2016年度 活動レポート 第320号:聖路加国際大学・国立感染症研究所

2016年度活動レポート(一般公募コース)第320号

アジア地域における感染症疫学若手研究者交流事業

聖路加国際大学・国立感染症研究所 からの報告

聖路加国際大学、国立感染症研究所の共同で、2017年1月11日~20日の10日間、ベトナム、タイ、シンガポール、韓国、台湾から計9名の研修生を招へいし、交流事業を実施しました。

アジア地域は多くの感染症が流行するホットゾーンですが、感染症研究者のネットワークを構築し、適切な情報共有を行うことは、各国の感染症対策に大きな効力を発揮します。

また、日本は戦後の衛生状態が悪化した混乱期から、感染症を克服してきた歴史があり、その知見や経験は、発展著しいアジア地域の国々において、重要な参考になると思われます。

本事業では、アジア諸国において感染症疫学の分野で研究を行い、感染症対策に当たっている若手研究者に、日本の実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology Training Program:FETP)に所属する若手研究者等とともにシンポジウム、およびワークショップに、研修生として参加してもらい、双方の交流を深めることを目的としました。

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平成29年1月12日 聖路加国際大学におけるシンポジウムにて

1日目は、聖路加国際病院における、我が国の最先端の検査診断技術や治療を見学しました。つづいて、東北大学の押谷仁教授による特別講演が行われ、WHOにおけるSARSアウトブレイクの経験を紹介して頂き、感染症対策におけるアジア各国の連携の必要性、重要性について学びました。

その後、日本を含む各地域における感染症に関する課題や対策について、FETP研修生が発表しました。

2日目は、日本の感染症対策の現場として川崎地方衛生研究所を見学し、その後、聖路加国際大学Wong准教授より数理モデルを利用した感染症研究の最前線の研究を紹介して頂きました。

写真2
平成29年1月13日 川崎衛生研究所にて

続いて、各FETP活動の紹介があり、それぞれが抱える課題の共有や、問題点の打開策などについて議論しました。

後半は感染研に舞台に移し、米国カリフォルニア大学バークレー校公衆衛生大学院教授Lee Riley先生による、感染症分子疫学セミナーを開催しました。

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平成29年1月16日 感染研における院内分子疫学セミナーにて
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平成29年1月16日 感染研における院内分子疫学セミナーにて

講義では、分子疫学に基づく分析手法についての紹介や解説、またそれを用いた感染症アウトブレイクの実例と対応が示されました。また、ワークショップ形式で、分子疫学的手法を用いた、各々の国における課題解決に向けた共同討議が行われました。

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平成29年1月18日 感染研における院内分子疫学セミナーにて

本事業期間中、講義以外の時間においても、各地域の文化の紹介や、日本のFETPによるたこ焼きの実演と歓迎会が行われるなど、様々な交流が行われました。

セミナー中の週末には日本科学未来館を見学し、感染症分野を含む我が国の優れた科学技術を実際に体験しました。

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平成29年1月14日 科学未来館にて

本事業を通して若手研究者同士が、様々な分野において意見交換やそれぞれの経験を共有しました。その交流を通じて形成されたネットワークにより、共同研究や情報共有が促進され、我が国を含め参加各国、地域における感染症対策の根幹をなすことが期待されます。

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平成29年1月19日 倉根所長より修了証の贈呈

本事業は3年計画で、招へいの対象国を変えて、来年度は院内感染症、再来年度は感染症統計解析をテーマに実施する予定です。

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平成29年1月16日 感染研所長室にて
写真9
平成29年1月19日 感染研における修了証贈呈式にて

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平成29年1月20日 招へい者と協力者集合写真