多様な革新的研究成果・実用技術展示 日中大学フェア&フォーラム開幕
2018年08月30日 小岩井忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)
中国と日本の大学が意欲的な研究成果を展示する「日中大学フェア&フォーラム in JSTフェア2018」が、8月30日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開幕した。31日までの2日間、科学技術振興機構(JST)中国総合研究・さくらサイエンスセンターのブースで、JSTと京都大学が中国科学院自動化研究所、ハルビン工業大学、北京交通大学などと共同開発した日中・中日科学技術論文機械翻訳システムの紹介をはじめ、日中両国大学の多様な研究成果・実用事例が紹介される。
多数の来場者を集めた日中大学フェア&フォーラムの会場の様子
日中大学フェア&フォーラムは2010年に東京で第1回が開かれた。4回目となった2013年には初めて会場を中国に移し、翌2014年からは中国と日本で毎年、それぞれ開催されてきた。中国からは年々初参加の大学も増えているが、今回は清華大学、北京大学、浙江大学、上海交通大学など世界の大学ランキングでも上位に評価されている中国の有力大学が顔をそろえたのが特徴。22の大学・機関が28のブースを並べ、研究成果の紹介などに当たる中国からの参加者は約120人に上る。
清華大学のブースでは、都市のスラッジ、生ごみ、産業廃棄物などのバイオマス廃棄物からクリーンエネルギーであるバイオガス、バイオ水素を産出する技術開発の成果などが紹介された。浙江大学は、睡眠時無呼吸症候群をはじめ睡眠の質を無線で監視できる技術や、消防員が立ち入れない危険性の高い火事現場で有毒ガス・液体の希釈や消火活動に使用できる消防ロボットなど実用段階の多様な技術の展示が参加者たちの関心を集めた。
清華大学のブース
社会実装が進んだ技術に関しては、中国で最初の国家大学サイエンスパークを持つ上海交通大学が、建築物の耐震、倒壊防止能力を向上させる技術として既に幅広く活用されている新型モジュール化鉄骨構造システム・組立式コンクリート連結性能向上技術・組立式建築寿命管理・制御技術や、グラフェン材料の熱伝導性能を利用し、新エネルギー車のバッテリーに応用が期待できる熱システム・熱伝導新材料の研究開発成果などが紹介された
上海交通大学国家大学サイエンスパークのブース
一方、JSTの出展区域には、JSTが事務局を担当する国家プロジェクトや、JSTが研究支援する大型研究プロジェクトを紹介する展示が並んだ。その一つが、二酸化炭素(CO2)を排出する化石燃料に代わる燃料として期待されている水素の貯蔵・運搬法として有力視されているアンモニアの利用法をさまざまな角度から検証する展示。道路・鉄道・港湾・空港など社会インフラの維持管理を低コストで行う技術を紹介する展示とともに、中国でも今後、大きな関心事になるとみられる展示が並んだ。
既に日中双方の大きな課題となっているものに、地震、豪雨など自然災害に対する効果的な予測、予防、対応方法の研究と社会への実装がある。日本の国家的プログラムとなっている「レジリエントな防災・減災機能の強化」展示区域では、効果的な対応の鍵を握るとみられている情報共有の仕組み作りと利活用に関する研究と実装例が紹介されている。
日中共同研究の大きな成功例となった日中・中日科学技術論文機械翻訳システムについては、7月27日に北京の中国科学技術情報研究所でシステムの開発に大きな役割を果たした日中双方の代表者が参加した記念シンポジウムが開かれている。「日中大学フェア&フォーラム in JSTフェア」の会場では、中国語の科学技術論文がどのように日本語に翻訳されるかを示すデモが行われ、参加者たちの関心を集めていた。
日中・中日科学技術論文機械翻訳システムのデモ
また、会場の東京ビッグサイトでは、別のフロアでJSTと国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が共催する「イノベーション・ジャパン2018~大学見本市&ビジネスマッチング~」が、同じ30、31日の予定で開幕した。こちらには、日本の60大学と21企業・研究機関が、それぞれ企業化が期待できそうな研究成果や実用化に成功した事例を紹介するブースが並んだ。
31日には国家外国専家局副局長、中国科学技術部党組織メンバーの夏鳴九氏らが訪問し、このようなイベントを通じて日中の科学技術協力の発展のために尽力して欲しいと激励を受けた。
日中大学フェア&フォーラムを訪問した夏鳴九氏(中央)