2017年度 活動レポート 第417号:東北大学

2017年度活動レポート(一般公募コース)第417号

中国同済大学土木工学科の大学院生が耐震工学・構造工学を学ぶ

東北大学災害科学国際研究所からの報告

2018年2月21日から2月28日までの8日間、「さくらサイエンスプログラム」の助成により、東北大学災害科学国際研究所において、中国同済大学から10名の土木工学専攻大学院生を招へいし地震工学・構造工学に関する研修を実施しました。

研修は、耐震工学や構造工学を専門とする研究者からの講義の聴講および日中の大学院生双方からの研究発表会・交流会と、2011年東日本大震災において津波被害を受けた地域および仙台市内の免震構造や制震構造を採用した建物の見学会で構成しました。

耐震工学に関して、実施主担当者の五十子幸樹教授(東北大学災害科学国際研究所)から免震構造や超高層ビルの地震時過大変位の抑制に効果がある複素減衰の理論について、山形大学の三辻和弥教授から免震建物の地震時挙動に関する観測と解析結果について、東北工業大学の船木尚己教授からは流体を用いたダイナミック・マスデバイス(fluid inerter)の実験結果について、中国同済大学の謝麗宇講師と張瑞甫講師からそれぞれ折り畳みパッチアンテナを用いたパッシブワイヤレス歪センサーと確率論的応答低減率に基づくダイナミック・マスシステム付き構造物の設計に関して講義が行われ、参加学生から活発な質問と討論がなされました。

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講義内容について質問と討論をする参加学生
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講義をして下さった先生方との集合写真

日中の学生同士の発表会・交流会では、同済大学からの参加学生全員の発表と東北大学から3名の大学院生、1名の学部学生から研究発表を行いました。双方からの発表はほとんどが英語で行われましたが、込み入った議論では一部司会の薛教授(東北工業大学教授・同済大学兼任教授)の通訳を交える場面もありました。中国人学生より多くの質問が出され、日本人学生がやや押され気味でしたが、両者にとって英語でのディスカッションは良い刺激になったものと思います。

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日中学生交流会

東北工業大学では東日本大震災で被害を受けた10号館の制振装置を、東北大学では工学部人間環境系教育研究棟の免震装置や免震実験棟を、仙台市内のNTT新青葉通りビルでは東北大学を含む研究グループが開発した同調粘性マスダンパー制振システムを見学しました。参加学生は建築構造物の地震時応答制御に用いられる装置の実物を初めて見たことに大変感激している様子で、研究においても常に実用化を念頭に考えることの必要性に気づいたというコメントもありました。東北大学片平キャンパスにおいては魯迅が学んだ階段教室の見学も実施しました。

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東北大学工学部人間環境系教育研究棟の免震装置を見学
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NTT新青葉通りビルの制振装置を間近に見学

2日間に渡るバスを借り上げてのスタディツアーでは、2011年東日本大震災における津波被害を受けた地域を訪問しました。東松島に比べて松島では比較的津波高さが低かったのは、日本三景の一つに数えられる美しい景観を構成する多数の島々が津波の勢いを減じる効果を発揮したからだということが分かります。

昼食を取ったレストランでは、職員の方々から津波の日の松島の様子についてお話を伺うことができました。石巻の日和山公園からは甚大な津波被害を受けた石巻市を見渡すことができ、南三陸町では遺構として保存されることになった防災庁舎を見学しました。周辺に建設された復興住宅や津波防潮堤、地盤のかさ上げ工事などの様子も見学しました。

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津波被害を受けた石巻市を一望する日和山公園にて
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献花台から南三陸町防災庁舎を望む

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東松島市震災復興伝承館にて
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東北大学青葉山キャンパスの免震実験棟
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修了式を終えて

これまでも東北大学と同済大学の間には長い交流の歴史がありますが、今回の研修・交流を通して、今後も更に連携を強化することを互いに確認し、実施主担当者の五十子教授が2018年3月に同済大学を訪問して特別講義を行うこととなりました。また、参加者の一人で同済大学博士課程の学生が東北大学の特別研究学生として共同研究を実施することを目指して、中国の国家留学基金管理委員会(CSC)に奨学金を申請することとなりました。この学生に続いて多くの参加学生が日本の大学の博士課程に進学したり、博士研究員として再来日してくれることに期待しています。

末筆となりますが、この度本事業を支援してくださった「さくらサイエンスプログラム」に深く感謝申し上げます。