2014年度 活動レポート 第17号:中国華中科技大学 8名感想文

修了者・教員らからの声 第17号

日本を観て研修して交流した8日間
神戸大に招へいされた華中科技大の8人の学生たちの感想

さくらサイエンスプログラム実施内容について

研修した大学 神戸大学
招へいされた人 華中科技大学の学生8人と教員2人
実施した期間 2014年11月9日から16日
 

学問への取り組みを目覚めさせた日本での研修体験
賈貴(JIA GUI) 博士前期課程3年生

 

1.1日目(2014年11月9日 日曜日)

神戸にある東横インに到着したのは、日本時間で午後8時10分でした。初めての日本は見るもの全てが新鮮でした。
部屋で荷物の整理をした後、ホテルの近くの居酒屋に行きました。日本での初めての食事は、伝統的な日本料理で、寿司、天ぷら、鶏の唐揚げでした。

私たちは簡単に自己紹介をし、研究内容や今後のことについて話し交流を深めました。そして、その店でアルバイトをしている3人の中国人の女性と会話をし、彼女たちは異国の地で勉学に励み夜にアルバイトをしていることを知りました。そのことは、私には大きな衝撃でした。本来、ペンを持つ手に夜には皿を持つ・・・理想と現実との落差を認識したからです。

10時を過ぎると人通りは少なくなり、多くの店が8時には閉店していました。ホテルに戻り、小学生のようにわくわくしながら部屋の中を見て回りました。部屋は狭かったですが、必要なモノは全て揃っていました。
興奮した1日が過ぎ、くたくたに疲れました。月曜日には研究発表があるため少し緊張しながら、寝る前にはひと通り原稿を読み、やっと落ち着き床に就きました。

2.2日目(2014年11月10日 月曜日)

神戸大学は山の中腹にあり、急な山道を登らなければなりません。システム情報学研究科の建物の前に来ると、神戸港が見渡せ、物が整然と運ばれていくのが見えました。
午前中、さくらサイエンスプログラムの開会式がありました。神戸大学システム情報学研究科の先生方が大学の現状を紹介してくれました。

コンピューターサイエンスの第一人者である横川三津夫先生が日本のスーパーコンピューター(K-computer)について説明してくれました。先生は「京」を越える計算ができるコンピューターは物理学にも応用が可能であるとおっしゃられました。K-computerは、中国の「天河二号」やアメリカの「タイタン」に比べると性能上差異があります。

計算速度では「天河二号」に及ばないものの、K-computerは精密な能力を有しています。我々の現在の科学では、地震の発生時期を正確に予測することはできませんが、地震の後の津波の高さを予測することはでき、緊急時に備えることができます。また、地球を死角のない360度で撮影でき、天気を予報することが出来ます。

午後は、中国と日本の学生がそれぞれ研究発表を行いました。内容は広範囲に渡っており、機械学習、画像処理、インテリジェント制御とシミュレーション、支援ロボット等でした。研究発表のあと、それぞれが研究室に配属されましたが、私は厳しいながらも穏やかなある教授に注目していました。

そして、その教授、上原先生の研究分野である機械学習に興味を覚え、どうしても上原先生の研究室に入りたいと思い、その思いが実現しました。上原先生の研究室には中国からの留学生もいて、交流を深めることが出来ました。

3.3日目(2014年11月11日 火曜日)

上原先生の研究室を見学しました。私が選択したのは機械学習の画像分類です。中国では算法に関する制御を学んでいたため、ほぼゼロからのスタートとなりました。
午前中の学習時間は短く、鷹取さんや王君がLinuxの操作やシステム環境について教えてくれました。コンピューターの基礎知識は簡単で、理解しやすかったです。

昼食のあと、神戸大学の図書館や商学部を見て回りました。日本では昼はそれほど休みがなく、1時半から授業が開始され、画像分類の学習を始めました。私は、短期間にコンピューターの画面上で内容を識別しなければならないので、昼食の間は、携帯電話で機械学習の中国語の資料を検索していました。

