タイの新型コロナウィルスの状況
タイでは2020年3月以降、新型コロナウィルスの感染患者が増加。バンコクを中心に新たな患者の報告が増加しています。症例の中には、流行国から渡航した外国人からの感染もありました。しかし、ほとんどの症例はボクシングスタジアムや娯楽施設(パブやナイトクラブ)などの集団活動からの感染です。そのため、タイ政府は迅速に感染を抑制するための政策を発表しました。タイの感染者の取締りは継続的に強化されています。例えば、タイへの帰国を希望するタイ人は、タイへの渡航前に医療証明書を取得しなければなりません。また、タイに到着した際には、全員が14日間隔離所に滞在し、健康状態を監視されなければいけません。さらに、タイに渡航することができる1日あたりの渡航者数も制限されました。こういった厳しい対策が講じられているにもかかわらず、感染者数は増加の一途をたどっています。タイ政府傘下のタイ公衆衛生省はこれらの規制を厳しく取り締まっており、新たな措置も講じています。
2020年3月25日、首相は緊急事態宣言を発表しました。この宣言は、タイで感染拡大している状況を抑制するために行われました。緊急事態宣言では、以下のように新型コロナウィルスの流行を遅らせるための重要な対策が講じられています。
- ショッピングモール、市場、レストランでの食事、美容院、展示会やコンベンションセンター、全ての教育機関、映画館、公園や遊び場、パブやナイトクラブ、プール、スパ、ボクシングスタジアムやボクシングスクール、スポーツスタジアムやジム、図書館など、感染の危険性がある場所での活動は禁止されています。しかし、食品のテイクアウトや宅配、スーパー、食品市場、生活必需品を販売するお店、コンビニエンスストアなどでは封鎖が免除され、営業が認められています。
- 引き続き営業している場所は、銀行や金融機関、一部のホテルやホステル、ガソリンスタンド、物流、政府機関、ATM、病院や薬局、郵便局などです。
- タイの国境は、外部からの新型コロナウィルスの感染を防ぐために閉鎖されています。
- 夜間外出禁止令を破った者は、タイの法律に従って処罰されます。
- 各州においては、個別地域の状況に応じて新たな対策や制限を講じることができます。
- 大人数の集まりへの参加禁止
- 国民は家で待機し、「家にいて、病気を止めて、国のために」というモットーに従い、ソーシャルディスタンスを保っています。
- サージカルマスクや手指用消毒ジェルを使用、手を洗うこと、唾液などの飛沫によるウイルスに接触しないこと、ソーシャルディスタンスを置くこと、感染の疑いがある場合は医師の診察を受けることなど、社会的な責任を持って健康を維持しなければなりません。
現在(2020年5月1日)、タイにおける新型コロナウィルスの感染はまだ続いていますが、減少傾向にあります。新規患者数は先月よりも減少しています(図1、図2)。また、回復した患者数も増加しています(新型コロナウィルス患者2,960人/回復患者2,719人)。ただし、タイ政府は緊急事態宣言を2020年5月末まで延長しています。
人々の生活や社会への影響
タイで新型コロナウィルスが発生して以来、人々の行動に変化が見られるようになりました。タイ政府が緊急事態を発表した後、すべての人々は自分の身を守るために生活習慣を緊急事態へと適応させました。個人の衛生管理と家庭の衛生管理はすべての人によって遵守されています。フェイスマスクとフェイスシールドも広く使われるようになりました。さらに、手指に使う消毒水なども日常生活の新たな必需品となっています。建物や店舗に入る前には、すべての人がフェイスマスクを着用し、発熱(体温異常)のチェックを受けなければなりません。
さらに、感染拡大防止のためのロックダウン政策により、経済状況が新たな問題となっています。しばらくの間、収入がない企業もあります。そのため、タイ政府は(新型コロナウィルスにより)被災した人々のために補助金を提供しています。人々や組織は、被災した人々にお金や食べ物を寄付することなどして、お互い助け合わなければなりません。この緊急状況下で、タイを救うことができるすべての活動が行われています。食品は日常生活を送る上でもっとも重要なものです。そのため、Grab Food、Get、Food Panda、Line Manなどのフードデリバリーが人気のビジネスとなっています。さらに、ソーシャルメディアマーケットも人気が出てきました。
継続的に活動している組織は医療機関です。医療従事者による標語 “私たちはあなたのために仕事をしています、私たちのために家にいてください” も作られました。また、ほとんどの人が在宅で仕事をしています。在宅ワーク(WFH)も徐々に定着してきました。料理やダンス、歌など、自宅での活動もいくつか増えてきました。職業柄、教育機関は閉鎖されていますが、仕事は止まっていません。家からリモートで教えたり、ミーティングしたり、学習することもできます。人気のツールは、Microsoft TeamsやZoom meetingなどのオンラインミーティングアプリです。また、生徒への指導方法も変更しました。オンライン課題、オンラインテスト、オンラインプレゼンテーションなど、新しいアクティブラーニングが開発されました。獣医学では、特に臨床学習については、オンラインケースディスカッションや身体検査のVOD(ビデオオンデマンド)クリップなどを通じて新しい学習方法に変更しました。
各国のパンデミック状況もいち早く収束して欲しいと願っています。しかし、私たちの行動を新たな常態に変えていくことで、将来に起こりゆる伝染病の流行や新型コロナウィルスの再流行に気をつけなければなりません。近い未来に開発されるであろう、新型コロナウィルスワクチンと個人の健康状態が、ウィルスと戦うための重要なツールとなることを心より願っています。
Sirinun Pisamai (DVM, PhD)
獣医学部外科学講座
タイ・バンコク/チュラロンコン大学
注)原文からの和訳はJSTによるものです。正確な表現やデータについては、英語原文をご参照ください。(原文はこちら)