2016年度 活動レポート 第370号:京都大学東南アジア地域研究研究所

2016年度活動レポート(一般公募コース)第370号

東南アジア地域における学術情報基盤環境の構築・整備支援

京都大学東南アジア地域研究研究所からの報告

京都大学東南アジア地域研究研究所は、さくらサイエンスプログラムにより、H26年度第1回ラオスを皮切りに、同年第2回カンボジア、第3回インドネシア、第4回ベトナム、H27年度第1回タイ、第2回インドシナ-ラオス、ベトナム、カンボジア-、H28年度第1回ミャンマー、第2回タイ、いずれも10名ずつと、6カ国27機関80名を招へいしてきました。

H26年度第4回以降は図書室が主担当となり、「東南アジア地域における学術情報基盤環境の構築・整備支援」をテーマとした、短期研修を行っています。

図書室は、80年代半ばから東南アジア諸国の図書館情報学研究者・図書館員を年2回6ヶ月間招へいする、長期研修の実績があり、さくらサイエンスプログラムではその実績を活かして、図書室・情報処理室・地図室が一体となって構築している、学術情報基盤スキーム研修と、国内の連携各機関における専門テーマに係る視察・実習を組み合わせました。

今回はH27年2月14日~23日の日程で、タイの地方大学を中心として、コンケン大学・ブラパ大学・チェンマイ大学・プリンスオブソンクラー大学、シリントン王女文化人類学センターの5機関から、図書館員9名・図書館情報学研究者1名の全10名を招へいしました。

研修日程前半は、京都大学、立命館大学、国立国会図書館関西館、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)情報学で行われました。

写真1
「タイ語搭載多言語自動翻訳技術開発とその運用」について受講(国立研究開発法人情報通信研究機構ユニバーサルコミュニケーション研究所)
写真2
「NDL Search」データベーススキームについて受講(国立国会図書館関西館)

京都大学では、東南アジア研究所内図書室・情報処理室・地図室、また学内の附属図書館、北部キャンパスの理学部中央図書室で研修を行いました。また、国会図書館関西館、立命館大学平井嘉一郎記念図書館のほか、NICTユニバーサルコミュニケーション研究所を視察しました。

写真3
利用者への電子リソース等のレファレンス対応を実見(京都大学理学中央図書室)

日程後半は、東京・千葉の東京大学経済学図書館・国立情報学研究所・アジア経済研究所図書館が研修受入先となり、招へい側各機関が、それぞれ機関としての特徴に応じて、日本における学術情報基盤環境の全体像と将来的展望、アジア資料コレクションなど、多様な研修内容を展開しました。

写真4
資料保存用製函実習(東京大学経済学資料室)
写真5
資料保存用脱酸実習(東京大学経済学資料室)

写真6
NACSIS-CAT総合目録データベースやIRDBについて受講(国立情報学研究所)
写真7
成果報告会を終えて、東南アジア担当サブジェクトライブラリアンと記念撮影(アジア経済研究所図書館)

写真8
戦前タイの航空写真・地図を外邦図で実見(東南アジア地域研究研究所)

研修の特徴として、

  • ①招へい側・受入側とも毎回複数機関が参加していること
  • ②プログラム終了後も、参加機関間の交流が継続していること
  • ③図書館という女性が多く活躍する場がメインであるため、女性の専門職・研究職が多く参加していること

以上3点が挙げられます。

さくらサイエンスプログラムによる直接的効果としては、

  • ①本研究所、および図書室の知名度が上がり、過去の招へい者がもたらした情報による視察や資料寄贈申し込み、招へい研究員図書室枠公募への応募数が増加していること
  • ②日本側各受入機関の現場担当者の英語によるレファレンス対応スキルが回を追う毎に向上し日常業務に活かされていること

の2点が挙げられます。

さくらサイエンスプログラムを活用した「東南アジア地域における学術情報基盤環境の構築・整備支援」プロジェクトは今回で5回目となりますが、東南アジア諸国において学術情報基盤環境構築は社会・経済発展のための切実な課題であり、日本側に熱い期待が向けられています。

その期待に応えるべく、今後もこのような研修を継続していく必要があると考えます。