2021年8月のレポート

インドネシアにおけるCOVID-19:課題、障害と戦略的対策

Dhandy Koesoemo Wardhana
Muhammad Thohawi Elziyad Purnama
Adiana Mutamsari Witaningrum

handy Koesoemo Wardhana, Muhammad Thohawi Elziyad Purnama, Adiana Mutamsari Witaningrum
Airlangga University(エアランガ大学、インドネシア、スラバヤ)

インドネシアは東南アジアにおけるCOVID-19症例の新しい震源地の一つです。2021年1月~2月に第1波が去った後、最新の事実から2021年7月に第2波が来たことが明らかになりました。インドネシアCOVID-19タスクフォースチームのデータによると、2021年8月26日の時点で、確認された感染者数は4,043,736人、現感染者数は243,588人(6%)、死亡者数は130,182人 (3.2%) 、回復した感染者数は3,669,966人 (90.8%) となっています。特に、2021年8月26日には、感染者数の増加は、1日の感染者数が16,899人、回復した感染者数が30,099人、死亡者数が889人を記録しました。また、2021年7月15日には、1日の確認された感染者数が56,757人と最高を記録しています。病院のベッド稼働率(BOR: bed occupancy rate)は90%を超えたことが記録されており、時には過剰収容になることもありましたが、現在は30%にまで低下しています。

デルタ変異株は孤発性の発生率を引き起こすことが示されていますが、ジャワ島やバリ島で急速に広がりました。しかも、当時は健康維持のための手順を実施することに対する住民参加が不十分であり、ワクチン接種のレベルが低かったことがそのような事態を招いたのです。特に、宗教上の休日があった2021年5月〜6月に人々の移動が多かったことも大きな引き金になっています。第2波の発生に対する政府の対策は、部分的なロックダウン(バハサ語でPemberlakuan Pembatasan Kegiatan Masyarakat: PPKM)を適用することで、2021年7月3日から実施され、その後は毎週評価が行われてきましたが、現在は2021年8月30日まで延長されています。PPKM政策では、生活必需部門と非生活必需部門を分けています。

このロックダウンに対する一般市民の反応は、多くの人々が自分たちの移動や仕事が制限されると感じて抗議しましたが、生活必需部門の店舗はまだ開いており、生活用品の供給もまだ安全であるため、大量のまとめ買いは発生していません。人々が購入を増やしたのは、無菌ミルクなど免疫力を高めるとされる一部の商品だけです。

午後8時までのみ営業が許可されている生活必需部門には、保健サービス、物流、商品の流通、基本的ニーズ、金融、エネルギー資源などがあります。一方、必要不可欠ではなく、重要ではない部門とショッピングセンターは一時的に稼動していません。この場合、生活必需および非生活必需部門の多くの人材は在宅勤務が求められ、オフィスでの作業が認められたのは25%にとどまっていました。レストランに課せられた制限には、交互に社会的距離を取った空間で最大20分しか接客できないことなどが含まれています。地域レベルではCovid-19タスクフォースによる厳しい監督が行われ、健康維持のための手順の実施や地域住民の参加を促しています。PPKM違反者には、最高1年以下の懲役および/または最高1億ルピアの罰金が課せられます。

政府は、172.84兆ルピアを保健部門に、148.27兆ルピアを社会的保護に、127.85兆ルピアを優先プログラムと教育に、193.74兆ルピアをUMKM(バハサ語でUsaha Mikro Kecil dan Menengah)と企業支援に、56.73兆ルピアを企業活動の刺激策に、こと細かく予算を割り当てることで、Covid-19を克服し、国民経済を回復するための支援政策を引き続き実施しています。旅行や出社の条件として検査・追跡プログラムも実施されています。迅速抗原検査の使用は、検査プログラムを実施する上で第一の選択肢となります。PCRは、迅速検査で陽性の結果が出た場合の第二の選択肢であり、追跡プログラムの有効な基準として利用されています。現在、インドネシアでのPCR費用は最大50万インドネシアルピア(IDR)で、比較的高価なため、多くの人は迅速抗原検査を選択しています。