午後、Pythonの基本の使用法と機械学習ソフトウェアのCaffeの使用方法を学びました。日本の学生が指示を出し、私が操作をしました。分からないところは中国人留学生が翻訳をしてくれて一緒に学びました。
1つの新たな領域に触れ、0から勉強を開始した1日と言えます。

「学問のさびしさに堪へ炭をつぐ -山口誓子」
羅先生は複雑なネットワークについて熱心に研究されています。私はこれまでの2年間の自分の勉強態度を振り返り、十分に取り組んでこなかったことをとても恥ずかしく思いました。

4.4日目(2014年11月12日 水曜日)

京都 - 嵐山
雨中嵐山 - 周恩来1919年4月5日 雨の中 2度、嵐山で遊んだことがある
両岸の青松は、幾株かの桜を挟む
その尽きたところに、1つの山が、高く突き出て見える
流れ出す泉水は、
このように緑にして、石をめぐり
人を映す
激しい雨、濃い霧
一筋の陽光が雲間に射す
見れば見るほどに美しい
この世の森羅万象は、求めるほどにぼんやりとする
ぼんやりとした中に、偶然、一点の光明を見ていると
更に美しく感じられる

周恩来は若い頃、日本に留学をし、嵐山に来たときに「雨中嵐山」を詠みました。この詩には、情景の表現を借りて、中国を奮い立たせるという偉大な抱負が読み込まれています。

5.5日目(2014年11月13日 木曜日)

研究室のみなさんの協力を得て、画像分類を始めました。蝶の画像分類と熊の顔の画像識別を行いました。
研究室では、皆面白い研究をしており、ロボットの組み立てや人の顔の画像追跡をしたりしていました。私は、Linux、Caffe、Pythonを学び、機械学習の基本的な知識を習得しました。
不出来な学生でしたが、辛抱強く教え続けてくれた日本人の学生や留学生の友達に感謝します。

6.6日目(2014年11月14日 金曜日)

午前中は張君の発表があり、午後は自身の1週間にわたる研究内容と体験を発表し、午後は歓送会がありました。去りがたい何とも言えない感覚に襲われました。

私が見た日本という国はきれいでした。でもそれだけでなく、中国人留学生の日常生活についても印象に残りました。彼らは、深夜アルバイトをし、昼勉学に励み、狭い部屋に住み、帰宅後料理をします。心が強くなければ孤独と寂しさに耐えかね、勉強と生活を両立することはできないでしょう。

私は3ヶ月ももたないだろうと思いました。
私は、日本より故郷の中国が好きです。でも、日本は文化を尊重し、環境保護に取り組み、人としての資質が素晴らしい点など素敵な部分が沢山ありました。そして物価が高いとも感じました。比較する基準は様々にあるのだと感じました。

終わりに

日本に滞在中、私は「東京に留学した中国女性」というTV番組を夜、見ました。聞くところによれば、20才で日本に来た羅先生は、日本で30年間も生活しているとのことでした。黒髪が白髪に変わったと先生は笑いながらおっしゃっていました。

私は、1人の中国人が日本の大学教授の道を選択する事に感動を覚えると共に、中国のロボット工学界にとっては多大な損失だと感じました。
最も苦労をしなくてはいけない年齢のときは安寧を選んではいけない。実現しないことを念願し続けることに価値はありません。

しばし、博士号取得について考えました。この先私はどうなるか分かりませんが、今回の交流は未来につながる1つの経験といえます。学生として私たちはさらに努力をし、真理を追究していかなければなりません。ふと、非凡で日本に留学経験のある梁啓超、孫文、周恩来を思い浮かべました。

「少年中国説」 -梁啓超

今日の責任は他人にはない。全て我々少年にある。少年の叡智は国の叡智である。
少年の財産は国の財産である。少年が強ければ国も強く、少年が独立すれば国も独立する。少年が自由なら、国も自由である。
少年が進歩すれば国も進歩する。少年がヨーロッパに勝てば国も勝つ。少年が地球のリーダーになれば国もなる。日が昇り、道が照らされる。龍が潜り、麒麟が飛び立ち、虎が吠え、獣たちが震撼する。天は蒼く染まり、地は黄色に覆われる。前途は海に似て、先は長い。美しきかな、我ら少年の中国、天は老いず!壮健なれ我ら中国少年、国は無限なり!

