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活動報告(特別寄稿) 第38号

Toshiba Youth Club Asia
アジアの多様性と共通課題の理解、そして未来の可能性の模索

【執筆者プロフィール】

[氏名]:
齊藤 亜紀
[所属・役職]:
公益財団法人東芝国際交流財団プログラム・オフィサー

プログラム
1日目 日本到着、開会式
2日目 各国紹介(自国、自分の街、ライフスタイル)、選考用論文発表
企業家の視点からみた社会的課題への取り組みに関する講義
各チームの“Vision(20年後のアジアの展望)”設定
3日目 現在直面しているグローバルな課題に関する講義
明治神宮訪問(東京の中心部に計画的に残された自然と日本文化)
環境問題と経済の関係について学ぶワークショップ
科学技術の変遷とそれによる社会への影響に関する講義
4日目 東芝未来科学館訪問、新幹線体験乗車、東京駅見学(先端科学技術の体感)
自国に必要な科学技術と、その必要性に関するワークショップ
5日目 東大公共政策大学院訪問(アジアの経済成長をテーマとした大学院生との討論)
成果発表資料作成(上記の経験と学びに基づき、“Vision”の詳細検討)
6日目 成果発表資料作成(“Vision”に基づくアクションプラン検討)
7日目 成果報告会、閉会式(“Vision”発表)
8日目 帰国

プログラム概要

 日本とASEANの高校生が日本に一堂に会し、日本に対するASEAN諸国の学生の関心を高めるとともに、将来のアジアの展望についてともに考える機会を提供することを目的とした国際交流プログラム「Toshiba Youth Club Asia」を12月19日から26日の8日間にわたり実施。ASEANからは、タイ(Old Japanese Students' Association, Thailand)、シンガポール(Japanese University Graduates Association of Singapore)、インドネシア(Perhimpunan Alumni Dari Jepang)、マレーシア(Japan Graduates' Association of Malaysia)、ブルネイ(Brunei Association of Japan Alumni)の各国元日本国留学生会の協力のもと、高校生10名(各国2名)とアドバイザー5名が参加した。また、日本からは高校生7名(慶應湘南藤沢高等部3名、早稲田高等学院1名、隠岐島前高校3名)および教員4名が参加した。

 期間中、参加者たちは各国混成の4つのグループ(T、Y、C、A)に分かれ、「TYCA Asian Vision 2035」(20年後のアジアの展望)をテーマに、専門家による講義、ワークショップ、フィールドトリップ、グループディスカッションなど数々のプログラムを体験。7日目には、期間中に得た知識などをもとに、テーマに基づく成果発表をグループごとに行った。

TYCAでの学び(交流の成果)

 TYCAで学んでほしいこととして、①アジアの多様性を理解する、②社会企業家の視点を学ぶ、③地球温暖化等グローバルな課題を確認する、④科学技術と社会のイノベーションを体感する、⑤アジアの成長を考える(経済、制度設計面)を掲げ、これら5つの学びが得られるよう毎日のプログラムを企画した。

 2日目は、多様性を理解することを目的として、自分の国、自分の街やライフスタイルについて各国ごとに発表を行った。同じアジア地域に住んでいながら、生活環境、文化、習慣などが全く異なるということを再認識し、同時に互いの国への関心が深まったようだった。

活動の様子1
「自分たちの国・街・ライフスタイルについて発表」

 3日目は、平田仁子氏(特定非営利活動法人気候ネットワーク理事)より、「私たちが直面しているグローバルな課題」をテーマに、COP21に実際に参加して得た最新情報などを盛り込みながら、気候変動、大気汚染、自然災害、エネルギー問題、貧困問題、テロリズムといった課題についての講義が行われた。参加者たちは、これらの課題が遠い場所ではなく身近で起こっているのだという認識を新たにしていた。

活動の様子2
「平田仁子氏による講義」

 4日目は、東芝未来科学館を訪問。最新の科学技術の他、冷蔵庫や洗濯機、カラーテレビ、扇風機など人々の生活を変えた日本初あるいは世界初の製品(1号機)を見学した。参加者たちは、日本の電気・電子技術の発展の歴史と、科学技術の社会に対するイノベーションについて学んだ。その後の移動では、新幹線に乗車体験を行った。

活動の様子3
「東芝が開発した1号機製品に見入る参加者たち」

 5日目は、東京大学を訪問。公共政策大学院生5人(ASEANからの留学生4名、日本人1名)より「アジアの経済成長」をテーマにプレゼンテーションを行ってもらい、その後、ディスカッションを行った。大学院生らのプレゼンは高校生にはまだ難しい内容のようだったが、ASEANからの留学生として先輩である彼らとの交流は、自分たちの将来を考える良い刺激となったようであった。

活動の様4
「東大公共政策大学院生とのディスカッション」

 7日目の成果報告会では、4グループごとに、自分たちが考える20年後のアジアの展望(“Vision”)について発表した。各グループが掲げた”Vision”は以下の通りで、この1週間で積み上げてきた学びが活かされた内容となっていた。

Tグループ:2035年までにアジアの青年が協力、啓発する事によって持続可能で安定 した社会を作りあげる。

Yグループ:アジアの全ての国で平和的な発展の元、平穏で持続可能な社会を築く。
Cグループ:教育による国際的な環境問題への意識の向上。
Aグループ:環境科学に対する知識を深める事で、日本とASEANの経済を20年以内に改善する。

活動の様5
「成果発表」

今後の展望

 TYCAでは、参加高校生たちに、成果発表で提案した“Vision”を実現するために、自分たちが身近な範囲で起こせる行動の活動計画(3か月間)を作成し、実際に活動することを事後課題として課している。活動計画や活動の様子は、SNSなどで公開して参加者同士で共有できるようにし、活動を更に拡大したい場合には「TYCA Social Grant」という追加支援の仕組みを用意している。これらにより、TYCAを1週間のプログラムという一過性のものではなく、終了後も参加者たちの繋がりを維持できるようにしている。

 今後もTYCAを通して、同じアジア地域に住みながら交流する機会が少ない日本とASEANの高校生たちに、相互理解を深めながら、異なる文化、価値観、社会問題などを背景に、アジアの将来の展望について共に議論する機会を与えていきたいと考えている。

活動報告