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活動報告(一般公募コース) 第147号

中国の大学院生との共同研究~リハビリテーションへの応用をめざして

電気通信大学からの報告

 平成29年9月27日~10月7日の11日間、さくらサイエンスプランの支援を受け、中国・瀋陽工業大学電気工程学院の大学院生10名と引率教員1名を電気通信大学脳科学ライフサポート研究センターに招へいし、生体信号に基づいた福祉ロボットの制御に関する共同研究を実施しました。

 生体信号の計測と解読、および生体信号に含められたヒトの意図によるロボット制御技術は、世界においてホットな研究分野であり、近年注目を浴びています。

 本交流計画は生体信号の計測と解析、およびリハビリテーションへの応用と位置付けて、来訪学生の研究分野を考慮して5つのグループに分け、受け入れ側学生とともに下記研究実験を行いました。

①筋電によるロボットアームの制御、

②ロボットアームを用いた上腕動作の再現、

③機能的電気刺激による手指動作の誘発、

④肩義手の制御、

⑤歩容を考慮した歩行支援機の速度制御

 さらに、見学、月見会、報告会、修了式を開催することで、教員・学生間の交流を深めました。

写真1
見学と月見会の様子

<①筋電によるロボットアームの制御>

 筋電信号は、筋肉の活動と動作意図を反映する生体信号であることから、福祉機器の制御によく使われています。この実験は、皮膚表面の電極で微弱な筋電信号を計測し、多自由度のロボットアームを制御します。導電性シリコンを用いた筋電電極の製作から、筋電信号の解析まで行い、最後に3人の協力でロボットアームを操作し、物体の把持動作を制御することに成功しました。

写真2
筋電計測電極の自作

<②ロボットアームを用いた上腕動作の再現>

 ヒトの上腕は、肩に3自由度、肘に1自由度、手首に3自由度を有しており、巧みな動作ができます。電気通信大学では、ヒトの上腕動作を再現するために、ワイヤ干渉駆動機構を提案し、7自由度のロボットアームを開発しました。この実験は、ロボットアームの性能を評価するために、Kinectでヒトの上腕動作を計測し、同じ動作をロボットアームに実行させました。

写真3
ヒトの上腕動作を再現するロボットアーム

<③機能的電気刺激による手指動作の誘発>

 機能的電気刺激は、外部から筋肉を収縮させる有効な手段として、脳卒中などで麻痺した患者のリハビリに利用されています。この実験は、電気通信大学で開発した多チャンネルの機能的電気刺激装置を用いて、刺激チャンネルと手指動作の対応関係を解析し、その対応関係に基づいて目標動作を誘発する刺激パターンを自動的に選択することを試みました。

写真4
機能的電気刺激による手指動作の誘発

<④肩義手の制御>

 電気通信大学では、両肩離断の患者のための肩義手を開発しています。両肩離断の場合、残存筋肉が少なく、得られる筋電信号に制限がありますので、複数の生体信号で肩義手を制御する必要があります。この実験は、胸と背中の筋電信号で肩義手の手と腕の動きを制御し、顎の生体信号で制御モードの切り替えを行うことで、物体の把持・移動に成功しました。

写真5
肩義手の制御

<⑤歩容を考慮した歩行支援機の速度制御>

 歩行障害者のリハビリテーションと日常生活における移動をサポートする歩行機を制御する際に、利用者の歩容を検知し、歩容に合わせて速度や方向などを調整する必要があります。本研究は、歩行機の内側に近接覚センサを装着し、歩行機と足との相対距離に続いて利用者の歩容を計測し、歩容に基づいた歩行機の速度制御を行いました。

写真6
歩行支援機の速度制御

<⑥交流会、報告会、修了式>

 共同研究のほか、都内の施設見学と中秋節(10月4日、旧暦8月15日)の月見会を行い、日本の自然・文化と科学技術を幅広く体験させながら、教員・学生間の交流を深めました。ました。共同研究の成果と交流の感想をまとめ、10月6日に成果報告会を開催しました。成果報告会には多くの教員と学生が参加し、活発な議論を行い、交流を深めました。交流会の後、さくらサイエンスの修了式をおこないました。

写真7
研究成果報告会
写真8
修了式

 以上の交流活動を通して、双方の教員と学生が生体信号を用いた福祉ロボット制御技術の共同研究を実施することができ、たがいに対する理解も深められました。日本の自然・社会・文化の特色も実感でき、来訪者は実施プログラムを高く評価しました。本学教員、学生に対して感謝の意を表すとともに、今後共同研究や留学のチャンスがあれば、ぜひ日本に来たいとの感想をもらいました。

平成29年度 活動報告