 

日本人の仕事に対する実直さ見て感動
徐文霞(XU WENXIA) 博士後期課程3年生

 

さくらサイエンスプログラム研修過程全般にわたっての感想を述べさせてもらいます。

1.仕事に対する実直さ

日本人が謹厳実直に仕事に向かう姿勢は有名な話ですが、実際、研修期間中はどこへ行っても、その様子を目の当たりにしました。
例えば、空港の従業員は乗客の荷物を丁寧に慎重に運搬しており、店やスーパーの店員はひたむきに親切に応対していました。

そして、神戸大学の先生方は自身の研究に真摯に取り組んでおられ、学生たちもまた一途に研究に集中していました。さまざまな場面で目にしたこれらの光景から、日本人の仕事に対する実直さを痛感しました。

2.大学の研究体制

日本と中国とでは、大学の研究体制に相違があると感じました。例えば、日本の場合、研究資金の大半を企業から受け入れており、教授の多くはその研究方針のもと、研究に注力しています。

また学生は、4年になると研究室に入り、研究をやり遂げたあと卒業となるため、卒業年度は人により異なります。教授や学生との交流や意見交換を通じ、日本の教育システムについては学ぶべき価値があると思いました。
国は違っても、日本の長所を見習うことで、ポテンシャルも上がり、中国の科学技術の進歩にもつながると思います。

3.留学生の日本での生活

日本の大学では多くの中国からの留学生が学んでいました。留学生の話から、彼らが先生方から温かく迎えられていることがわかりました。
残念ながら、日本の学生はどちらかと言うとおとなしく、英語でのスピーキングがあまり得意ではないため、コミュニケーションは思うように図れませんでしたが、中国からの留学生とは親睦を深め、日本での普段の生活の様子も知ることができました。

 

車両機器の最適設計と制御について学ぶ
高兆龍(GAO ZHAOLONG) 博士後期課程2年生

 

私にとって日本は、よく知っているようで実はあまり知らない国でした。日本語は学びましたが、使ったことはありません。日本人の知り合いはいますが、連絡を取り合ったことはありません。日本の文化に興味はありましたが、本当か?と問われると自信はありません。

しかし今回、私は機会に恵まれ、自分自身の目を通して日本を見ることができました。
神戸大学を訪問、システム情報学研究科棟の研究室を見学し、中日双方の学生による研究発表が行われました。

その内容から日本の学生の研究は、リハビリ機器の開発やスマートハウスなど生活者のニーズに応じたサービス関連に特化しているような印象を持ちました。これらの研究は、日本が現在直面している少子高齢化問題に着目したものと言えるでしょう。

夜には、日本の学生が準備してくれた我々の歓迎会のため神戸に向かいましたが、その途中で、そうした社会問題を反映したリハビリや介護支援を提供するケアセンターが目に留まりました。

私たちは自身の興味分野に沿ってそれぞれ異なる研究室に分かれ、私と李双宏君は万象隆先輩が所属する多田研究室に配属されました。
我々は、車両機器の最適設計と制御について学びましたが、この工程自体はそれほど難しくはなく、研究施設もとても使いやすいものでした。
CADなど中国より優れているものもあれば、中国での研究と重複している点も見られ、相互に補完し合いその効率が高められれば一層素晴らしい研究環境が作れると思いました。

周恩来記念詩碑を訪ね、「雨中嵐山」の詩碑に敬愛の念を抱き深く頭を下げ、その場を後にしました。

 

日中の交流が数千年も続いていることを実感
李双宏(LI SHUANGHONG) 博士前期課程3年生

 

日本での学習交流では、大変多くの収穫がありました。まず、空気がきれいだったことです。神戸の空気は大変澄んでおり、山の上からは遠くの景色まで一望に見渡せました。環境対策について学ばなければいけない、そう痛感しました。

