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活動報告(特別寄稿) 第20号

体験を通じた課題解決に向かうことを学ぶ
金沢工業高等専門学校のプログラム実践
松下 臣仁

【執筆者プロフィール】

[氏名]:
松下 臣仁
[所属・役職]:
金沢工業高等専門学校グローバル情報学科准教授

プログラム日程表

プログラム
1日目 到着、歓迎レセプション
2日目 扇が丘キャンパス見学、やつかほキャンパス研究所見学
3日目 日本語講座、学生チームによるプロトタイプ製作プロジェクトのブリーフィング
4日目 学生チームによる共同プロトタイプ製作活動
5日目 学生チームによる共同プロトタイプ製作活動
6日目 学生チームによる共同プロトタイプ製作活動
7日目 金沢伝統工芸ものづくり体験(蒔絵体験)
8日目 成果発表会
9日目 小松空港から東京へ移動。国立科学博物館見学など。
10日目 浅草等、都内文化体験。帰国


到着時の歓迎会

地域産業の活性化や環境問題の課題発見

 学校法人金沢工業大学(以下、本学園)では、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が実施する日本・アジア青少年サイエンス交流事業『さくらサイエンスプラン』の支援を受け、「KIT/KTCラーニングエクスプレス(9月受入)」プログラム(以下、本プログラム)を、平成27年9月7日(月)から16日(水)までの10日間にわたって実施しました。本プログラムでは、シンガポール理工学院の学生5名と引率教員1名、インドネシアのムハマディア大学マラン校の学生5名を本学園に招き、金沢工業大学(KIT)の学生12名、金沢工業高等専門学校(KTC)の学生6名と共に技術・文化交流活動を行いました。


蒔絵体験をする留学生達


最終発表で製作したプロトタイプを紹介


 「KIT/KTCラーニングエクスプレス」とは、本学園学生がアジアの開発途上国を訪問し、地域産業の活性化や環境問題の改善などの観点から課題を発見し、解決策を創出するグローバル人材育成プログラムです。本学園学生は提携校であるシンガポール理工学院生と訪問地域の大学生とチームを組み、国籍や専門分野の違いを超えて協働します。平成27年3月に、学生達は2週間にわたってインドネシア・マランで活動し、本プログラムはその3月の活動の事後学習と位置づけられています。今回、マランで協働した学生を短期留学生として金沢へ招待し、再び多国籍・異分野連携チームを結成して、本プログラムがスタートしました。チームは本学園のモノづくり施設を利用して、3月にマランで創出した課題解決案のうち2つのアイデアを具体化するモノづくりに取り組みました。


ディスカッション風景

現地の作業者からのフィードバック

 「アイデアの1つ目は、観光客向けの土産や家庭用としても需要がある、ミルクキャンディの生産工程の改善を図るものです。滞在した村では家内工業でミルクキャンディを生産しており、学生は手作業で細かく切り分ける工程に着目し、より生産性を高める「ミルクキャンディカッター」を発案。一部実用可能な機能を備えたプロトタイプを製作しました。2つ目は、家畜の飼料となる昆虫養殖の現場で、効率よく幼虫とさなぎの選別ができる製品のプロトタイプを製作しました。これらのプロトタイプは、ムハマディア大学の学生が現地へ持ち帰って試用してもらうことになりました。今後は現地の作業者からのフィードバックを踏まえて、改良、最終的な現地導入を図っていきます。


協力して加工作業をすすめる学生達

 また本プログラムでは、日本への理解、興味を深めてもらうための文化体験の機会も設けられました。留学生は本学園学生と共に、金沢市の観光名所である兼六園、近江町市場などを視察し、石川県の伝統工芸である蒔絵体験にもチャレンジしました。また、金沢でのプログラム終了後は、東京で1日を過ごし、国立科学博物館や浅草寺等を訪れました。これらの活動を通して、日本の歴史や伝統的な建築物、工芸品、地域の特色ある食事などを実際に見聞し、あらためて日本文化への関心が深まったようでした。

実践的な専門的英語運用能力の向上

 本プログラムを通して、留学生達から「日本文化を直に体験し、充実した日々を送ることができた。またいつか日本に戻ってきたい」という声を聞くことができました。また、チームで考案したアイデアを具体化し、プロトタイプをインドネシアに持ち帰るという目的も果たすことができ、大きな達成感を得て帰国の途につきました。本学園学生にとっては留学生との活動を通して、日常生活だけでなく、より実践的な専門的英語運用能力、コミュニケーション能力に磨きをかける機会となりました。そして何よりも、学生達は活動を通して新たな友情を育むことができたことに、最も大きな喜びを感じており、大変実りの多いプログラムとなりました。
 これからも本学園は海外教育機関との連携を推進し、国籍を超えた文化交流と実践的な技術交流を通して、多文化共生の礎となる能力を涵養する機会の提供と環境構築を進めてまいります。この度は本プログラムの実施にあたり、JSTをはじめ、ご協力いただいた関係者の方々に厚く御礼を申し上げます。

活動報告