2015年度 活動レポート 第222号:大阪大学理学研究科

2015年度活動レポート(一般公募コース)第222号

3カ国の学生が交流しながら、日本の先端技術を共有
大阪大学理学研究科からの報告

大阪大学理学研究科

3月6日から12日にかけて、韓国の漢陽大学と台湾の国立清華大学から大学院生9名、学部生1名と引率教員1名(Linyi Chen教授)をさくらサイエンスプログラムで大阪大学に招へいしました。

漢陽大学は工学部を中心に、韓国の近代化に貢献した大手企業の設立者を多く輩出した歴史をもつ名門私立大学です。清華大学は台湾におけるトップ国立大学であり、すでに阪大理学部生物科学専攻と10年近くの研究交流実績を持っています。

今回は漢陽大学の材料科学工学部から3名の大学院生と1名の学部生、清華大学の生物および化学専攻の6名の大学院生を招へいしました。さらに、清華大学の大学院生1名は自費での参加となり、このことから明らかなように、全体として本プログラムへの参加希望者は多くいました。

今回のプログラムでは普段は接する機会が少ない他の専攻分野の研究を知り、それらの基盤研究が社会にどのようにつながるのかを企業見学を通じて身につけることを目的としました。また、韓国、台湾、日本の極東アジアの中心になる国の学生たちが集まる場を提供し、お互いの理解を高めることも期待しました。

3月7日は大阪大学大学院理学研究科および大阪大学総合博物館の見学をしました。まず、プログラム全体の内容を説明して、続いて坂口助教より理学研究科の紹介と松野教授により生物科学専攻の紹介が行われました。また、韓国と台湾の学生同士の自己紹介を行い、お互い親密感を高めました。

活動の様子1 理学研究科の見学
活動の様子2
オリエンテーションおよび理学研究科の紹介
活動の様子3
大阪学学術博物館にて

午後からは高分子・化学・生物科学専攻の6つの研究室見学を行い、それぞれの研究内容と実験設備の説明を受けました。研究分野が違うにもかかわらず、学生たちは興味深くたくさん質問し、説明を担当する先生たちも熱心に応答するなど活発に交流が進んだことが印象深かったです。

続いて、大阪大学総合学術博物館の見学を行いました。大阪大学が所有する学術的及び歴史的に重要な展示品を見学し、博物館の教員(宮久保准教授)の説明を熱心に聞きました。学生の間は自分らの関心分野に関してお互いに意見交換なども行っていました。

活動の様子4 理学研究科の研究室訪問

3月8日は大阪大学産業科学研究所、蛋白質研究所を見学しました。午前中は産研の化学分野の研究室(小林研、関野研)と生物関連の研究室(西野研)で、最先端の研究の紹介とディスカッション、ならびに研究室の見学を行いました。

韓国と台湾からの学生は分野が違う研究室でも積極的に質問をしていました。見学の間に日本人の学生とも仲よくなっていく様子が伺えました。産研での見学後は小林研の教員と学生さんとともに昼食会(小林教授の好意による)を開き交流が更に深まりました。

活動の様子5
産業科学研究所の見学
活動の様子6
蛋白質研究所にて

午後には蛋白研を見学しました。中村所長よる研究所の紹介と中川副所長による講演の後、篠原副所長の案内で蛋白研が所有する最先端の実験装置ならびに研究室の見学を行いました。参加者の所属する大学では所有していない装置を見て、阪大で研究するにはどうすればいいか、というようなストレートな質問もするなど、興味は尽きないようでした。

3日目は漢陽大学と清華大学の学生11名と阪大の学生12名による、研究交流ワークショップを開催しました。今回は阪大側からは、分野間の垣根が低い化学系と生物系の研究を行っている学生を選んだので、専門以外の分野であっても質問が多く飛び出し、活発な議論が行われました。学生の発表に加え、Linyi Chen教授による清華大学の紹介と川崎恵教授により漢陽大学の紹介が行われました。阪大の教員ならびに学生が、両大学の特徴、研究分野および研究環境を知る良い機会となりました。交流を深めるには互いを知ることがとても大切だと思われました。

活動の様子7
学生交流ワークショップ
活動の様子8
学生交流ワークショップにて

ワークショップの終了後、懇親会を開催しました。ワークショップに参加した3大学の全員が懇親会に参加して、食事と会話を楽しみました。隣接する国でありながらも、3つの国の学生が集まる機会は滅多にないので、学生たちはこの懇親会で更に交流を深めたようです。

3月10日は島津製作所のご厚意で工場、展示室、博物館を見学させていただきました。島津製作所は分析機器を作る日本を代表する企業で、韓国と台湾にも支社をもち、アジアを中心に積極的に事業展開しています。学生は研究室で使われる器械の製作過程、医療・精密器械分野の最先端の機材について熱心に説明を聴いていました。精密機器製作の工程を段階的にモニタリングしながら管理されるシステムに興味をもち、自分たちの研究室に導入できるかどうかなど面白い質問がたくさん出ました。

活動の様子9 島津製作所の見学

11日は、大阪大学が所有する適塾記念館を見学しました。適塾は大阪大学の原点であるという説明を聞いた後に、実際の建物や当時の資料を見ましたが、今回は現在テスト中のヘッドフォンによる多国語案内システムを利用することとなりました。韓国と台湾の学生は英・中・韓・日の言語の中で1つ選んで真面目に説明を聴きながら見学しました。

午後はサントリー研究センターを見学しました。サントリーは大阪で設立した大手企業の1つですが、サントリー研究センターでは、サントリーの有名なビール、ウィスキ-の発酵原理、青いバラをつくるメカニズムについて3人の研究者によるセミナーが行われました。学生たちはたくさんの質問をし、セミナーでは熱い議論が続きました。大学とは異なる研究環境や新築の未来感溢れる研究所を見学しながら、どうしたらサントリーで働くことができるかを真面目に質問する学生も多くいました。

見学の後の空き時間を利用して、韓国と台湾の学生たちは一緒に大阪市内の観光、難波や梅田でショッピング、京都の観光を楽しんだようです。3カ国の学生が、日々親しくなり、学生らは協力しながら楽しんでいました。一週間があっという間に過ぎてしまったと、満足げに感想を述べた学生もいたのが印象深かったです。

活動の様子10 サントリーグローバルイノベーションセンターにて

引率教員からもこのようなプログラムがあることは非常にありがたいと何回もコメントされました。さくらサイエンスプログラムは、日本の大学、企業・地域文化のことを海外の若い学生に伝えそして体験させる格好のプログラムです。本プログラムを企画され、ご支援いただいたJSTの方々に厚くお礼を申し上げます。