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活動報告(特別寄稿) 第44号

環境配慮型農業や再資源化を事例とした地域の環境管理

【執筆者プロフィール】

[氏名]:
奥田 綾子
[所属・役職]:
公益財団法人国際環境技術移転センター(ICETT)地球環境部事業推進課主任

プログラム
1日目 来日/オリエンテーション
2日目 三重大学大学院生物資源学研究科、三重県農林水産部・意見交換
3日目 JAみえきた・意見交換/イオンモール東員・廃棄物保存ヤードなどを見学
4日目 うれし野アグリ株式会社の野菜栽培を見学/三重県農業研究所・意見交換
5日目 四日市公害と環境未来館・見学/株式会社アベックス・廃ガラスの再資源化を見学
6日目 日本科学未来館・見学/交流プログラム総括
7日目 浅草寺、東京都庁・見学
8日目 帰国

さくらサイエンスプラン実施の経緯

 四川省は内陸部でありながら、温暖で肥沃な土地を有する地理的特徴を活かした農業が盛んであったが、近年は農業分野においても近代化、生産性の向上が追及され、産業化が進められている。しかしその一方で、適切な施肥や防除等に課題も残しており、同省関係者からも水質汚染、土壌汚染などを懸念する声が上がっている。

 これらの状況を鑑みた四川省科学技術合作協会から、同省内の農業並びに廃棄物分野を研究する若手・中堅研究者を日本に派遣し、環境配慮型農業や廃棄物の再資源化等の地域の環境管理事例を学びたいとの要望が提出され交流プログラムを実施する運びとなった。

送り出し機関

 本交流プログラムは四川省科学技術交流センターの推薦により、四川農業大学、西南科技大学より3名の講師が交流プログラムに参加した。

 両学共に科学技術分野や農学分野に留まらず、文学、医学、芸術学など多岐に亘る学部を有する総合大学である。本交流に参加した3名の講師はそれぞれ家禽飼育、農業廃棄物管理や農村汚染対策などの分野を研究対象としており、参加者の経歴に関する資料中に、四川省らしく「パンダ飼育」という単語が見受けられた。


うれし野アグリ株式会社にて温室見学


四日市公害と環境未来館にて公害克服の経緯を学習

プログラムの概要と成果

 交流機関の前半は、三重大学、三重県農林水産部で日本の営農に係る法制度や農業共同組合による営農指導、農業従事者へのサポートについて学び、自国との相違について意見交換を行った。日本では営農に対し食糧生産だけを求めるのではなく、生態系保持や自然災害抑制などの多面的な効果を見出すシステムといった観点で法整備や農業共同組合の運営がなされている。参加者らは生産力のみに重点を置き、周辺環境への配慮は後手に回る自国の現状について、既に頻出している環境課題や今後起こり得る影響について認識を高めた。

 また県農業研究所、うれし野アグリ株式会社、株式会社アベックスで農業廃棄物の資源化、工場排熱を利用した温室での高品質な野菜栽培、廃ガラス材の土壌改良資材への再資源化について見学及び意見交換を行った。

 県農業研究所では家畜糞尿のペレット肥料化による広範囲地域での普及について研究が進められている。また、株式会社アベックスでは廃ガラスを焼成加工した土壌・水質改良資材を製造しており、今後多量に廃棄物として取り扱われると予測される太陽光発電パネルの再資源化についても研究を進めている。この分野については四川省でも実用化に向けた研究が進められており、今後の共同研究の可能性について意見交換を行った。

 四日市公害と環境未来館では四日市公害が発生した経緯、当時の行政・企業・市民の対応や様子、克服の課程について学習し、公害未然防止の重要性について同館職員と意見を交わした。

 参加者らは日本での最新科学技術の内容のみならず、それらが必要とされる背景、活用されるための法整備などの土台作り、日本人の意識変化や企業のソフト面での取り組みについて総合的に理解を深めることが出来た。


イオンモール東員にて中国にはない顧客向け資源回収BOXを見学


三重県農業研究所にて意見交換

受入れ機関への効果

 ICETTは平成2年の設立以来、アジア諸国をはじめとする諸外国より2500名以上を日本に招聘し、環境保全に関連する研修事業や交流事業を実施してきた。ICETTがこれまで実施した3回の交流プログラムは、過去にICETTの事業に参加した同窓生からの強い要望により実現したものである。交流プログラムを実施することで、送り出し機関や同窓生とのネットワークが、より強化されることとなった。また、従来の招聘事業は行政官を対象とする機会が多く、本交流プログラムでの意見交換はICETT担当者自身の対象国に対するアカデミックな視点での課題抽出に繋がった。

今後の展望

 参加者らは帰国後に学内での報告会を実施し、日本の研究機関との学術協定締結、日本企業が有する技術の四川省への導入、学生のさくらサイエンスプランへの参加や日本への留学支援等について積極的に国内の関連機関に働きかけたいとのコメントを得た。日本での経験が参加者本人にとって新たな思考を得る機会となっただけではなく、自身の研究に対する意欲向上に繋がったことを嬉しく思う。ICETTにおいても参加者に対するフォローアップを継続するとともに、交流プログラムで強化されたネットワークを現地での技術指導や日本企業と国外機関との業務提携支援事業にも活用していきたい。

活動報告