2015年度 活動レポート 第130号:大阪府立大学工業高専

2015年度活動レポート(一般公募コース)第130号

次世代自動車開発についてタイ・泰日工業大学の学生と共に学ぶ
大阪府立大学工業高等専門学校からの報告

大阪府立大学工業高専

さくらサイエンスプログラムにより、2015年9月1日~9月6日の6日間、学術交流協定校である泰日工業大学の学部生8名(自動車工学科4名,生産工学科4名)と引率教員2名が来日しました。

参加者は泰日工業大学で電気自動車プロジェクトや燃料電池研究に関わっている学生たちであることから,日本における電気自動車の現状と燃料電池に関する研究について見学や実習を通して理解を深める活動を行いました。

初日の9月1日は,本校で今回のプログラムのガイダンスを行った後、大阪府立大学の次世代電動車両研究開発センターへ移動し,大学と大阪の中小企業とで共同開発している電気自動車についての説明を受けました。

ガイダンスでの風景

翌日の午前中には,その開発現場である匠塾とEVジャパンを訪れて実際の開発車両である観光地用電気自動車や電動台車、機械工作における匠の技などを見学しました。参加学生は身近な自動車を見て、自分たちも作れる可能性があることを実感したとともに,品質向上には技術者の匠の技が欠かせないことも合わせて理解したようです。

9月2日午後からは,ダイハツ自動車工業株式会社の池田本社工場を訪れ、これまでのダイハツの歴史と自動車開発のコンセプトの変遷と現在開発している電気自動車などを見学した後,軽自動車の組み立て工場の見学を行いました。参加学生にとって,実際の自動車工場を見学するのは初めてであり,組み立て用ロボットや自動搬送システム,生産管理の現場などを見学できて今後の勉強の役に立ったようです。

ダイハツ自動車工業展示場での風景

3日目となる9月3日は,インテックス大阪で開催された二次電池展に参加し,電気自動車用リチウムイオン電池や停電対策用のNaS電池などを見学すると共に,各電池を作成する際の材料や製造装置などを見学しました。会場の大きさと出展企業の多さに圧倒されながらも,皆、興味津々で多くのブースを訪れ,資料などを収集していました。

4日目の午前中は、大阪府立大学工業高等専門学校の学生と共に産業技術総合研究所関西センターを訪れ,リチウムイオン電池の研究室,ナノサイズの観測が可能な電子顕微鏡,燃料電池の研究室およびダイヤモンドデバイス研究室を見学しました.自動車工学科の学生はリチウムイオン電池に,燃料電池研究室の学生は,燃料電池の研究施設や研究内容に深く興味を示しており,質疑応答が活発に行われました。

同日午後には,尼崎市にある岩谷産業株式会社中央研究所を訪れ,同研究所で行われている研究内容と水素ステーションを見学しました。水素ステーションの見学では,株式会社フジキンのご厚意で燃料電池自動車ミライを持ってきてくださり,実際に水素を充填する状況を見学することができた。これには泰日工業大学の学生だけでなく本校学生も大いに感動していました。

岩谷産業株式会社中央研究所における水素ステーションの見学

9月5日は大阪府立大学工業高等専門学校にて講演会,燃料電池自動車の試乗および実習を行いました。午前は株式会社フジキンにて、水素ステーションに係るバルブシステムの講演を聴講した後,実際のバルブシステムに触りながら理解を深めました。その後,燃料電池自動車ミライの試乗を行いましたが、タイの学生および本校学生も燃料電池自動車に乗ることは初めての経験で,電気自動車特有の高トルクと静粛性に感動していました。

フジキンによるバルブシステムの講習

午後からは,本校メカトロニクスコースの葭谷教授によるライントレースを用いた自動走行実習を行いました。C言語未習得者でもプログラミング可能な「タイルプログラミング」を用いてライントレース車両へのプログラムを作成し,実際にライントレース車両へ搭載し,規定コースを最短で走行できるようにコンテスト形式で実習を進めました。

ライントレースを用いた自動走行実習の風景

3時間という短時間でしたが、全員がライントレースプログラム作成に成功して、特に自動車工学科の学生4名は非常に興味をもって実習に取り組んでいました。最後にライントレースで使用したマイコンを用いて「生活に役立つアイデア製品の提案」を翌日の午前中に2人一組でプレゼン発表することを課題として,この日は終了しました。

ライントレースで使用したマイコンを用いた「生活に役立つアイデア製品の提案」を発表

最終日にも同様に、大阪府立大学工業高等専門学校にて実習を行いました。午前中前半には,前日の「生活に役立つアイデア製品の提案」について2人一組で発表を行った。時間が無かったにも関わらず,前夜遅くまで課題に取り組んだとのことで,斬新なアイデアが出ていました。

午前中後半には,大阪府立大学工業高等専門学校機械システムコースエネルギー研究室にて,燃料電池,水素製造技術および省エネルギー技術に関する研究の説明と施設見学を行いました。参加者のうち引率教員2名と学生4名が燃料電池研究を行っているため,興味深く見学し,多くの質問をしていました。また,他の4名の学生も電気自動車の開発を行っていることから,電池性能の評価方法などについて質問が出て,活気のある見学となりました。

エネルギー研究室の見学風景

9月6日午後からは,同研究室にて固体高分子形燃料電池(PEFC)用の膜電極接合体(MEA)の作成実習を,同研究室の学生6名と、タイの学生2人と本校学生1名で班を構成して行いました。タイではシミュレーション主体の研究で,引率教員も含めて実際のMEA(3cm×3cm)を作成することは初めてであったため,非常に繊細な作成を求められることや実験装置の取り扱いなど,驚きながらも興味深く実習を行っていました。

燃料電池用膜電極接合体(MEA)の作成実習

作成したMEAを燃料電池として組み上げた後,同研究室が保有する電池評価装置を使って,それぞれの班が作成した燃料電池の性能評価を行い,どの班の燃料電池が最も性能が良かったか,何故その違いが出たのかなどを議論して今回の実習を修了しました。

燃料電池の実習が終了した後,本校校長室にて修了式を行い,参加者が今回のプランに参加した感想などを校長に伝え,今後の連携に向けて協議するという話で終わりました。

参加者からは帰国後、今回、素晴らしい機会が与えられたことに対する感謝のメールが届きました。全参加者から非常に有意義であったという感想を得ることができ,このような機会を与えて下さった科学技術振興機構,その他協力スタッフに心からお礼を申し上げます。

全てのプログラムが終了して府大高専学生との記念撮影