現在、政府は集団免疫を獲得するために、ワクチン接種プログラムを積極的に継続しています。シノバック、アストラゼネカ、モデルナとファイザーのワクチンは、地域社会での用量配分を満たすため、大量に定期的に輸入されています。住民の参加とワクチン接種への意欲を高めるため、ワクチン接種は無料で行われています。現在、対象者208,265,720人中、59,381,203人 (28.51%) が1回目の接種を受け、33,344,151人 (16.01%) が2回目の接種を受けました。優先的に接種されたのは、医療従事者が1,468,764人、公務員が17,327,167人でした。次いで高齢者と一般の人々で、それぞれ21,553,118人、141,211,181人となっています。2回までのワクチンの接種を受けた場合でも、全ての接種者は依然としてマスクを着用し、屋外での活動中は健康維持のための手順を遵守する必要があります。

COVID-19に対して使用されている伝統医薬は、症状を軽減するための、麻黄を含まない中国由来の連花清瘟(Lianhua Qingwen)カプセルと、免疫を高めるための、インドネシアの伝統的な飲み物または成分であるジャムウ(Jamu)またはエンポン・エンポン(empon-empon)です。麻黄を配合しない中国産のLianhua Qingwenカプセルは、BPOM(インドネシアFDA)が承認していますが、それは、許可を得ていない麻黄を配合したLianhua Qingwenカプセルとは異なります。

私たちの友人や家族の経験から、アクテムラ、アジスロマイシン、ファビピラビル、レムデシビル、イスプリノールが承認され、投与されていますが、病院ではCOVID-19の患者さんには必ずカクテル血漿療法を行っています。

イベルメクチンの使用については、政府(大臣)がCOVID-19療法用のイベルメクチンを製造して病院に配布することには同意しているものの、BPOM(インドネシアFDA)が使用許可を出していないため、いまだに議論が続いています。しかし、病院内には治療にイベルメクチンを使用することを推奨している医師もいました。

COVID-19のパンデミックは、依然として教育分野に大きな影響を与えているようです。すべての講義活動はオンラインで行われ、実習では講師が実験室から直接デモンストレーションを行い、学生はライブストリーミングビデオでフォローするというハイブリッドな方法もとられています。実習メディアの中には、バーチャルリアリティや特殊なソフトウェアを使ってコンピュータシミュレーションを実演するものもあります。学生数の減少も見られますが、これは、経済不況のために多くの学生が教育を受け続けることができなくなったことに起因しています。

このパンデミックがもたらした良い影響は、このCOVID-19パンデミックを解決するためにいくつかの新しい技術やイノベーションが生み出されたこと、家で家族と集まれるようになったこと、汚染物質が減って今後空気の質が向上するであろうこと、家ですべての仕事ができるようになったこと、健康に気を配るようになったことです。悪い影響としては、会議の多くでスケジュールがうまく組めず、同時に2~3の会議に参加したり、ノートパソコンの画面を見過ぎて視力が低下したり、目が疲れたり、疲労が蓄積したり、健康に悪影響を及ぼしたりすることが挙げられます。職場では、オフラインのクラスとは異なるため、学生は勉強や実習をうまく行うことができません。すべての知識を学生に可能な限りに伝えることはできません。多くの市民がパンデミックのために仕事を失い、国の経済にも影響を与えるでしょう。

エアランガ大学では、病院でCOVID-19患者に対応するためのRAISAロボット(ITSとの共同研究)、迅速診断するためのRapid Diagnostics Test IgG/IgM COVID-19(UGMおよびPT. Hepatika Mataramとの共同研究)、COVID-19ワクチンなどの発明を行っています。このワクチンの研究リーダーはFedik Abdul Rantam教授で、その名前はMerah Putihワクチン(PT. Biotis Pharmaceuticalとの共同研究)です。この不活化ワクチンが2022年に完成することを願っています。

図1. インドネシアにおけるCOVID-19ワクチンの投与状況
図2. インドネシアでのCOVID-19ワクチン接種の行列の様子
図3. Merah Putihワクチンの研究で使用された実験動物とエアランガ大学のSuryo博士
図4. Merah Putihワクチン研究中のSuryo博士、Fedik教授とエアランガ大学チーム

注)原文からの和訳はJSTによるものです。正確な表現やデータについては、英語原文をご参照ください。(原文はこちら