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活動報告(特別寄稿) 第17号

バイオディーゼル燃料の合成実験などを研修
ベトナムの研究者・学生が日本の環境技術に触れる
竹中 規訓

【執筆者プロフィール】

[氏名]:
竹中 規訓
[所属・役職]:
大阪府立大学大学院工学研究科・教授

プログラム
1日目
7月29日
AM 来日 関西国際空港
PM 奈良国立博物館等で文化財の保存を見学 奈良
2日目
7月30日
AM 水管理に関する講義 大阪府立大学
PM 大阪府立大学内の植物工場およびメタン発酵施設の見学 大阪府立大学
3日目
7月31日
AM 京都における景観論争の現場視察 京都市
PM 京都における景観形成と観光についての施策学習 京都市
4日目
8月1日
AM バイオディーゼル燃料に関する英語での講義 大阪府立大学
PM バイオディーゼル燃料調製実験を日本人学生と共同作業で行う 大阪府立大学
5日目
8月2日
AM 大阪市立科学館の見学 大阪市
PM 海遊館の見学 大阪市
6日目
8月3日
AM 水処理に関する化学実験 大阪府立大学
PM 大阪府立大学の環境に関わる研究室の見学 大阪府立大学
7日目
8月4日
AM 国立民族学博物館の見学 吹田市
PM 千里住宅公園で環境共生型住宅の視察 吹田市
8日目
8月5日
AM 日吉㈱において水処理や水質試験、水質測定現場の視察 近江八幡市
PM 琵琶湖博物館の見学 草津市
9日目
8月6日
AM 研修の反省会・総括、その後、大阪府立大学学長と面談 大阪府立大学
PM 大阪市立環境科学研究所の視察 大阪市
8月7日 AM 帰国 関西国際空港

1.プログラム概要・送り出し機関の紹介

 公立大学法人大阪府立大学では、ベトナム国家大学ホーチミン校・科学大学(以下科学大学)から研究者4名、大学院生2名、学部生4名の計10名を招聘しました。日本における環境科学、環境モニタリング、環境再生の研修をテーマとし、2015年7月29日から8月7日の10日間に学術・文化交流を行いました。ベトナムの環境は非常に深刻な状況にありますが、研究者の数が非常に少ないこと、十分な環境への取り組み経験がほとんどないことなどから、環境の改善はほとんど進んでいません。

 学部生、大学院生および若手研究者に対して日本の取り組みを実際に体験させ、日本の優れた環境政策、環境対策を学修させ、ベトナムの環境改善に貢献する人材を育成することを目的としました。
 科学大学は、ベトナムに2つある国家大学の1つで、科学に関連する9つの学部、532の分野が集まっています。送り出し機関の研究室はベトナムでも数少ない環境問題、特に大気汚染の研究に取り組んでおり、すでに、2名(学部長および副学部長)が本大学で博士号を取得し帰国、1名が現在本大学の大学院博士後期課程に在籍、さらに昨年さくらサイエンスプランで来日した学生1名が、本大学の大学院博士前期課程に在籍しています。

2.プログラムの成果

 1日目は飛田国人准教授(人間社会学研究科・人文科学系)の引率のもと、奈良県にある奈良国立博物館や東大寺にて、日本の文化財とその保存技術を見学しました。


興福寺にて

 2日目は遠藤崇浩准教授(人間社会学研究科・人文科学系)から日本の水管理政策に関する講義を受けました。午後には本学の植物工場研究センターを訪問し、完全人工光型の栽培方法などを学びました。また、黒田桂菜助教(工学研究科・航空宇宙海洋系)からメタンガス発酵に関する講義・設備解説を受けるとともに、ベトナムから来ている留学生からは研究内容についての説明も受けました。

 3日目は福田珠己教授(人間社会学研究科・人文科学系)から京都府にて京都タワーや京都駅などにまつわる景観問題を学びました。また、歴史と文化が残る地が、観光地としての景観形成や施策をいかに行っていくべきかということを、実際にまちを歩きながら学びました。

 4日目は私(工学研究科・物質化学系)からのバイオディーゼル燃料に関する講義を受けた後、サラダオイルからバイオディーゼル燃料の合成実験を行いました。合成した燃料を用いて発電機を動かし、副生成物のグリセリンで燃料電池も使って扇風機を動かしました。

 5日目は科学に関する興味をより高めるために、大阪市立科学館の見学を行いました。

 6日目は興津健二准教授(工学研究科・物質化学系)による水処理に関する実験と興津研究室の見学を行いました。また、私の研究室と前田泰昭研究室(地域連携研究機構)の見学も行い、各研究室の学生から研究設備と研究内容の解説を受けました。どの研究室にも留学生がおり、本学への留学についての話を聞くこともできました。


水処理実験の様子

 7日目は宮脇幸生教授(人間社会学研究科・人文科学系)とともに国立民族学博物館へ行き、各国、特に東南アジア諸国の民族と環境との関わり方について学びました。環境技術だけを発達させるのではなく、歴史や文化的背景を踏まえた発展を目指すことについて、民俗学の視点から考えました。

 8日目は私と飛田准教授の引率のもと、環境分析や環境インフラの維持管理を専門とする滋賀県の株式会社日吉を訪問しました。株式会社日吉はベトナムでもプロジェクトを実施しており、研修生は最先端の分析技術・設備を興味深く見学しました。

 帰国前日の9日目は学長からの修了証授与を行いました。また、研修生は総領事から激励を賜りました。研修生はベトナム伝統のアオザイとスーツに身をつつみ、研修の総括にふさわしい場となりました。


修了証授与式

 招聘者の帰国後は、本学から学部生9名が海外インターンシップの一環として、12日間科学大学を訪れるなど、受け入れ機関の国際交流の活性化にも効果がありました。


ベトナムのホーチミンにて

活動報告