神戸大学には中国からの留学生が大変多いということです。研究室によっては半数が中国人というところもあり、これには驚きました。中国では近年、海外留学が盛んで、私が学んだ研究室でも中国人留学生と行動を共にすることが多く、中国人に会わない日は一日もありませんでした。

恐らくこれは、日本が中国人留学生にとって大変魅力的な国であることと、海を隔てた隣国であるだけでなく、生活様式や食文化が比較的似ていることにその要因があると思います。

街中どこを歩いても、言語のことを除けば外国にいるという気がしませんでした。というのも、日中の交流が既に数千年も前から続いていることもあり、街の至るところで中国語の文字を目にし、まるで広州や上海にいるような感覚でした。

また日本人は非常に親切であり、テレビで見る日本人像とは異なるものでした。大学では、常にひとりの日本人学生にサポートしてもらい、楽しく交流を深めることができました。
ある時、京都をバスで移動中、一人の高齢者と出会いました。彼は中国から来たのか?と私に聞いたあと、安倍首相が北京を訪問した時はきまりが悪そうだったね、と話しました。

日本人は政治の動向よりも中国との交流を求めており、中国国内のニュースで見る日本とはかけ離れているように見受けられました。本来、民間での交流は、国籍とか身分にとらわれず行われるものであり、いかなる制約も受けるべきではないと思います。

今回の日中交流を通して、中国の大学の国際化のレベルは高いと言えますが、国際水準に合わせる努力が求められる面はまだまだあると思います。つまり、中国はハード面では既に大きな成果を挙げていますが、ソフト面ではさらにレベルを高めていく必要があるということです。

 

テキストマイニングの基本原理を学ぶ
王丹(WANG DAN) 博士前期課程3年生

 

全行程での体験をひと言で表現するならば、「苦難を克服し立ち上がる」ということでした。まずは、学習面から述べます。

初日の活動は研究発表であり、16名の日本及び中国の学生がそれぞれ自身の研究について説明をしました。学生たちの向学心は、英語のスピーキングの困難さをものともせず、互いの発表に真剣に耳を傾け、興味関心があれば質疑応答を積極的に繰り返すというものでした。

発表内容には、特に優劣はありませんでした。ただ唯一、違いがあるとすれば、日本の学生の方が細部にまでこだわり焦点を当てている点でした。例えば、数値の設定ひとつを取っても、実験や研究の結果で見出しており、この点は我々も見習うべきであると感じました。

自身の興味関心テーマに沿って研修先の研究室を選択し、共同研究を行いました。私は上原先生の研究室に入り、日本の学生、中国からの留学生の3名でテキストマイニングを学習しました。

私の研究分野は自動計画であり、データマイニングについてはあまり知識はありませんでしたが、日本人学生の川原さんにテキストマイニングの基本原理を教わり、Apache storm(リアルタイム分散処理システム)により優位性を導き出すことができました。

さらに、私たちは、データマイニングの緊急対応システムへの応用について意見交換をしました。緊急対応は私の研究のバックボーンであり、加えて、まさに今、知識の構造化における課題に直面していたため、皆と意見を交わす中で、データマイニングと機械学習を統合することで知識構造の自動生成が可能になることを見出すことができました。

神戸の大地震について印象的だったのは、復興事業を16の分野に分割し推進してきたことです。それは、全体を取り纏める事業とは別に、法律、経済、行政、消防、生活、社会福祉、教育、地震学、医学、土木工学、生産・物流、運送港湾、情報通信、芸術文化、文芸の分野でした。
危機管理は複雑なシステムであり、社会、経済、日々の生活面などさまざまな領域に及ぶため、システム工学と連携し研究を進める必要があると感じました。

私たちは、自由時間に近くのショッピングモールに出かけました。神戸という街は道幅が狭く、それ程広くはない商店が並んでいます。しかし、環境を考慮した巧みな設計がなされていました。街中は清潔でゴミもきちんと分別されており、人で混み合っていた割には静かで快適な印象でした。日本人は控えめな人が多いですが、見知らぬ人にも挨拶をし礼儀正しく、とても謙虚な国民だと思いました。

