カンボジアでのCOVID−19の現在の状況
Som SIMEAN
カンボジア王立農業大学獣医学部講師
(カンボジア・プノンペン)
COVID−19のパンデミックは人々の健康と世界経済に大きな影響を与えており、カンボジアでもその影響が見受けられます。
2021年9月10日、2020年から現在に至るまでのカンボジアでの累計感染者数は98,842人となりました。9月10日だけで658人が新規感染しました。その内の160件は輸入症例です。現在、93,411人が回復し、3,403人が感染しており、中にはICUにいる人もいます。累計死者数は2,028人で9月10日には9人が亡くなったと報じられました。
私は、今のパンデミックの最中にこの国が直面している最大の問題は、通常通りに外出したり、仕事をしたりできるようになったために、人々が病気に対して不安に思わなくなったことだと思います。通常通りに外出や仕事ができるとは言っても、国民はマスクを着用したり、アルコールを手に吹きかけ、手を頻繁に消毒したりしなければなりません。カンボジア王立政府は対応策を講じ、パンデミックを抑制しようとしています。その対応策の下で人々は、たとえば必要回数分のワクチン接種を受けなければなりませんし、海外旅行をした人は帰国後14日間の隔離生活を送らなければなりません。COVID−19の自宅療養も対応策に含まれています。しかし、症状がひどい感染者は絶対に入院が不可欠ですし、ICUでの治療も受ける必要があります。何よりも重要なことは政府の指示に従うことです。その指示には、3つの予防策(マスクの着用、手洗い、ソーシャルディスタンスの確保)と3つの推奨事項(人混みを避けること、室内にいる時には部屋が密閉されないように通気がいい状態にすること、新たな指示が出るまではレストランおよび映画館やカラオケなどの娯楽施設での酒類の販売を避け、営業を停止すること)も含まれます。これらの対応策は、病気の感染拡大を抑える上でかなり効果的であると思われます。
カンボジア王立政府(RGC)はプノンペンおよびタクマウ市の特定の人に各家庭あたり40~60米ドルを給付し、金銭的に支援を行っていました。さらに彼らにはロックダウンの最中、米や麺、食材など食料品が配給されました。公共サービスに関しても支援を行い、コロナで家族を亡くした人や生活が困窮している人の電気代(5~15米ドル)や水道代(2.20~7.50米ドル)も政府が支払いました。
ロックダウンの措置は都市部だけでなく、地方でも行われました。法律を違反した人には罰が与えられます。たとえばロックダウンを無視した人には250~750米ドルの罰金が科されます。意図的に他者にCOVID−19をうつした人には500~2,500米ドルの罰金と6か月~3年の懲役が科され、意図的に社会にコロナウイルスをまき散らし、大勢を危険にさらした人には500~5,000米ドルの罰金と懲役2~5年の刑が下されます。
ロックダウンの期間は通常は14日間です。状況が良くならない場合には、政府はロックダウンをさらに7日間延長することもあります。ロックダウンのせいで仕事に行ったり、事業を営んだりすることができず、結果として経済的な危機など悪影響を受け、不満を感じている人もいました。一方で平均的な給料を受け取っている人や高収入の人の中には、自分たちの居住地区でのウイルスの感染拡大を防ぐためにはロックダウンこそ最善の策だと考え、不満に感じていない人もいます。4月にはプノンペンのDoemkorや小規模な市場では、ロックダウンの前に生活必需品の買い占め騒動が起きました。人々が特に急いで購入したのは食料(豚を始めとする肉、魚、食材、野菜)と救急・消毒グッズでした。
ショッピングセンターでマスクを着用しなかったり、ソーシャルディスタンスを確保しなかったりした場合は罰せられます。たとえば、初めて違反した場合には保健衛生官または関係する職に就いている人から注意や警告を受けることになります。しかし、2回目に違反した場合、マスクの不着用に対しては50~250米ドル、ソーシャルディスタンスを確保しなかったことに対しては250~2,500米ドルの罰金が科されます。
カンボジアではCOVID−19迅速抗原検査とPCR検査という2種類の検査を使って診断を行っています。COVID−19迅速抗原検査は、最初に行うスクリーン検査に使われ、陽性となった人はPCR検査の対象となります。PCR検査は診断を確定させるために、カンボジアのパスツール研究所で行われています。カンボジア国民はこれらの検査に対し、検査費を支払う必要がありません。つまり、政府がすべての金額を支払っています。それと同時に抗体検査を受ける必要はありません。(保健大臣のスポークスマンがそのように言っています)保健省によると、デルタ株が現在国中で広まっている新しい変異ウイルスです。
最近では18歳以上の国民へのワクチン接種が完了し、12~18歳の子供たちが接種を受け始めました。カンボジアで使われているワクチンにはシノファーム、コビシールドのアストラゼネカ、日本で製造されたアストラゼネカ、イギリスで製造されたアストラゼネカ、シノバック(12~17歳用と、18歳以上の人用のもの)、ヤンセン(ジョンソン・エンド・ジョンソン)が挙げられます。2021年9月10日時点で、大人の97.23%がワクチン接種を終えました。一方で12~18歳の子供は、86.77%の人が接種を受けました。ワクチン接種に対して費用を支払う必要はありません。
カンボジアの伝統薬でCOVID−19を治せると考えられている薬はありません。しかし、最近、COVID−19の治療薬として中国の伝統薬がカンボジア王立政府によって承認されています。これ以外にもイベルメクチンの使用に関して議論が起こっています。イベルメクチンは従来、動物の寄生虫を駆除する薬として使われてきました。しかし、この薬はCOVID−19の患者の治療にも使われています。
地域社会のつながりに関していうとNGOやNPOならびに関連する団体はアルコールやマスク、金銭や食料を地元住民に寄付しています。公立学校では、生徒たちはZoomを使ったオンライン授業を受講できます。または先生は生徒に宿題を出し、生徒たちはその文書を定期的に送り返すという形の授業が行われています。
まとめると、COVID−19が私たちの生活にもたらした良い影響というのは多くはありません。ですが私自身は技術に関して理解を深め、問題解決にあたってより自信を持てるようになりました。そうとは言え、悪い側面もあります。COVID−19のせいで外出して食料を買ったり、他者と交流したりするのもままならず、不安とストレスを感じます。もし私が病気になったら、病院に行くのでさえ、とても恐ろしく、行きたくないと感じるでしょう。
参考文献
- http://www.moj.gov.kh/
- http://www.moh.gov.kh/
- https://web.facebook.com/sub.co.19
- http://phnompenh.gov.kh/kh/
注)原文からの和訳はJSTによるものです。正確な表現やデータについては、英語原文をご参照ください。(原文はこちら)