【速報】日中大学フェア&フォーラム in イノベーションジャパン2017 - #01
2017年09月05日 三木 孝治郎(中国総合研究交流センター)
中国の代表的大学など30校・機関が最新の成果紹介
日中大学フェア&フォーラム開催
科学技術の発達が目覚しい中国から代表的な大学・研究機関ら30校・機関が、最新の成果や活動を紹介する「日中大学フェア&フォーラム in イノベーション・ジャパン2017」が、8月31日と9月1日の両日、東京臨海副都心の東京国際展示場で開かれた。
写真1 多数の来場者が訪れる中国大学ブースのエリア
日中大学フェア&フォーラムは、日本と中国の大学等に交流の場を提供し、ハイレベルの専門家の討議から次世代の人材を育成することを目的に、科学技術振興機構(JST)が2010年から毎年開催している。2013年からは中国でも開催され、今年は5回目となる「日中大学フェア&フォーラム in CHINA」を5月に上海で実施した。今回の「日中大学フェア&フォーラム in イノベーション・ジ ャパン2017」は地元である日本の大学や研究機関が参加する「イノベーション・ジャパン」との同時開催が4回目となる。参加した中国の大学ブースでは、4回目とあって製品の体験デモンストレーションなど展示がより充実し、交流が活発化した。チベット、内モンゴル、貴州省(ミャオ族)の各地からは少数民族の民族衣装姿での展示紹介もあり華やかさが増した。日本の企業等が来場してマッチング対象を探る一方、中国の出展者側も会場内に出展している日本の大学・機関などとの提携を模索する姿がみられた。
今回の特徴は、ポスターだけでなく開発した実機類を展示する動きが拡大したこと。その一つ貴州省黔南民族師範学院のブースでは、学院の紹介とともに地元企業がミャオ族伝統の”秘法”から開発したヘアケア製品が展示され、実際に製品を使用しながらミャオ族伝統のマッサージを施しその効果促進を図る実演も行われていた。「これは明代から伝わるミャオ族伝統の”秘法”にリサーチを加えて開発した製品群。貴州省独山ハイテク開発パークに設立した新会社が製造した。中国国内でも本格販売はこれからです」と提携相手である貴州苗源実業有限公司の代沢蘭董事長はブースを訪れる参観者に説明していた。
写真2 ヘアケア製品を使用しミャオ族伝統のマッサージを施す実演
現在中国でも最注目技術の一つである量子コンピューターに関する研究開発の成果を展示したのは南京大学。同大は中国国内で最も早く量子コンピューター研究を始めた大学のひとつであり、Nature.comなど世界の専門雑誌に論文20編以上を発表した。国家重点研究計画の第一課題である超電導量子コンピューターを担当し、「すでに21の量子ビットの量子チップを加工し、(その性能が)世界レベルに達している」としている。
展示を担当した南京大学政産学研平台管理センターの季青主任らによると、「数年のうちに50ビットの量子コンピューターを実現し、性能は現在最も速い従来型コンピューターを超えAI、新薬開発、暗号解読、画像識別、科学研究への応用が期待される」という。
写真3 量子コンピューターを展示した南京大学のブース
また、昨年と同様ブースの脇に設けられた技術説明会では、15の大学、研究機関、企業の担当者が次々に登壇し、最新の研究開発成果や各機関の活動状況などを紹介した。
技術説明会で最初に説明に立った北京交通大学科学技術処高新技術部の侯暁輝主任は、鉄道インフラにおける変形評価の基礎となる「軌道交通線路全断面動態検査技術と設備」に関する成果について「2012年に中国鉄道学会科学技術省の一等賞を獲得した。レーザースキャンなどを組み合わせて、高精度に位置を測定する技術では精度35ミリと世界一流レベル、断面の測量精度は±1ミリ、スキャン数350断面/秒で世界のトップレベルにある」と紹介し、聴衆から大きな関心を集めた。これらの成果に基づき開発された製品はすでに北京地下鉄や京津都市間高速鉄道などの検査に活用され、さらに広がりをみせているという。
写真4 技術説明会で説明する北京交通大学科学技術処高新技術部の侯暁輝主任