日本人の多くはそれほど政治には関心がないように見えましたが、毎日を整然と営み暮らしており、環境保護に取り組み、公共の場では秩序を保ち周囲に迷惑をかけないようにしていました。

中国は、いくつかの分野では世界の科学の最先端をいっていますが、まだまだ不十分であると思います。新たな世代の後継者として日々努力を重ね、中国国内に環境保護や健康に対する意識を高めていきたいと思いました。

 

認識アルゴリズムと追跡の具体的な流れを学ぶ
呉正正(WU ZHENGZHENG) 博士前期課程2年生

 

神戸大学の先生方や学生の皆さんの協力のもと、今回の研修は大変充実したものとなりました。初日は、学生たちによる研究発表が中心に行われ、どれも入念に準備がなされた発表でした。

積極的に質問が飛び交う自由闊達な雰囲気の中で行われ、発表者の解説で、研究内容への理解を深めることができました。とりわけ、自身の研究分野に関連する課題については啓発されることも多く、これまでの足らざる部分を補うことができました。お互いに初対面ながら、打ち解けるまでに多くの時間は必要なく、友情を育むことができました。

研究室での研修が始まり、当該交流のメインとなるプログラムです。私は、表情を認識し追跡する研究を進めている学生をパートナーに選びました。彼より研究課題の説明を受け、使用しているアルゴリズム、研究成果、参考文献などを教わりました。

この実践的な経験を踏まえ、私は研究室で取り組んでいる研究の内容を理解するとともに、大変大きな収穫を享受することができました。
研究室の研修では、認識アルゴリズムと追跡の具体的な流れを学ぶことが出来ました。そして学習成果を発表しました。皆、学ぶことも多く収穫があったようでした。

神戸の海洋博物館、震災記念館を見学しました。ここでは、日中友好に至る経緯、日本の急速な経済成長や最先端の科学技術などを目の当たりにし、日本の文化にも接することができました。

特に、製造業の発展には目まぐるしいものがあり、そのスピードには驚かされました。そして、震災記念館と神戸大学の地震資料室では、日本の地震についての認識を新たにしました。震災後、神戸は地震への備えと再建に取り組み様々な経緯を経て短期間で経済を復興させてきました。つまり、震災を一つの好機ととらえていたのです。私も学習に専念し、ますます自己を高めていきたいと思いました。

 

2種類の混合信号の分解を完成させる
叶夢妮(YE MENGNI) 博士前期課程3年生

 

神戸大学百年記念館では、今回のプランの主催者である羅先生が話をしてくださいました。記念館からは山や海を一望に見渡すことができ、歩くたびに景色も変わるそうです。大学は学生が学内の研究室で勉学に励むだけでなく、学外ひいては世界にまで目を向けるよう、そして社会や世界の変化を見つめ人類に貢献できるよう切望しているとのことでした。

羅先生のお話を聞き、眼前に広がる神戸港や絶え間なく行き交う電車を見て、ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」のツァラトゥストラが山林で散歩し、瞑想し、悟りを開いた場面を思い出しました。羅先生は、人や景色の移り変わりには意思があるとおっしゃっているのだと思いました。

私たちは神戸大学システム情報学研究科の研究室に配属されました。私は栄誉ある有木研究室に入り、助教の中鹿亘さんの指導のもと、NMFアルゴリズムを用いた音声処理の応用研究を行いました。中鹿さんは音声言語のデジタル処理の研究をされており、神戸大学で博士課程を修了しています。

私は、デジタル領域については知識の蓄積がほとんど無いため、午前中に中鹿さんのサポートを受けながらNMFの論文を読み、非負行列因子で各行列分解の物理的意味を中心に、フーリエ変換後に得られる行列信号を理解しようと努めました。

中鹿さんの説明は緻密で明確なものでした。彼の指導やテストデータ及び論文の概略から、午後にはノートにコードを書き、2種類の混合信号の分解を完成させました。中鹿さんは分解後の図を見て、「非常にいいね」とおっしゃってくださり、先生もまた、これ程早く論文や数式を理解し成果をあげるとは思ってもみなかった、旨のことをおっしゃってくださいました。中鹿さんに深く感謝申し上げます。

