2020年5月のレポート

ブルネイにおけるCOVID-19の状況

概要

ブルネイは2020年3月9日に最初のCOVID–19感染を報告しました。マレーシア・クアラルンプールで行われた集団での布教活動(タブリーグ)に関っていた53歳のブルネイ人男性が検査で陽性と判明しました。5月21日の時点で、ブルネイで確認されたCOVID-19感染者の総数は141人であり、うち1人がCOVID–19の合併症で死亡したことが報告されています。現在、4人が重傷で、うち2人は集中治療を受けています。ブルネイでは5月8日から5月25日(本報告の執筆時点)までの17日間、COVID-19感染者ゼロを記録しました。
 

ウイルス感染を抑制するために講じられた措置

ブルネイ政府が初期段階でウイルス感染の抑制を確実に行うためにとった措置の1つは、全てのブルネイ居住者に対して、国を離れることを禁止したことです。これは海外から流入したウイルスによる感染が増加傾向にあったためです。そして、モスク、教会、寺院などの礼拝所の閉鎖、映画館、博物館、スポーツ施設の閉鎖、3月31日からは、レストランでの食事や教室での学習の禁止の措置が続きました。大学、職業訓練校、私立学校、インターナショナルスクールを含む学校での全ての授業は、オンラインで行われました。3月24日以降、全ての外国人の入国も禁止となりました。また、2020年3月20日以降、全ての海外からの旅行者は、ウイルス感染の抑制と監視を確実に行うため、14日間の隔離措置を受ける必要があります。

モスクの清掃

ブルネイ政府はまた、ブルネイムアラ地区とテンブロン地区との間の移動を容易にするために、新しいテンブロン橋を一般に開放しています。以前はこれらの2地区の間を移動するためには、人々は陸路でマレーシアのリンバンを通っていくか、水路で45分間ボートに乗る必要がありました。政府はまた、ブルネイの検査能力を高めるために新しいウイルス研究所の建設を進めるとともに、現在全てのCOVID-19感染者を収容している国立隔離センターに新しい施設を建設しています。これらの新しい建物の建設により、ブルネイがCOVID-19と戦うための十分な準備を整えることが期待されます。

これらの措置以外に、不要な外出を控えること、社会的距離を保つこと、そして衛生状態を改善することが勧められています。また、集会を行うことも禁止されています。結婚式や葬式などの家族の集まりについては、結婚式の場合は新郎新婦の近親者のみで行い、葬式は故人の近親者のみで行うことができます。政府はまた、政府や民間企業で働く労働者に対し、職場で社会的距離をとることや同時に働く人の数を減らすことを勧告しています。政府の役人は、日を替えて交代で勤務することや、可能であれば在宅勤務をすることになっています。

政府は、5月16日からレストランでの食事とスポーツ施設の再開ができるようにいくつかの制限を解除しました。しかし、レストランやスポーツ施設の利用は、接触の追跡ができる「Bruhealth」と呼ばれるモバイルアプリを用いる場合のみ可能です。利用者は商業施設に入るために毎日の健康状態をアプリで更新する必要があります。この接触追跡アプリは、接触追跡を容易にし、感染抑制を確実に行うために導入されました。

市場でのソーシャルディスタンス

パンデミックから学んだ教訓とウイルスが日常生活と仕事に及ぼす影響

この2週間は新たな感染者が出ていない状況ですが、ブルネイがCOVID-19に対する闘いに勝利したということは出来ません。しかし、これらの措置がこの国における感染拡大の抑制に役立ったことは証明されており、これらの措置は無駄にはなっていません。これはまた、病院、警察、ボランティアや政府部門で働く人々を含む最前線の人達による厳しい労働によるものです。この病気と完全に闘うためには、この困難なときには一人一人がその役割を担う必要があり、全ての国民が政府に与えられた措置に従い続けなくてはなりません。

現在、ブルネイの人々は、社会的距離をとり、外出するときはマスクを着けることを当然のこととし、公衆の中では注意を怠らないといったことを実践しながら、「新しい日常」の中で生きていかなければなりません。このような新しいスタンダードは、ブルネイの人々、特にラマダンとシャワルの月のお祝いを以前のように行えなかったイスラム教徒に対して、大きな影響を与えました。ラマダンの月には通常、その月にだけ行われるタラウィ祈祷やコーランのグループ朗読(タダラスコーラン)のために、モスクで毎晩、宗教的な集会が行われます。しかし、今年のタラウィ祈祷は家族のみで行い、ラマダンの後のシャワルの月のお祝いも、ウイルス感染を防ぐために家族や友人への訪問が行われなかったため、近親の家族のみで行われました。

近い将来、ブルネイでは全ての住民がBruhealthアプリを利用することが義務付けられることになるので、今後、ブルネイの人々は、Bruhealthアプリで健康状態を更新するという新しい標準に適合しければなりません。また、学生はOレベルとAレベルといった重要な試験を受ける必要があり、6月2日から学校が徐々に再開される予定で、続々と小学校、中学校、私立学校、インターナショナルスクールが再開されることになります。実際、学校が再開されるときは社会的距離を確保することの実践とともに、朝の集会を行わないことや体育の授業を実施しないことなど、必要な措置が実践されなければなりません。

Siti Norafifah binti Haji Hanipah
May 25th, 2020

注)原文からの和訳はJSTによるものです。正確な表現やデータについては、下記の英語原文をご参照ください。

Overview of COVID-19 situation in Brunei Darussalam