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活動報告(公募計画コース) 第42号

学術情報基盤環境について学ぶため、東南アジアから研究者などが来日

京都大学東南アジア研究所

 京都大学東南アジア研究所では、さくらサイエンスプランを活用し、「東南アジア地域における学術情報基盤環境の構築・整備支援」をテーマとして、東南アジア諸国の図書館員・図書館情報学研究者を招聘し、当研究所の学術情報基盤構築スキームを研修するとともに、国内連携機関における関連テーマに係る視察・実習を行っています。


京都大学東南アジア研究所に到着

 東南アジア研究所は80年代半ばから東南アジア諸国の図書館員を招聘していて、また研究所内図書室の見学者・利用者も多い。このような東南アジア諸国図書館との恒常的な交流を介して、さらなる学術情報の交流を進めていくためには、日本と東南アジア諸国との学術情報基盤環境の相違を双方で基本認識として共有する必要があるというのが本プロジェクトの発端になっています。

 日本の学術情報基盤は、国会図書館(以下NDL)と国立情報学研究所(以下NII)の2大国立機関が運営する総合目録データベース(以下、DB)に大学・公立図書館が縦横にリンクし、緊密に関係する2大DB上に各機関から時々刻々と情報がアップデートされています。マテリアルの保存・修復についても、最新と伝統の技術を図書館・博物館等と関連民間企業が担っています。

 本プロジェクトでは、この大小規模の情報インフラ、最新・伝統の保存・修復技術、官民連携の3要素がつくりあげる学術情報基盤を総合的に理解し、最先端から末端の現場まで体験してもらうプログラムを構成しています。

 招聘者の平均年齢は30歳代と各々の職場における業務に習熟し、かつステップアップを狙う世代を対象とし、交流活動自体にOJT研修の意味をもたせています。招聘側・受入側とも複数機関が参加するため、研修内容も招聘側の希望を採り入れた多様な構成が可能となっています。また、図書館という女性が多く活躍する場がメインなので、招聘側・受入側とも女性の専門職・研究職が多く参加し、プログラム期間中のみならず、終了後についても参加機関間の情報交換が活発に行われています。

 今年度は2月のベトナムに引き続き、6月にタイのタマサート大学・王立シルパコーン大学・国立開発行政学院(NIDA)の3機関から、図書館員4名・図書館情報学研究者6名の全10名を招聘しました。

 研修日程前半(6月15日~18日)は、関西の京都大学と国立国会図書館関西館で行われました。京都大学では、東南アジア研究所内図書室・情報処理室・地図室の各室で研修を行いました。図書室ではタイ語資料特別コレクション等所蔵資料やマイクロ保管庫等を見学し、京都大学OPACシステムKULINE機能からNII・NDL検索インターフェースへのリンク状況や京大ローカル-NII総合目録DBが繋がっている図書館業務システムを研修しました。

 情報処理室では、構築中の東南アジア逐次刊行物データベーススキームを研修し、地図室では、所蔵東南アジア地域地図資料とその検索システム概要を研修しました。タイ側からは「東南アジア逐次刊行物データベース」というビッグデータではない、ニッチでかつ多言語対応DB開発に対する関心が寄せられました。


東南アジア研究所でiPadを利用し「東南アジア逐次刊行物データベース」構築スキーム研修

国立情報学研究所でNACSIS-CAT総合目録データベースほか活動内容を研修


東南アジア研究所地図室にて所蔵タイ古地図や地図保管設備を視察

 附属図書館では、リポジトリKURENAIの構築・運営状況や教育施設としての図書館を位置づけるラーニングコモンズを見学した。招聘者は、大学・研究所という組織の中で、大小規模の図書館・室が有機体として縦横に連携することによって成立する図書館の在り方について自館と比較し、リポジトリ運用の際の著作権取り扱いについての日・タイ比較など、活発な質疑応答が交わされました。続く国立国会図書館関西館では、自走書庫・障害者向け設備や、アジア情報課の収書活動とその所蔵資料を見学しました。


京都大学附属図書館でラーニング・コモンズ見学

国立国会図書館アジア情報課による館内案内で、書庫設備を視察

 日程後半(6月19日~24日)は、東京・千葉のNII・東京大学・JETRO-IDE図書館が研修受入先となり、全国規模の学術情報基盤環境、伝統技術を応用した資料保存実習と多様な内容に呼応して、招聘側各機関それぞれの特徴と課題が鮮明になりました。NIIでは、80年代から運営してきたNACSIS-CAT総合目録DB、そしてリポジトリJAIRO・SINETと学術情報基盤に係る活動の歩みと将来構想について研修し、質疑応答ではリポジトリ構築に秀でるNIDA からNIIが参加している北米CLOCKSSのデジタルコンテンツ・アーカイブプロジェクトへのタイ側組織として参加希望が示されました。

 東京大学では、史料編纂所と経済学部資料室で、主に資料保存について実技を伴う研修が行われました。伝統和紙の修復・保存技術をもつ史料編纂所では、2011年タイ大洪水で被災した資料についてどのように修復するかについて、資料保存方針とその技術実演が行われ、タイ王室文書資料を所蔵するシルパコーン大学と水没被災経験をもつタマサート大学図書館から大きな関心が寄せられました。


東京大学史料編纂所で伝統和紙の種類・特徴をレクチャー

 次いで、経済学部資料室では、終日をかけて、資料室スタッフによる中性紙製函技術実習、プリザーベーションテクノロジーズジャパンによる脱酸実習が行われました。実習で使用した材料-中性紙・ブックキーパー剤・pHインジケーターなどの入手方法について質問があり、図書館業務を支える民間業者の技術力に関心が寄せられた。日本国内民間業者の存在については、最終日JETRO-IDE図書館においても再び注目が集まりました。JETRO-IDE図書館では、館内見学するとともに、東南アジア諸語資料の目録作成実務について活発に情報交換が行われ、日本で一般的に行われている民間データエントリー会社への目録業務委託について、アウトソーシングを可能とする図書館業務データベース構築について質問が相次ぎました。


東京大学経済学部資料室で、同室スタッフによる中性紙を使用した製函技術実習

プリザーベーションテクノロジーズジャパンによる脱酸剤をスプレーする資料保存実習

 東南アジア諸国の中でタイは、日本と同じくアメリカ型図書館モデルを構築してきました。しかし、NIIに相当する学術機関連携体制構築や図書館周辺業務を委託できるような高い技術力をもつ民間企業の存在を欠いているため、それぞれの機関が独自に図書館データベースや資料保存の課題を克服する必要があります。今回の訪日で、タイ側から日本との継続的な技術情報交換やデータベース構築連携への期待が寄せられました。


日本貿易振興機構-アジア経済研究所図書館にて、同図書館員と成果報告会終了後の記念写真

活動報告