2021年8月のレポート

COVID-19 タイの状況

タイ・チュラロンコン大学
Sirinun Pisamai, DVM, PhD

タイにおける Covid-19 パンデミックの現状では、Covid-19陽性患者のほとんどはバンコクで報告されています。私はバンコクに住んでいますが、バンコクはタイの中でも最も規制の厳しい場所です。本日、2021年8月20日、Covid-19 の総感染者数は100万人にまで達しています。新たに確認された感染者は19,851人で、確認された感染者の総数は1,009,710人。このうち、5,388人が重症です。死亡者の総数は8,826人で、2021年8月20日の新たな死亡者は260人です。

私の考えでは、私の国で直面している最大の問題は、タイで流行している人から人への感染性の強いSARS-CoV-2ウイルスのデルタ変異株です。強い感染力を低下させるために、すべての活動が制限されています。政府は、8月末までの制限やロックダウンの延長を発表することを決定しました。ハイリスクの県、言い換えればダークレッドゾーンに住んでいる人で、病気を抑制する許可を得ている人以外は、午後9時から午前4時まで家にいることが求められます。政府は、公衆衛生、疾病管理、公共事業などのサービスを提供する機関を除き、すべての機関に在宅勤務を要請しました。営業できるのは、食品・食料品売り場(スーパーマーケット)と、デパートの中のドラッグストアだけで、しかも夜8時までしか営業しません。レストランや飲食店での食事は許可さません。また、5人を超える集会を開くことも禁止と発表されています。しかし、政府はこのパンデミックの影響を受けている従業員や雇用者に財政支援を行います。このロックダウンの方針については、規制に違反した人には4万バーツの罰金が科せられます。さらに、疾病管理局はパンデミックを抑制するためのルールを定めており、例えば、外出時や公共の場ではすべての人がマスクを着用しなければなりません。規則を破った人には最高2万バーツの罰金が科せられます。

タイでのCovid-19の診断には、主にリアルタイムPCRと簡易抗体検査の2種類の診断法があります。罹患のリスクがある人には、政府が無料で検査を行ってくれますが、制限がありすべての国民をカバーしない可能性があります。現在の大きな懸念は、Covid-19の急速かつ広範な広がりです。しかし、すべての陽性者を他の人から切り離すことはできませんでした。世界的に、特にデルタ変異株急激に増加している国では、非常に大きな問題になっていると思います。

タイのワクチン接種計画では、全ての健康な人と医療関係者を対象に、不活化ワクチン(シノバック)を2回接種して免疫を持たせることを始めました。重篤な症状のリスクが高い人には、ウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ)の接種を開始しました。タイでは、全国民の約18%にCovid-19ワクチンを接種し、8%が総量(最低2回)の接種を受けました。政府が管理するコアワクチンにお金を払う必要はありません。重篤ではないCovid-19陽性患者の場合、伝統的な治療法として伝統的な薬である風邪の症状を軽減するセンシンレン(Andrographis paniculate)の抽出物をタイの食品医薬品局が推奨しています。さらなる調査が行われています。

図1:アンドログラフィス・パニキュラーの植物

Covid-19 のパンデミック時の教育は、今、私たちが直面している大きな障害のひとつです。オンライン学習を導入しました。正直なところ、インターネットの電波はすべての地域で良好ではありません。関係団体は、インターネットの電波を全ての遠隔地にまで広げることを提案しています。教育活動を支援する幾つかの団体も現れています。例えば、チュラロンコン大学では、Wi-Fiの信号にアクセスできないすべての学生にインターネット用のSIMカードを提供しました。

私の目から見ると、このパンデミックのデメリットがすべてに影響を与えています。医療、経済、社会、教育の各分野が混乱しています。さらに、このような状況下でのすべての人々の心の健康は、私たちが関心を持つべき重要な問題です。私の仕事や専門は、教育と健康が基本です。このパンデミックの中で何とかやっていくのは難しいかもしれませんが、今の苦境を乗り越え、そこから学ぶことができると思います。獣医は今でも動物の健康問題を解決するために活動しています。自宅で仕事をすることができませんが、Covid-19の予防と管理のための厳格な措置を守りながら、仕事を修正して適応させることができます。遠隔治療など、すべてのクライアントとその動物をサポートするための技術も導入されています。その他には、この悪い状況では、新しい兆候や発見を得る機会があります。この病気に対して、新しいワクチン技術と新しい診断ツールが確立されています。たとえば、タイの人々と探知犬にワクチンを接種し、感染した人々を見つけるChula-Cov19 mRNAワクチンが、チュラロンコン大学で発明・開発されました。Chula-Cov-19ワクチンが一般に利用できるようになれば、ブースターワクチン(Covidワクチンの3回目の接種)として使用されるか可能性があります。

図2:探知犬が人間の汗の中に含まれるCovid-19を検出している

注)原文からの和訳はJSTによるものです。正確な表現やデータについては、英語原文をご参照ください。(原文はこちら