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活動報告(特別寄稿) 第29号

繊維技術に関する製造設備や分析設備も見学
異分野融合ワークショップで学術交流
福井大学大学院工学研究科

【執筆者プロフィール】

[氏名]:
藤田 聡
[所属・役職]:
福井大学大学院工学研究科准教授
[氏名]:
末 信一朗
[所属・役職]:
福井大学大学院工学研究科教授

実施内容
1日目 到着、ガイダンス
2日目 エレクトロスピニングによるナノファイバーの作製実習、異分野融合ワークショップ、福井フェニックスまつり
3日目 文化交流:福井県立恐竜博物館、丸岡城
4日目 文化交流:東尋坊、永平寺
5日目 細胞培養、微生物培養操作の実習、動物細胞のタイムラプス観察、ナノファイバーの電子顕微鏡観察
6日目 免疫組織学的な細胞観察、株式会社越の磯の酒造での現場見学
7日目 高分子・繊維材料の解析実習、日華化学株式会社の化成品製造現場見学
8日目 福井県工業技術センター、市街見学(福井城、養浩館庭園)
9日目 成果報告会
10日目 マレーシア・中国グループ帰国
11日目 台湾グループ帰国

1.プログラムの概要

 国立成功大学(台湾)、中国医薬大学(同)、天津工業大学(中国)、プトラ大学(マレーシア)、モナシュ大学(同)の大学生・大学院生10名を招へいし、本学で2週間の学術交流等を行った。本プログラムは、大学院工学研究科 繊維先端工学専攻にて、繊維材料・高分子化学を軸として、異なる研究分野の教員・学生がバイオ・化学・工学のさまざまなアプローチで相互研究交流を行うことで、それぞれの専門領域を伸ばすだけでなく、国際的視野で幅広い観点から複合的な研究テーマを俯瞰し、現実社会の課題に対して解決策を示すことのできる力を育成し、より実践的なグローバル人材養成を行うことを目的とし、グループワーク・ディスカッションなどの学術交流を行ったものである。


日本人学生と協力してグループワークに取り組む



2.交流の成果

 本プログラムは研究室での実験・実習のみならず、学外の見学会や文化交流も積極的に取り入れることで「異分野交流」を心がけた。中でも参加者が大いに興味を持っていたのは、地元の酒造会社の見学であった。あいにく夏場のため日本酒の製造工程を見ることはできなかったが、清酒の製造設備や麹室、地ビール製造場の見学を通じ、自国の発酵食品等と関連づけながら大いに感銘を受けていた。
 福井県工業技術センターの見学では、地域の基幹産業である繊維技術に関する製造設備や分析設備を見学した。県内には国内トップクラスの技術を有する繊維関連企業が多数あり、そうした会社のノウハウを集積した工業技術センターの研究施設とその成果には参加者も興味をそそられていた。


異分野融合ワークショップにて、各自の研究分野を紹介


日華化学株式会社を見学

3.受け入れ機関の効果

 プログラム初日には、学生の交流・アイスブレイクを目的として、参加者および受入研究室所属の本学学生が専門としているナノ・複合材料、バイオセンサー、生物工学、医療材料等の研究発表をポスター形式のワークショップで開催した。互いにどのような研究をしているのか、詳しく知る場となっただけでなく、本学の学生にとっても良い刺激となった。英語で直接自分の研究を説明することに最初は躊躇していたが、参加者の積極性を見たり、自分の研究に興味を示されて質問を受けたりするうちに、本交流の主たる目的である異分野交流が深まっていった。参加者の一人ビー・クーン・ガンさんも「ほかの研究者から情報を得ることができて有意義だった」と感想を話した。また、本ワークショップには福井県立藤島高校SSH(スーパーサイエンスハイスクール)のグループも参加した。ある高校生は「研究が専門的すぎて難しい。でも将来は科学技術を通して世界の人と交流したい」と話し、積極的に質問を投げかけており、広く派生効果をもたらした。

4.将来の課題と展望

 本プログラムは科学技術振興機構(JST)の支援が充実しており、送出し機関でも人気が非常に高く、もっと多くの学生を受け入れてほしいという強い要望が聞かれた。本学の限られた設備・体制の下で実施するために今回は10名のみを受け入れることになったが、可能であればもう少し受入れ人数を増やしたいところである。また本プログラムの主旨は先に述べたとおり「異分野交流」であるが、海外留学生を受け入れるだけではまだ一方通行の交流であり、本学からも出向き、継続的な相互交流になるのが理想である。今回、参加者の送出し機関には、本学からもグローバル人材育成支援事業のプログラムにより学生を送ることで相互交流を続けてきた。さくらサイエンスプランは受入れ支援の体制が整った素晴らしいプログラムであるが、ぜひ「相互」という観点から送出しのプログラムも盛り込み、今後の事業に展開していただければさらに成果があがるものと考える。
 いずれにせよ、本プログラムで送出し機関の学生が日本をよく知り、留学・就職を検討するモチベーションに与える影響は大きい。彼らの指導教員からの期待も大きく、今後もぜひ継続的に続けてほしいと強く希望している。
 本学ではこれからも海外との学術・研究交流を深め、グローバル人材の育成を推進していきたいと考えている。

活動報告