2017年度 活動レポート 第55号:名古屋大学環境学部地理学教室

2017年度活動レポート(一般公募コース)第55号

環境保全と開発の両立に向けた農山村開発のための最先端研究を学ぶ

名古屋大学環境学部地理学教室教授 横山 智さんからの報告

名古屋大学環境学研究科は、平成29年7月19日~7月27日の日程で、全学学術交流協定を締結しているラオス国立大学から5名の教員、そして部局間学術交流協定を締結しているラオス国立農林業研究所から5名の研究員、総計10名を招へいしました。

今回の研修では、ラオス農山村において直面している環境保全と開発の問題を解決するために、日本の農山村地域で実践されている取り組みを学び、さらにそれを実際に経験してもらうことを目的としました。

前回(平成27年)の参加者からのフィードバックを反映してプログラムを改善し、日本の農林業を取り巻く現状をより包括的に理解してもらえる内容となるよう、工夫しました。

まず一行は7月19日(水)成田に到着し、東京でオリエンテーションに参加した後、(株)農林中金総合研究所にて特別講義を受けました。特別講義では、日本の農業政策や農業協同組合(農協)という組織・制度について、現状と課題について学びました。

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農林中金総合研究所での講義の様子

2日目の午前中は愛知県豊田市のトヨタ自動車(株)の工場を見学し、日本の最先端製造技術に触れる機会となりました。

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トヨタ会館にて

午後からは初日に(株)農林中金総合研究所で学んだことを踏まえ、愛知県大府市にある農産品直売所を主とする複合施設「JAあぐりタウンげんきの郷」を視察しました。全国でも有数の売上高を誇る同施設において、どのように農家と協力し、大手スーパー等と差別化して顧客を獲得しているのか、その仕掛けや工夫について、職員の方からご説明頂きました。

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JAあぐりタウンげんきの郷での視察

3日から5日目は愛知県豊田市旭地区の築100年の農家民宿に宿泊し、地域住民の方々と交流をしながら、有機農法での農業や、間伐、薪作りを実際に体験しました。また、地域の人々が集うお寺の「ご縁市」で、マーケット調査を行うとともに、どのように古くからの住民と新規移住者が交流しながら共に地域をつくっているのかを理解してもらいました。

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間伐体験

6日目は園芸科を有する愛知県立稲沢高等学校を訪問し、温室野菜等の栽培方法、農業指導方法を学び、そして愛知県植木センターで造園技術と緑化用樹木の生産を見学しました。ラオスには農業高校がなく、農業は親から学ぶものと考えられているため、高校見学では活発な質疑応答が繰り広げられました。

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愛知県立稲沢高等学校の生徒たちとの交流
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愛知県植木センター見学の様子

7日目と8日目は、視察や体験での学びをまとめるセッションを設けました。参加者同士、そして本学の学生と積極的に意見交換をし、また本学教員の指導のもと、各々の研究テーマの深化に繋げられるよう内容を整理し、最終日の成果発表会においてグループ・プレゼンテーションを行いました。

成果発表会には本学教員と学生が参加し、白熱した議論が交わされました。成果発表会後に修了証書授与式を執り行いましたが、どの参加者も満面の笑みを浮かべていた様子が、非常に印象的でした。

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成果発表会

限られた期間ではありましたが、本プログラムを通して、ラオスに持ち帰って自国の持続可能な発展に応用してもらえるような「日本の経験」を学ぶ機会を、参加者に提供することができました。

今後さらに3機関間の研究交流を発展させ、両国の共発展に寄与できるよう良好な関係を継続していくことが期待されます。その礎となる貴重な機会をご提供いただきましたさくらサイエンスプログラムに、心より感謝申し上げます。