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活動報告(公募計画コース) 第191号

実験経済学の学習と国際会議を実施
京都産業大学の小田秀典教授からの報告

京都産業大学

 昨年12月にさくらサイエンスプランを実施した。これは実験経済学の体験的学習を中心とするもので、中国、台湾、マレーシアの4大学から教員、院生、学生あわせて11名を招へいした。

 10日間の滞在期間中に、授業、実験、企業見学、国際シンポジウムを実施した。


国際シンポジウムが開催された

 京都産業大学経済実験室は、2001年度に私立大学学術研究高度化推進事業によって建設され、実験経済学の研究と教育の拠点として活動している。

 実験室建設当初は欧米の研究者との交流が主であったが、2010年代に入ってからはアジア太平洋圏の研究機関との関連が深くなり、海外実験の実施や研究者の交流が進んでいる。

 これらの中から4大学を選んでさくらサイエンスプランに応募した。さらに学内資金で国際会議のための資金が与えられたため、実験経済学の学習を国際会議に関連づけ、参加者が知識と問題意識を共有して国際会議に臨めるようにした。

 実験経済学の学習として、学部上級生から博士前期課程院生を主な対象にする連続授業を(博士後期課程院生や教員には実験による経済学教育の工夫として有意義になるように配慮しつつ)私が担当するとともに、京都産業大学経済実験室で共同研究の実績のある内外の研究者4名に各々の専門分野の講義(実験経済学、動学ゲームの計算機実験、サービス工学)を依頼した。


授業風景

経済学実験室

 いずれの講義でも活発な質疑応答があった。さらに以上の総合として、経済実験室で、飯田善郎(京都産業大学経済学部教授)・周艶(京都産業大学経済学部専任講師)による経済実験の実習を行った。

 講義はすべて英語で行われたが、中国・台湾からの参加者はもちろんマレーシアからの参加者も中国語を解したので、講義担当者だけが中国語を話せないために英語での授業となった。

 講義の1つを担当するためにメルボルンから来たフェルトヴィッチ教授が「教授だけが中国語を話せない研究室はいま世界中にたくさんある」と言ったが、確かに私の研究室も演習も(みな日本語に堪能なので意識しなかったが)私以外は中国語を話せる環境になるときが多い。
 彼らがどんどん活躍していくにつれ、教授も中国語を話す研究室がどんどん増えるだろう。

 国際会議の主題は「経済学と哲学における意識と意図」であり、基調講演と分科会が2日間にわたり組織された。実験経済学と実験哲学の総合は、5年前に両分野を結びつけるための国際会議を世界で最初に組織して以来、京都産業大学経済実験室の研究を特徴づけるものの一つである。

 神経科学研究者からは意識と意図がどのように生まれるかなど、哲学研究者からは他者の意識と意図をどのように推測するかなど、経済学研究者からは他者の意識と意図の推測に基づいて主体はどのように行動を変えるかなどについての講演と報告があり、分野を超えて討論が行われた。

 さくらサイエンスプラン参加者も、以上に関連する講義と実験を教室と実験室で経験していたこともあり、議論に参加した(会議参加者は、さくらサイエンス参加者を含めて海外から27名、国内から43名の合計70名)。

 アジア諸国の大学の充実は急速で、中堅大学も質量両面で進歩が早い。研究と教育の両面で我々が学ぶことは多い。とりわけアジアの大学が急速な拡大のなかで優秀で多様な教員を確保することに腐心していることが感じられ、日本の大学も人材の送り出しと受け入れの両面で努力が必要なことを痛感した。
 博士論文の指導と審査への相互参加など今回、話しあわれたことを実現させていきたい。

 複数の大学から参加者を募って講義・実験・国際会議を関連づける計画の準備と実施にかかる労力は大きかったと思う。実施計画を半年余で実現させられたのは、国際交流プロジェクトの経験が京都産業大学の個人にも組織にも蓄積してきたことと、京都産業大学経済実験室で育った諸君の協力が大きかった。科学技術振興機構および京都産業大学の事務組織、現在および過去の同僚と学生院生諸君に感謝する。

 以上の協力のお陰で今回のさくらサイエンスプランは所期の成果を上げたと思う。京都産業大学の院生諸君は、講義や国際会議に参加するなかで各々の研究課題を決めたり発展させたりできた。海外からの参加者も、各々の研究や教育に有益な経験をしたと思う。


さくらサイエンスプランに参加した学生たちとの記念撮影

 多忙な教員が国際交流事業のためだけに労力を割くのは難しいかもしれないが、教育と研究に結びつけて実施すれば、さくらサイエンスプランは教員自身にとってもよい経験になると思う。私自身も新たな研究課題について考えるとともに新たな教材開発ができた。
 受動的に事業や行事に追われては教育も研究も失われるが、適切な研究教育環境を維持しつつ、国際交流のための活動を継続したい。

活動報告