京都の嵐山を訪ね周恩来の詩碑を拝観しました。長い時間を隔て、今こうして周恩来と同じ場所に立ち同じ景色を見たことは決して忘れる事ができません。
神戸大学研究室での研修では、日本人の学生とここ数日間の体験について語り合いました。日本の学生は比較的自由に研究しており、通常は、修士課程を2年、博士課程を3年で修了することが出来ます。

もっとも羅先生のように才能のある学生は1年で早期修了することもできます。研究生や博士課程修了者は規則正しく効率のよい生活を送っており、朝10時頃に研究室に入り、大学に泊まることなどはなく、午後6時から7時頃には帰宅するそうです。
多くの学生は大学ではリラックスして研究していますが、実は、日本にいる中国からの留学生の場合はそうでもなく、生活費を稼ぐためにアルバイトをしています。

残りの時間で、私たちは神戸海洋博物館、川崎重工業展示センター、阪神大震災跡地、神戸市高齢者看護大型展示場を見学しました。また日本の海洋文化や機械工業発展の歴史、震災後の再建システム構築などについて学び、日本文化をより深く理解しました。

 

ルールに従って行動する現場を見た
張懐東(ZHANG HUAIDONG) 博士前期課程3年生

 

今回の交流を通じて、私は「ルール」という言葉が日本文化で非常に重要な役割を果たしていると感じました。

  • 1.3歩ぐらいでわたれる横断歩道にも信号機があり、人々は厳格に信号を守っていました。たとえ車が来ていないときでも、人は赤信号のときには横断歩道を渡りませんでした。
  • 2.非常に礼儀を重んじていました。ホテルのフロントや、エレベーター内の知らない人、バスの運転手など、皆が公共の場で出会うすべての人に笑顔で挨拶をしていました。
  • 3.街はきれいで、都市の幹線道路にも景勝地にもゴミを見つけることはありませんでした。清潔な国民にただただ頭が下がりました。
  • 4.生活のリズムがとても速いですが路上で食事をしたり、公共スペースで喫煙する人はいませんでした。ホテルや大学では喫煙所があり、タバコを吸いたい人はそこで吸っていました。
  • 5.電車内はとても静かで、うるさい大声などは聞こえてきませんでした。
  • 6.ゴミの分類、及びゴミ出しの日と時刻が決められていました。各家庭は、ゴミが回収される日に決められた場所にゴミを出していました。
  • 7.羅先生は時間に正確で、毎晩、翌日お会いする時間を決めると、羅先生は時間通りに決められた場所に来られました。

おそらく、日本に来た中国人は上記のような印象を受けると思います。
ことわざにも「ルールなしに、うまくいかない」とあるように、全ての個人や団体にはルールがありルールに従って行動します。ルールを守らず自分勝手に行動すれば、公共資源が浪費されるだけでなく国家の発展を阻害することにもなりかねません。

ゴミを勝手に捨てれば、国は財力や多大な人力を割いて掃除をし、ゴミの分別をせざるを得ません。信号を無視すれば、国は大量の警察官を使って街の交通整理をしなければなりません。道徳を守って、全ての人がほんの少し努力をすれば、公共の秩序が保たれ、社会は物質的にも精神的にも大進歩を遂げるでしょう。

ルールは道徳の中にのみ存在するのではなく、法律もまた強制力をもったルールです。他人や国家の利益を侵害するのを防ぐために法律が制定されました。共産党15大報告で「法により国を治め社会主義による法治国家を建設する」という戦略を打ち立てました。法の下に人は平等であり、ルールに従うという制約があります。

ルールが道理に合わないというのはルールを遵守しない言い訳です。ルールが合理性をもち、社会のルールに従う事は、道徳にも道理にも適合します。ルールを守ることで、ルールは目に見えない形で自身にもはね返ってきます。きちんとルールを守れば他人の印象が良くなり、災いがさけられ、命が助かることもあるかもしれません。

ルールは、どのように生活を営むかの指針となり、基本的人権を保護します。ルールをきちんと守ることが精神文明の進歩の証であり、物質文明と社会の進歩の前提となります。