2021年8月のレポート

奮闘するミャンマー、今もCOVID−19とクーデターの中に

Yamon Min Nyunt Oo、獣医師
University of Veterinary Science(獣医科学大学、ミャンマー、イェジン)、講師

ミャンマーは現在、世界的なパンデミックに直面しています。前政権は、この危機の当初、ウイルスを封じ込めるための措置を迅速に実施しました。昨年3月から今年5月下旬にかけて、第1波と第2波で合計3,126人が死亡しました。2021年の2月1日、軍事クーデターによって国全土が軍部に支配されました。軍が政権を握って以来、ミャンマー全土で大規模な抗議が行われています。2021年6月以降、第3波がビルマ人に徐々に襲いかかっており、国内感染率は高く、死亡率が日に日に上昇しています。アルファ、ベータ、デルタ、カッパのウイルス株が検出されています。パンデミックが始まってから2021年9月3日までに、ミャンマーでは合計3,722,171回の臨床検査が行われ、409,509人がCOVID−19陽性であることが判明しました。回復者は358,074人、死亡者は15,693人でした (保健スポーツ省(MOHS: Ministry of Health and Sports)のニュース、2021年9月3日に更新)。2021年9月4日に更新されたニュースによると、その日の新しい感染者は3,410人、死亡者は93人でした。 https://mohs.gov.mm/Main/content/publication/2019-ncov

以前のパンデミックでは、効果的な対策や予防策が取られていました。しかしながら、今はすっかり変わってしまいました。これは軍事クーデターの結果です。軍事政権下で、医療従事者(主に医師、看護師、その他の支援医療従事者)やボランティアの全国的な不足により多くの病院が人手不足に陥り、クーデター前の第1波、第2波の時のように、人々を治療することができなくなっています。軍の発表やいくつかの制限は完全には守られませんでした。人々は他のことよりも抗議に熱心で、第3波も以前の2回の波と同じようなもの(深刻な死亡率ではない)と考えていたため、公衆衛生上の危機を真剣に受け止めず、軍部もクーデターと権力の掌握にばかり目を向けていました。

最も破滅的なことは、上記の2つの要因によって引き起こされたもので、酸素の供給が不足していることが明らかになりました。この軍事政権は、民間の酸素工場による個人への酸素ボンベの補充を禁止しており、患者が自宅で酸素補給を受けるのは困難になっています。患者の死亡原因は酸素不足であり、彼らは完全な入院治療も医療用酸素も受けられませんでした。患者数に対して医療従事者が不足したため、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れられなくなった病院もありました。また、薬局では在庫切れとなった医薬品もありました。酸素濃縮器は値段が高く、一般家庭では購入出来ませんでした。そのため、国家としてのミャンマーも、特に国民も同様に息苦しくなってしまいました。

今回の感染拡大の主な原因は、インドとミャンマーの国境地帯を中心に、違法な経路で感染者が移動したことにあると考えられます。MOHSの報告書は、自宅での死亡者数を算入していないため、もっぱら実際の状況を過小評価していると見られています。この間、ヤンゴンの墓地では毎日1,500人~2,500人の遺体があったことが記録されていると報告されています。前政権は、貧困層に合理的かつ財政的な支援を行っていましたが、この新政権はこの点に関しては全く何もしませんでした。軍事政権は、ミャンマーでのコロナウイルス拡大のリスクを制御し、制限するための予防措置を再び実施しました。

「Kant Thet Nal Myay」と呼ばれるロックダウンが実施されました。ロックダウンの開始に伴い、通常、大量のまとめ買いが誘発されます。このロックダウン期間は14日でした。30人以上の集まりは制限されます。公共交通機関と国内線は運行を続けましたが、高速バスは乗客を半分に減らしました。さらに、到着時に健康診断と自己隔離さえすれば、乗客は旅行することが可能です。頻繁に自分たちの持ち物を最も安い価格でモバイル販売したり、自分たちの施設を公共に貸し出したりした地元企業や特権階級の人々もいました。また、NGOが生活困窮者のために慈善活動を行いました。とはいえ、これらの状況は前政権下で起きたことで、軍はこれらの全ての状況に対処できませんでした。

すべての政府機関、私立学校、大学、すべての社会的イベント、娯楽施設は閉鎖されています。発表によると、レストランはテイクアウト方式でのみ利用可能です。一部の都市では24時から4時まで外出禁止令が出され、その他の都市では21時から4時まで外出禁止令が出され、自宅待機プログラムが実施されています。公共の場でのマスクの着用や社会的距離の確保が義務付けられています。しかし、これらのルールを無視した場合の罰則は、スーパーマーケットやプラザ(ショッピングモール)などに限られており、他の多くの場所ではルールは強制されませんでした。

前政権は診断(PCR法)の費用をすべて負担していました。現在、COVID−19の症例や患者数の増加に伴い、診断検査室には過剰な負荷が生じています。そこで、迅速診断キットを使うことが解決策となります。PCRを使って検査をしたい場合は、その費用を全額負担しなければなりません。これは民間の病院でのみ可能で、政府の病院ではできません。なぜなら、軍は病院や研究所の財政的な出費についてしばしば不平を言うからです。軍は、今年末までに人口の50%に対するワクチン接種(シノファームとシノバックのワクチン)を目標にしています。彼らのデータによれば、現在、人口の3.3%がワクチン接種を完了していると考えられます。注目すべきことは、多数の市民が死亡したことを受けて、軍は現在、いくつかの新型コロナウイルス治療センターを控えめながら建設しているということです。

COVID−19との戦いで漢方薬を使用することの是非についての明確な答えはありません。しかしながら、多くの人々は、Dregea volubilis(キョウチクトウ科)の葉のブレンドされた匂いが酸素レベルを高くし、生姜とパームシュガーのスープが免疫増強剤として機能すると信じています。ミャンマーはこれまでに、この第3波で28万人以上の患者と8,200人以上の死者が報告されています。高価な抗ウイルス薬 (レムデシビル) とトシリズマブ (血液凝固を軽減) による治療を受けた患者も少しいました。研究者たちは、ビルマ市民の3分の2が集団免疫を有していると推測しています。私たちの間では自己管理を徹底せざるを得ない状況です。場合によっては、貧しい人々のための無料の遠隔相談サービスもありました。私たちは、高価な薬やサービスの代金を支払うことはできません。

私の経験では、最近父がCOVID−19を発症しましたが、幸いにも回復しました。事態を改善するために、私たちは予防措置を講じ、いくつかの支援療法を行い、精神面のケアに注意を払いました。市民はまだCOVID−19を恐れています。私たちは、政府の病院サービスを十分に受けられず、自分たちで治療を受けられるだけの経済力もありません。

私たちは、生きるか死ぬか(LIVE OR DIE)という対極的な状況を抱えているのです。

図1. 私と感染した父が自宅で療養している写真

図2. 私の親戚がCovidセンターで治療を受けている写真

注)原文からの和訳はJSTによるものです。正確な表現やデータについては、英語原文をご参照ください。(原文はこちら