【速報】日中大学フェア&フォーラム2014 - #02
2014年09月11日 馬場 錬成(中国総合研究交流センター特任フェロー)
「日中大学フェア&フォーラム2014」と
「イノベーション・ジャパン2014」が開幕
中国のトップ大学と企業60以上の機関が来日した「日中大学フェア&フォーラム2014」が、9月11日、東京ビッグサイトで開かれ多数の来場者が交流を行った。今年は「イノベーション・ジ ャパン2014」との共催であり大勢の参加者でにぎわった。
この日はまず、会場の正面入り口で開会式とテープカットが行われ、中村道治JST理事長が「2つのイベントが共催する大型のイベントとなり、国際交流の場になることを期待する。こ の機会に日本でもオープンイノベーションが盛んになるように交流が進展するように願っている」との挨拶を行った。
「日中大学フェア&フォーラム2014」には、30大学がブースを開設した。大学・研究機関の紹介や研究開発の中でも特徴ある技術の解説ポスターなどを掲げて、日本企業との連携を模索した。日 本企業や大学関係者にも分かるように日本語のポスターも見られ、日本語を話すスタッフを配置するなど、日本での開催に配慮する大学もあった。
ブースに配置されているスタッフに聞いてみると、日本企業や大学がオープンと同時に訪れ、特定の技術に興味を示して専門的な内容で話し合ったり、大学間の連携に興味を持って訪問した日本の大学もあった。
また午前10時半からは、ブースの近くで中国側からの技術成果説明と需要説明会が開かれ、日本企業や大学関係者らが参加した。この説明会は、10日、11日の2日間にわたって開かれ、そ れぞれの大学の研究内容や技術移転の仕組みなどを説明し、日本の企業や大学との連携を模索した。
中国の大学のブースで多くの交流が進む
ブースを見学していた日本の特許事務所のスタッフは、「中国の大学の技術に興味を持って見ている」と語り、「中国の大学が日本で特許出願する際のお手伝いをしたい」と語っていた。また、日 本の大手商社のスタッフは、中国の「大学の研究レベルを調べるために見学している」と語り、「研究テーマもどのようなところに焦点を当てているかも知りたい」という。
出展している多くの大学は、大学の沿革や組織の紹介などが多く、研究テーマに深入りしたポスターは少ないが、「こうした展示会では仕方ない。どうしてもまず自分の大学紹介から入らざるを得ない。シ リコンバレーでの展示会で出展していた日本の有名大学も同じだった」と語り、まず中国の大学の個々の内容を調べたいという意向のようだった。
日本の中小企業の中国活動の拠点がほしい
浙江大学のブースを訪問した中部大学研究事業部研究支援課の小島千草さんは、中部大学周辺にある日本の中小企業の中国への進出で浙江大学と連携する機会があるのではないか。そ のような命題をもって浙江大学を訪ねてきた。浙江大工業技術研究院の趙栄祥院長と浙江大学サイエンスパーク研究院有限公司の胡征宇董事長が対応し、まず浙江大学の産学連携の現状を説明した。
かつての中国の企業には、研究開発部門がほとんどなかった。このため自社の研究開発は大学に依存することが多く、中国全土に燎原のように広がったサイエンスパークは、実 は中国の企業の研究開発部門の役割をするものであり、20年後には役割を終えてなくなっているかもしれないとの見解を語った。
これまで浙江大学のサイエンスパークでのべ1000社くらいが企業化したが、多くが成功せずに終わり経営の難しさを実感しているという。小島さんが「中国の大学は、教育、研究、企 業活動という分担になっているようですね」と問いかけると浙江大学の2人は「その通りです」と共鳴していた。
小島さんは、日本は人口減少に伴い、企業活動も難しい状況になってきていること、日本で高度な技術を持っている中小企業が中国に進出したいとの希望を持っていても、そ の糸口がなかなか難しくて見つからないことを訴え「中国の大学が日本の中小企業の中国での活動の際に、仲介をしたりアドバイザーの役割をしてもらえると非常に心強い」と要請した。
これに対し、趙先生と胡先生は「是非、そのような組織を作りたい。中部大学・日本の中小企業・浙江大学というトライアングルでビジネスを成功させましょう。日本側から具体的な要望書をまとめてほしい」と 応じ、具体的な交流へと発展した。
日中の研究開発成果を基盤にした交流を促進
東京ビッグサイトで開催されている「日中大学フェア&フォーラム2014」の2日目にあたる9月12日、中国の30大学の出展が引き続き開かれ、日本の企業、大学の参加者がブースを訪問して、研究成果の説明などを聞いた。
北京工業大学科学技術所副所長の劉偉准教授は、熱伝導性が飛躍的に大きい金属の開発成果をポスターで掲示し、日本企業に対し実用化を呼び掛けていた。すでにウエブでこの材料開発を知った日本の中小企業から問い合わせが来たという。
劉准教授は、熱伝導性が優れた新開発の材料と従来からある材料を比べるために、ブースで簡単な実験をしてくれた。ポットで沸かした熱湯をコップに満たし、新材料と従来からの材料を一緒に熱湯の中に入れた。新材料はたちまち熱を伝えて上部の先端まで熱くなったが、従来からの材料は、熱くなるまでかなりの時間がかかった。放熱しなければ効率が悪くなるような機械装置などに導入すれば、機械効率がよくなる。このような利点を訴えて日本企業への売り込みをしたいという。
ブースを訪れた日本人の質問に答える劉偉准教授(左)。
日本の大学・企業との連携を探る活動
日本の大学や企業と環境関連やリサイクルテーマで共同研究をするところがないか。イノベーション・ジャパンで多数の大学のブースが出展しているが、大学発のすぐれた技術を展示してあるのを見ながら、連携する大学を探している中国の大学人もいた。遼寧省胡蘆島市の遼寧工程技術大学資源開発利用先進技術・装備研究院の劉毅・高級顧問である。
劉先生は、「日本のリサイクル技術を中国に導入したり、中国の現状に合う研究テーマで共同研究をできる日本の大学を探している」と語り、多くの日本の大学のブースを訪問していた。
その中の一つが富山県立大学大学院で実用化を目指しているもみ殻の利用法である。イネの収穫後に不要になった大量のもみ殻を特殊な製造方法で再生し、肥料として役立てる方法を確立しようとしている。肥料として認定される直前にあり、認定されれば工業生産して流通機構にも乗せることができる。
劉先生は、このように大学の研究成果を社会貢献する仕組みを研究しながら、自大学の研究テーマと共同で進められるテーマを探していた。
日本側からの連携を探る活動
一方、鹿児島県商工会議所事務局の久保誠次長らは、清華大学と鹿児島県がMOU締結をしている関係から、清華大学との連携を模索するためブースを訪れた。応対した清華大学社会科学学院培訓部副部長の庄英甫先生と意見交換して、今後の両者の交流について話し合った。
鹿児島県グループは、農畜産漁業で県内の活動を活かした中国での活動を模索していることを説明し「鹿児島県の若い世代の企業経営者や農畜産業をしている人々が、国際性の視点をもってこれから活動できるきっかけを作りたい」と説明し、清華大学にアドバイスを求めた。そして今後、どのようにしたら鹿児島県グループが活動領域を広げていかれるかを研究し、次のステップに具体策を出して進展させたいとの方向性で両者の意見は一致した。