2015年度 活動レポート 第213号:首都大学東京分子応用化学域

2015年度活動レポート(一般公募コース)第213号

環境・エネルギーをテーマとしたインドネシアとの国際交流
首都大学東京分子応用化学域からの報告

首都大学東京分子応用化学域はさくらサイエンスプログラムの支援を得て、インドネシア共和国のパジャジャラン大学化学科大学生10名と引率教員2名の計12名を招へいし、2月29日から3月9日まで、環境・エネルギーをテーマとした国際技術交流プログラムを実施しました。

環境先進都市をめざす東京都のシンクタンク機能を担っている本学都市環境科学研究科において、分子応用化学域はエネルギー・環境分野に貢献できる「化学」を指向しています。本プログラムでは、優秀なインドネシア人学生を当学域に招へいし、研究室での体験実習や本学教員および学生との交流を通じて、関連先端技術の理解と関心を高めることを目的としました。

一行は2月29日の昼頃、本学の南大沢キャンパスに到着しました。疲れた様子もなく本プログラムのガイダンスを受け、本学上野学長への表敬訪問をおこないました。

翌日から、本格的にプログラムが始まり、午前中にエネルギーに関する特別講義「Energy derived from fossil fuel, renewable energy, and H2 energy」を受講しました。講義終了後、多くの招へい学生から質問があり、エネルギー化学に関する高い興味が感じられました。

午後は施設見学として本学の化学系関連装置(核磁気共鳴装置、 X線光電子分光装置、透過型電子顕微鏡など)を紹介しました。印象深いことに、学生実験室に設置されている分析装置を見学した際に、その設備の充実ぶりに驚いたようで、実験内容にも興味が尽きないようでした。おりしも当日、キャンパス内で外国人留学生向けに開催されていた「Hina Doll Festival(ひなまつり)」に参加することもできました。招へい者にとって充実した一日になったようです。

上野学長への表敬訪問
上野学長への表敬訪問
エネルギーに関する特別講義
エネルギーに関する特別講義

施設見学(触媒反応装置)
施設見学(触媒反応装置)
核磁気共鳴装置を用いた構造解析
核磁気共鳴装置を用いた構造解析

3月2日、3日の2日間にわたり、招へい学生が2名ずつに分かれ各研究室での体験実習{ (1) 環境変化や化学刺激で応答する色素の合成; (2) 二酸化炭素(CO2)分離膜の作製、及び燃料電池用電解質膜に有用なナノファイバーの調製; (3) 大気汚染物質のガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器(GC-FID)による分析; (4) コイン型リチウムイオン電池や正極塗工電極の作製と評価; (5) 機能性ソフトマテリアルとして有用な有機ゲルの調製}に臨みました。データの整理を含めて2日間での作業はハードでありましたが、高度な分析機器を身近に使いながら実験を進めるという貴重な経験ができたようです。

排ガスのサンプリング
排ガスのサンプリング

3月4日は、学外に出て青海にある日本科学未来館とパナソニックセンターを見学しました。日本科学未来館では、常設展示の英語インストラクターによる体験(インターネット物理モデル)と体験コーナー(アナグラのうた、メディアラボ)が招へい者にとって好評でした。

折り返し点を過ぎた3月5日の午前中、分子応用化学域学生および教員との交流会「International Exchange Meeting on Applied Chemistry with Indonesian Students」を開催しました。各研究室から話題を募り、合計17件のポスター発表がありました。土曜日の午前中での開催とあって、人が集まるかやや心配されましたが、発表者以外にも、学生及び教員の参加があり、大変盛況な交流会となりました。本学学生と招へい学生との間でメールアドレス・LINEアカウント交換も頻繁におこなわれていたようで、今風の交流を思わせるものでした。

日本科学未来館にて
日本科学未来館にて
分子応用化学域学生および教員との交流会
分子応用化学域学生および教員との交流会

3月6日はプログラム期間中の唯一の日曜日で、東京都内の文化施設(江戸東京博物館)を見学しました。江戸東京博物館では、江戸時代から近代日本に至る東京の歴史や文化が展示されています。日本独自の文化が江戸時代に多く生まれたことや明治時代から現在に至る経済成長の背景を、興味を持って学んでいました。

江戸東京博物館にて
江戸東京博物館にて

3月7日の午前中、都市環境科学研究科長へ表敬訪問した後、環境に関する特別講義「Environmental analysis and understanding things」を受講しました。地球温暖化の発生要因、温暖化のメカニズム、温暖化による種々の影響とその対策について論説され、科学的な判断の根拠となる分析科学を勉強しました。講義の受講態度は大変すばらしく、講義中に配布した質問票にも真面目に書いていたとのことです。

午後からは、国際交流会館で「The 2nd International Forum on Applied Chemistry」が開催されました。これは、分子応用化学域が主催する国際討論会で、第一線級研究者の講演で組織されます。今回は、本学域若手教員3名および外部講演者として東大生研から石井和之先生を招待し、分子・ナノレベルの最先端化学の話題を講演いただきました。招へい者のみならず、学内から多くの教員や学生が参加し、盛会となりました。招へい学生からの質問に対して講演者が丁寧に答えておられたことが印象的でした。

国際討論会「The 2nd International Forum on Applied Chemistry」
国際討論会「The 2nd International Forum on Applied Chemistry」

3月8日は招へい者にとって南大沢キャンパスで活動する最終日となりました。10時30分から国際交流会館で招へい学生による報告会を開催しました。1人あたり10分の口頭発表と5分の質疑応答を設定し、本プログラム中で行った体験実習の結果報告をおこなってもらいました。わずか2日間の実習で、しかも成果をまとめる時間が短かったのにもかかわらず、その研究背景を組み入れた見事なPowerPointファイルを作りあげ、レベルの高い発表が英語でおこなわれたことに大いに感心しました。さらに、活発な質疑応答があったことを付記したいと思います。

招へい学生による報告会
招へい学生による報告会

その後、修了証と記念バッチがプログラム参加者に渡され、また、招へい者を代表して引率教員から感謝の意を込めて記念品(盾、Wayang)が当学域に贈呈されました。Wayangは伝統的なインドネシア人形で、これらは分子応用化学コース会議室で飾られています。

送別会は、分子応用化学域の教員・学生が参加し、なごやかな雰囲気のなかで首都大学東京を離れなければならないことを残念がる招へい学生の姿が印象的でした。そして招へい者らのサプライズとして、パジャジャラン大学の賛歌「UNPAD Hymn」、スマトラ島のバタク族に伝わる「Sik Sik Sibatumanikam」、スンダ族の別れの歌「Pileuleuyan」が披露され、本プログラム最後の交流となりました。

今回のプログラムは、本学を含む日本の科学を知ってもらおうと企画しましたが、我々の意図をはるかに超えて彼らの行動力や理解力に驚かされました。それらは本学学生にも刺激となりました。草の根的な国際交流の大切さを実感するとともに、折角築いた相互理解を次に展開させていきたいと考えています。最後に、貴重な機会をご提供いただきましたJST「さくらサイエンスプログラム」関係者および本学関係者各位に感謝申し上げます。以下にアンケートで寄せられたコメントの一部(Fitri Lastiyantiさん)を紹介します。

I'm so impressed with the exchange program because I got many knowledge and experience during my stay in Japan. I found many high technology facilities and I used it. This exchange program motivated me to develop my ability to produce high technology.