究者とは今回が初めてです。また、アフリカのなかでも特にカメルーンは雨が多く、植生も多様で古くからの伝統医療では多くの薬用植物が用いられてきたことでも知られています。
今回の共同研究のために研究者たちはカメルーン産の天然由来資源約25種類の抽出物を持参。それらを研究所のカラムクロマトグラフィーやHPLC等の精製機器を用いて精製、分析し、AspH阻害活性を示す新しい化合物の特定に取り組みました。研究者たちは口々に「和漢研究所の機器は最新で、しかも一か所にまとまっているため、滞在中の20日間で、カメルーンで2年間分の仕事ができた」と今まで思うように進まなかった研究がここにきて一気に進展したことに満足した様子でした。
また、帰国前の報告会では、プログラムリーダーのアウアファック・モリス・ディクレット准教授からカメルーン産のシダ植物から新たな化合物の精製に成功したとの発表があり、今後ジャング大の研究グループが抗がん性を調べることになっています。
今回のプログラム実施担当の森田洋行教授は「今まで日本や東南アジアでは見つかっていない新たな天然由来のAspH阻害剤が、アフリカの植物から発見されるかもしれない」とその可能性を示唆し、これを契機にアフリカとの本格的な共同研究へと発展することが期待されています。