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活動報告(特別寄稿) 第21号

瀬戸内の自然の中で先端技術にふれてもらう
福山大学と貴州師範大学との学術交流
許 霽

【執筆者プロフィール】

[氏名]:
許 霽
[所属・役職]:
福山大学経済学部税務会計学科教授

プログラム

プログラム
1日目 夜の広島空港に到着
2日目 工学部講義:「センサー応用自律マシンのプログラミング設計」、「地震と耐震について知ろう」建築学科
3日目 工学部講義:「情報工学研究の最先端」(情報工学科)、「3次元モノづくりと自動車安全技術」(機械システム工学科)
4日目 生命工学部講義:「島嶼に学ぶ生物多様性の保全」
5日目 日本人学生・留学生との交流会、キャンパス見学
6日目 人間文化学部講義:「心理学を応用した科学捜査-ポリグラフ検査の体験-」、「爆心地ヒロシマのCG復元と関連CG技術の解説及びVRスタジオの見学」
7日目 マツダミュージアム、広島平和記念資料館見学、修了証書授与式
8日目 帰国

美しい瀬戸内の自然を見てもらう

 美しい瀬戸内の自然の中で、外国人学生たちに日本の様々な先端技術にふれてもらい、地域に根ざした、人と地球にやさしい科学技術を学ぶきっかけとすることを目的に、8月24日から9月1日まで貴州師範大学の引率教員趙全喜先生ならびに学生10人を招聘しました。
 貴州師範大学は中国教育部の「西部高等教育学校支援プログラム」に選定された貴州省の重点大学で、本学とはH18年度にダブルディグリー協定を締結して以来、学生や教員間の交流が頻繁に行われており、文化や教育、社会など多方面から日本を紹介する『日本学研究』という学術誌も共同出版しています。本学の数多くの協定校の中でも一番親交のある大学ですが、少数民族の多い中国奥地にあるため、国際交流のチャンスが少ないだけではなく、優秀な学生であるにもかかわらず経済的に恵まれず、海外の先端技術に触れる機会がない状況にあります。今回のプランは将来を担う中国人学生にとって得難い機会になりました。


研究実験エリアで熱心に耳を傾ける学生達

アクティブラーニングによる学生参加型授業

 台風の影響で一日遅れのスタートとなったため、日程の変更を余儀なくされ、いきなり工学部の講義に突入しました。学生たちは旅の疲れも見せずに興味津々で聞き入っていました。本学での講義においては、可能な限りアクティブラーニングを導入して学生参加型授業とすることで理解度を向上させ、充実した教育環境,先端的施設・設備を活用した実習を交えながら、それぞれの専門分野において注目を集めている話題を中心に選定しました。新たな教育手法を多用した教育システムの優位性も合わせて理解してもらうように努めました。
 また、大学での講義と学外見学に連続性を持たせるために、センサー応用自律マシンを製作してからマツダミュージアムへ、分子遺伝学的に研究する手法とその理論を学んだ後に瀬戸内島嶼部にある愛媛県総合科学博物館や本学水族館へ、爆心地ヒロシマをCG復元技術で再現してから広島平和記念公園見学などへ。暮らしにやさしい科学技術の素晴らしさ、生物との共生共存の重要さ、そして古今の広島の違いから戦争の悲惨さと生きることの力強さを存分に体験してもらいました。


ポリグラフ検査体験後にホッと一息

 学生たちは最新の研究や施設・設備を見て、聞いて、触れることで、異なる分野に関しても視野が広がり、実生活における科学技術の応用についても実感したようです。学生からの活発な質問や、休憩時間も惜しんで自らものづくりや実験に取り組む姿が見られ、とても充実した時間となりました。特に本学の因島キャンパスを見学した際、瀬戸内海の素晴らしい景観に、初めて海を見る貴州師範大学の学生たちは大いに感動し、飼育体験や水族館の裏側をのぞき、非常に良い経験になりました。その夜は研究所の教職員や大学院生、住民を交えてバーベキューを行い、互いの親交を深め、最後には学生たちが自発的に集まり、輪になって「日中友好に乾杯!」と声を上げる姿はとても感動的でした。
 貴州師範大学の学生たちは中国の大学にない先進的な設備があることはもちろん、教科書通りの知識だけでなく、自らの実践能力を高める教育に重点が置かれていることに刺激を受けたと話していました。そして最も印象的だったと皆が口をそろえて言っていたことは、日本人は親切で礼儀正しく、公共の場では騒ぐことはなく、携帯で話す人もほとんどいない、いたるところが整理整頓され、美しい環境に囲まれているからか、日本人の心のうちの穏やかさが感じ取れるというものでした。


瀬戸内海の島嶼に住むアカネズミに興味しんしん

言葉を超えた有意義な学術交流

 一方、我々教員たちも学生たちの基礎知識や英語力の高さはもちろん、物事に対する好奇心や課題に取り組む情熱さ、さらに急に振られたスピーチでも、的を射た素晴らしい感想を堂々と述べる様子を見て感心しました。異なった環境でそれぞれ異なる価値観や生活様式、文化で育ち、自ら体験したことで初めてその違いについて考え、選択できるようになると話した学生もおり、両国の若者たちが国の隔たりを感じることなく触れ合っている姿を見て、国際交流の重要さを改めて実感できるひと時でした。
 互いに誠意をもって交流すれば、言葉はもはや障害ではないという人もいますが、やはりより深い交流をし、お互いを研鑽するには一定の語学力は不可欠です。今後、より多くの留学生が来日し、学部および大学院で学び、研究するためには、協定校の日本語学科と連携をとり、来日前の日本語教育をしっかりと行うことや、相互の教員派遣による専門分野の交流強化が益々重要になるとの想いを胸に、爽やかな感動を残して成功裏に終了しました。


和やかな修了証書授与式

活動報告