2020年5月のレポート

ブータンにおけるCOVID-19に関する最新情報

2020年5月15日現在

Shekhar Chhetri
ブータン王立大学天然資源学部動物科学部講師

 ブータンではCOVID-19陽性の症例が海外からの訪問者のみ(外国人およびブータン人)に報告されています。ブータンの観光産業はこの世界的なパンデミックの影響を強く受け、約5万人のブータンの観光ガイドと運営側が職を失いました。現在のところ、国内の社会では感染の第二波はなく、そのために、ブータンでは完全封鎖は行われていません。しかし、防護的措置としての各種の予防手段がとられています。それらは、国内および国外への旅行の制限、学校の閉鎖と在宅勤務、多人数の集会の制限、「Druk Trace」と呼ばれる感染経路の追跡アプリの導入、毎日午後7時以降の商業拠点の閉鎖、社会的距離をとること、石鹸で20秒間手洗いすることやアルコール濃度の高い手指消毒剤の利用による個人の衛生管理の実践などです。 5月15日の時点で、国内で記録されたCOVID-19の陽性症例数は21人であり、このうち5人が回復し、死亡者は0人です。

隔離センター
COVID-19の陽性患者数に関する月例報告(2020年1月1日~5月15日)

 綿密な準備計画とブータン国境での旅行者に対するスクリーニング検査にもかかわらず、COVID-19の最初の陽性のケースは、3月5日午後11時にティンプーにある王立疾病予防管理センター(RCDC)で確認され、翌3月6日に発表されました。その患者は米国からの76歳の男性旅行者で59歳のパートナーと同行していました。それ以降、ブータンはWHOのパンデミックステージのオレンジゾーンに入りました。この2人の観光客の感染経路の追跡は、パロ国際空港から訪問先までの旅程に従って開始され、この追跡から特定された接触者は、指定病院で隔離され、監視下に置かれました。2番目の陽性のケースはその米国人観光客の59歳のパートナーで、3月20日に報告されました。76歳の米国人観光客は、家族が彼を米国に連れ戻す選択をしたため、3月13日に緊急フライトで帰国しました。

衛生管理に関する国民への周知

外国にいるブータン人の学生や労働者は、ブータンへの帰国を求められました。彼らは帰国するとすぐに、ブータン政府の費用負担により14日間(その後21日間に延長)、隔離されることになりました。 このようにして、ブータンではCOVID-19陽性の一連のケースが発生し始めました。彼らは外国から戻ってすぐに検査を受け、RT-PCRで陽性となった場合は、検疫を受け隔離されることになります。

Number of cases Dates recorded Subject details & Travel history
1 5thMarch 2020 A 76 years old American male tourist
2 20thMarch 2020 A 59 years old partner of American tourist
3 25thMarch 2020 A Bhutanese student returning from Europe
4 29thMarch 2020 A Bhutanese student returning from India
5 1stApril 2020 A Bhutanese student returning from USA
6 20thApril 2020 A Bhutanese returning from Middle East country
7 22ndApril 2020 A 27 years old Bhutanese male returned from Middle East country
8 & 9 10thMay 2020 Two Bhutanese, male 27 years and female 28 years old returning from Middle East country
10 & 11 11thMay 2020 Two Bhutanese, male 25 years and female 27 years old returning from Middle East country
12, 13, 14 & 15 13thMay 2020 Four Bhutanese, 2 males (32 & 33 years old) and 2 females (23 & 26 years old) returning from Middle East country
16, 17, 18, 19 & 20 14thMay 2020 Five Bhutanese, four females (24, 27, 29 & 31 years old) and a male (30 years old) returning from Middle East country
21 15thMay 2020 A 29 years old Bhutanese female returning from Middle East country

表1:ブータンにおける5月15日時点のCOVID-19の陽性患者の概要

計21件の陽性患者のうち、2件は外国人であると記録され、19件は外国からブータンに帰国したブータン国民で、そのうち最大の陽性人数(16人)は中東から帰国した国民であると報告されました。

ブータンはジグミ・ケサル第5代国王陛下とロティ・ツェリン首相の強力なリーダーシップの下で、世界的なパンデミックとの闘いのために懸命に取り組んでいます。数多くの隔離センター、検疫施設、インフルエンザ・クリニックが既に全国各地に建築されています。COVID-19に対する最前線のタスクフォースメンバーとして、特別に配置された人やグループのみでなく、ボランティアの人々を配することによって準備計画が作られています。

「科学と人類が進化した時代の世界的なパンデミックの中で生き残る経験をしていることをうれしく思います。」 –著者

注)原文からの和訳はJSTによるものです。正確な表現やデータについては、下記の英語原文をご参照ください。

National Situational Update on COVID-19 in Bhutan