2017年度 活動レポート 第85号:金沢工業大学基礎実技教育課程

2017年度活動レポート(一般公募コース)第85号

白山市白峰地区の未来の姿を創造する

金沢工業大学基礎実技教育課程からの報告

平成29年9月4日から9月13日にわたり、さくらサイエンスプログラム採択事業として、ベトナム社会主義共和国 ホーチミン市工業大学(HUTECH/VJIT)から5名、タイ王国 泰日工業大学(TNI)より5名の学生を日本に招へいしました。

金沢工業大学(KIT)学部生5名と共に、互いに学んでいる分野や文化の枠を超えて白峰地区の未来のために、寝食を共にする「合宿形式」で学びを創造した、プログラムの実施状況を以下の通り報告します。

<第一段階:事前学習>

VJIT、TNI、KITの学生15名を3ヶ国混合の4チームに分け、次の事前学習を行いました。

① 本学が教育の軸としているプロジェクトデザイン教育(問題発見解決型/プロジェクト型学習)の理解。 ② 今回のテーマの舞台となる「白山市」について、VJITやTNIの学生には初めて体験する「白山信仰」や牛首紬やとち餅などの「伝統産業」を説明し、その後KIT学生のサポートで情報収集を行う。 ③ 本学の「電気・光・エネルギー応用研究センター」と「地域防災環境科学研究所」にて、植物系油を活用した発電実験施設やスマートフォン等の移動通信電波に関する研究施設、最新の大型研究装置を代表する「環境音計測室」、「屋上緑化・雨水利用・気象観測エリア」、「振動特性実験室」を視察。

写真1
第一段階事前学習 雨の白山比咩神社参拝
写真2
第一段階事前学習 研究所視察

<第二段階:課題を抱える地域社会での課題解決合宿Ⅰ>

【意思疎通】

今回は3ヶ国混合チームであるため、当初共通言語は日本語に設定しましが、事前学習を進めるにしたがって、様々な言語、手段をとる様子が見えてきました。コミュニケーションとしては言語が一番便利ではありますが、それが叶わなくて、でもどうしても伝えたいことがある場合、相手が知らないと分かっていても母国語を使い、絵を描き、体で表現する。そして意思疎通ができたときの勝ち誇ったような彼らの笑顔がとても印象的でした。

【フューチャーセッションの手法を実践】

① 2022年の「白峰村」の姿を個人で考え、それをメンバーに提案し、チームとしてアイディアを練り上げ、より具体的に形にし『イラスト思考』を使い模造紙1枚に表現。
② バックキャスティング:2022年のゴール達成に向けて、2020の出来事(奇跡)、2017年の出来事(2020年の奇跡を生んだ最初の一歩)をイノベーション。
③ 結果、4チームは創造力を駆使して

「栃の実を使った商品開発(美容・健康商品)」、

「 交通の利便性を向上させ世界一の雪だるまやダムのウォーターアクティビティで有名に」、

「 航空会社と提携した販路拡張戦略(とち餅、牛首紬)」、

「セグウェイで観光できる街」

をタイトルとしてプレゼンテーションを行いました。

写真3
第二段階 課題を抱える地域社会での課題解決合宿Ⅰ
チームワーク活動

<第三段階:課題を抱える地域社会での課題解決合宿Ⅱ>

【プロトタイブ作製】

プロトタイプ作製をより質の高いものにするため、*『Ichigo Jam』講習会を開催しました。創造した未来にイノベーションを興すには、ITのスキルが必要不可欠になるのではないかとの理由からです。チームのアイディアにIchigo Jamをどのように取り込めば理想のプロトタイプが作れるのか、全チームが悩み、講師陣に熱心にアドバイスを求めていました。

*『Ichigo Jam』:プログラミング専用こどもパソコンです。手のひらにのせられるほどの大きさで、テレビとキーボードをつなげばすぐにプログラミングを始められます。こどもたちのものづくりへの関心やICTリテラシー向上のためプログラミング教材として活用されています。

【最終プレゼンテーション】

最終プレゼンテーションは、白峰村で過ごした3泊4日の集大成であり、地域の人を招待して次のテーマで日本語並びに英語で開催されました。参加した地元の方からは、発展的な意見・アドバイスが多く、少し視点を変えるだけで彼らのアイディアが実現しうる可能性を感じました。

a. 効率的に栃の実を採取するスパイダー型ロボット

b. 手取川ダムの水を活かしライトアップする噴水施設

c. 安全に栃の実を採取するためのシステム

d. 観光情報を教えてくれるセグウェイ

今回招へいした学生からは、

「日本の大学院に進学したい」

「将来是非日本で働きたい」

「日本語をもっと勉強して両国が発展する仕事をしたい」

という意見が多数寄せられた。

写真4
第二段階 課題を抱える地域社会での課題解決合宿Ⅱ
細粒プレゼンテーションを終えて
写真5
修了証を受け取るプログラム招へい者

日本の小さな一地区の未来の活性化策として、彼らのイノベーション力が様々なアイディアを生み出し、「日本」に対する彼らの目標が明確になったことを切に願い、このような実践的経験を通して学ぶプログラムを継続して実施することに努めていきたいと思います。